二章 17.紅業火一式とトイブラスター
明日から魔物狩りに向かうことを決定した俺達だが、今日はまだやることがもう一つある。
「よし!それじゃあガゼル、そろそろ魔道兵器を取りに行こうぜ」
「ああ、ようやくだ。この時をどれだけ夢に見たことか……」
今日はガンテツから魔道兵器が完成したとの報告を受けていたので、それを今から取りに行く。
どんな仕上がりになっているのか、俺もちょっと楽しみだ。
「それじゃあ皆でガンテツの所に突撃だー!」
「おう!」
「はは……二人ともテンション高いね」
「えぇ、男の子って感じですね……」
やたらテンションの高い俺とガゼルが先走り、セロルとネネティアはそんな俺達に呆れながらもついてくる。
てかセロル、お前も男ならもう少しテンション上げたらどうなんだよ。ちょっとクール過ぎるぞ。
――
魔道兵器レンタル場に到着すると、今日は受付がガンテツでは無かったので呼び出してもらった。
ガンテツが受付に居ないのは何気に初めてだな。彼は職人だからこれが普通なんだろうが。
「おう、ガゼルに兄ちゃん達か。待たせたな」
「おい、俺の魔道兵器はどれなんだ?」
「落ち着けって、身を乗り出し過ぎて落っこちるぞ?」
ガゼルは魔道兵器が待ち遠し過ぎるのか、カウンターに身をよじ登らせて、今にも向こう側に落ちそうだった。
そこまで慌ててみっともないが、普段冷静な分反動があってちょっと面白いな。
「ほらよ、これがガゼルの魔道兵器だ」
「これが……俺の魔道兵器……!」
ガンテツが下から取り出したのは、中距離射撃型をベースとした少し銃身の太い魔道兵器だった。
見た感じでは銃身が太い以外は、特に変わった所は見当たらない。
「こいつは中距離射撃型魔道兵器『ブースピッド』を改造したものだ。熱耐性を上げれるだけ上げといたから、理論上は最大三十発まで連射可能にしてある」
「あの威力の攻撃を三十発も連射出来るのか。凄いな……」
ブースピッドは中距離射撃型の魔道兵器で、連射性能や集弾率が非常に高い多くの生徒が愛用している定番の武器だ。実技試験の時も、ブースピッドが真っ先に無くなっていた。
俺はセルフしか使ったことないから、どんなものか全く分からないけど。
「アカリのと同じ様に、耐久度が下がったら赤く光って知らせてくれる機能も付けといたぜ」
「おーあの便利な奴か、よかったなガゼル」
「ああ、何から何まで助かる」
「いいってことよ。ただ、今回は連射性能を残した影響で、アカリの魔道兵器にある照射機能は付けれなかったからそこは我慢してくれ」
照射機能、すなわちビーム攻撃がガゼルは出来ないらしい。まぁ今回の場合は連射がメインなのだから問題は無いだろう。
それに恐らく、ガゼルがそれをやると火炎放射器にしかならないだろうし。それはそれで見てみたいが、そっちはまた今度でいいだろう。
「なぁ、この魔道兵器の名前はなんて言うんだ?」
「名前?ああ、そういや全く考えてなかったな。自分で使うんだから自分で決めろよ」
「自分でか、ふむ……」
ガゼルは自分の魔道兵器の名前を考え始めた。そう言えば俺の魔道兵器もまだ名前が無かったな。
別に無くても困りはしないけど、あった方が愛着が湧きそうだし俺も考えてみるか。
「よし、それなら俺の魔道兵器は『紅業火一式』と名付けよう!」
「く、くれないごうか、いちしき……?」
「ああ、俺の魔法を昇華させた魔道兵器の一号機だからな」
「そ、そうか……」
なんだろう、このむず痒い感じは。ガゼル、お前普段冷静な顔してめちゃくちゃ厨二な名前付けてんじゃねーかよ。
まぁ本人が満足げだから別にいいんだけど。
「なら俺のは『トイブラスター』にするか」
「トイブラスター?」
「ああ、こいつを使うと戦闘が遊戯に変わっちまうほど強いからな」
強過ぎて魔物が敵ではなくなるのは事実だ。そして俺の玩具という意味も込めて、トイブラスターにした。
なかなか悪くない気がするけど、ガゼルのを聞いた後だと俺のも何だか厨二っぽく聞こえてくる。先に言えばよかったか。
「はっはっはっ!二人とも変なネーミングセンスだな!」
ガンテツは俺達の名付けがおかしかったのか、大口を開けて笑いだした。全く、そこまで笑わなくてもいいだろうに。
「いやいや、勘弁してくれ。ガゼルよりはマシだって」
「ふざけるな、アカリの方がおかしいに決まってるだろ」
「何だと!?」
「やるか?」
「はいはい、そこまでにして下さい。明日も訓練があるんですから今日はもうゆっくり休みましょうよ」
ガゼルが喧嘩を売ってきたので買ってやろうかと思ったが、ネネティアに止められてしまった。
残念だ、どちらの魔道兵器の方が優れているか決めようと思ったのに。
「しょーがないな。ガゼル、決着は次の機会にお預けだ」
「ふん、望むところだ」
明日からは魔物狩りが始まるので、今日のところはこの辺にしておく。
だが、いずれどちらの魔道兵器の方が優れているのか、きっちり白黒はつけさせてもらうからな。
「それじゃあガンテツ、また払ってない分返しに来るからその時はよろしくな」
「おう、無茶はするんじゃねーぞ」
「了解だ」
最後にガンテツと別れの挨拶を済ませ、その日はお開きとなった。
――
寮の自室に戻った俺は、ある一つの疑問が気になっていた。訓練のこととは全くどうでもいいことなのだが、どうしてもそのことが気になって仕方ない。
「どうしたアカリ?変な顔して」
「変な顔とはなんだ!まぁちょっと気になることがあってな……」
「ほう、一体何だ?」
「セロルのことだよ。もう入学してから二ヶ月以上経つのに、俺あいつを寮で見た覚えが無いんだ」
そう、俺が気になっていたこととはセロルの寮生活のについてだ。
同じ男で同じクラスであるのだから、一度くらいはすれ違っていてもいいはずなのに、寮ではたったの一度も彼の姿を見かけたことがない。俺にはどうしてもそれが気掛かりであった。
「確かに、俺もセロルが寮に居るところを見たことは無いな」
「だろ?あいつ、普段はどこで生活してるんだろうな」
「分からん、まぁそんなこと明日本人にでも聞けばすぐ解決することだろうが」
ガゼルの言う通り、こういうことは本人に聞けばすぐに解決するだろう。だがもしそれがセロルにとって触れてほしくないことだとしたら、俺は彼を傷付けることになる。
ただでさえセロルは昔から虐めにあっていて繊細なのだから、ここは慎重に慎重を重ねてもやり過ぎでは無い。
「やっぱここは、こっそり情報を集めるしか無さそうだな」
セロルのプライベートは尊重したいが、それでも俺の好奇心も止まらない。申し訳ないけど、明日の訓練が終わったらこっそりと後をつけさせてもらおう。
悪いなセロル、俺のわがままを許してくれ。
「アカリ、あんまり迷惑掛けるようなことをするなよ?」
「大丈夫大丈夫、無茶はしないから」
「不安だ……」
ガゼルは俺の行動が信用出来ないのか、かなり不審に思っている。
まったく、もう少し信用してもらいたいものだね。
「まぁそれはいいとして、明日行く狩場ってのはどんな所なんだ?」
「まぁそれは行ってからのお楽しみだが、結構楽しい所だぞ」
俺にとっては宝の山みたいで楽しい所だ。だが、ガゼル達にとってはしんどい所かもしれないな。まぁあれだけ特訓させたんだから、そう簡単には負けはしまい。
自分達の成長に驚いてもらうにも、いい機会だろう。
「ガゼルも魔道兵器を試し撃ち出来るんだから、本当は楽しみなんじゃないのか?」
「まぁな、正直ワクワクしている自分がいる。こんな気持ちは初めてだ」
「ははっ、そりゃ上々だ」
やはりガゼルも、本心では魔道兵器を実戦で楽しめるからか気持ちが昂っている様だ。ようやく彼の魔法も形になったのだから、それも無理はないだろう。
俺もどんな風に放たれるのか、今から非常に楽しみだ。
「さて、明日は忙しくなるんだし早く寝ようぜ」
「そうだな」
「クウ〜、クウ〜……」
ガゼルと話し込んでいたら、いい感じに夜も更けてきたのでここらで眠ることにした。
クウは疲れているのかすでに眠りに落ちており、可愛い寝息が聞こえてくる。
さて、明日はいよいようちの部隊の初陣だ。どんな結果に終わるのだろうか。




