二章 13.ガゼルの魔法
ガゼルの炎は、魔道兵器を介することで脅威の力に変貌した。魔道兵器と属性変化の合わせ技は、俺の思惑通り大成功だ。
「な、何なんだ今のは……?」
ガゼル本人は未だ自分が何を放ったのか理解出来ていないらしく、混乱していた。
まぁどうなるかの細かい説明は特にしていなかったからな。驚くのも無理はない。
「上手くいったぞガゼル!あれが指向性を得た、真の魔法の力だよ!」
「あ、あれが、魔法の本当の力なのか……!」
「凄いですね、的が真っ黒ですよ……」
「ああ、一発でこの威力なんだから、連射したらもっと強力だろうな」
この素晴らしい結果に、一緒に見ていたネネティアも感嘆の息をもらしていた。
しかし、まさかここまで上手くいくとは完全に予想以上だ。
今までは属性を変化させただけの炎をぶちまけていただけだったのが、魔道兵器を通して魔弾という形を形成することで、威力は凝縮され魔力を少しも漏らすことなく攻撃に回せたのだろう。
魔道兵器ならわざわざ詠唱を口にする必要がない分、魔法よりも手っ取り早く強力な一撃を放てる。まさに、魔法という古の技術と魔道兵器という現代の兵器が合わさった、最強の必殺技だ。
「これが魔法、そうか、俺は遂に……」
「ははっ、泣くほど嬉しいか」
「ああ、ようやく俺の念願が叶ったんだ。ありがとうアカリ、この恩は一生忘れない」
「重い重い!別に俺は武器を貸しただけで大したことはしてねーよ」
ガゼルは目に薄っすらと涙を浮かべながら、素直に礼を言ってきた。非常に珍しい光景だ。
ただ、俺はその場で思いついたことをただ試してみただけで、特別何かをしたつもりはない。そこまで重く捉える必要はないんだが。
「なぁアカリ、後一発だけ撃っていいか?」
「嫌だよ。俺もそうやって遊びすぎて魔道兵器を一丁壊したんだから、同じ目にあってたまるか!」
「そ、そう言わずに後一発だけ――ん?おいアカリ、この魔道兵器さっきと色が違う気がするぞ?」
「ほんとだ、フレームが赤く光ってる。たった一発で耐久度を限界まで消耗したのかよ……」
俺の魔道兵器は自壊防止の為に、耐久度が限界近くなるとフレームが赤く光り知らせてくれる。
そして今赤く光っているということは、ガゼルの魔法一発で耐久が限界に達したということなのだ。それだけガゼルの魔法が強力だという証拠なのだろうが、これはすぐに使えるものではないな。
「一度メンテナンスの出した方がいいんじゃないですか……?」
「そうだな、一旦ガンテツに見てもらうか。悪いなネネティア、今日の訓練俺は不参加で頼むわ」
壊れてからでは元も子もないので、念のためガンテツに見てもらおう。それにまだ魔石を換金した金も持っていけていないからな。丁度いいからこの機会に少し返済しておくか。
「待てアカリ、俺も連れて行ってくれ」
「え?何でだよ?」
「俺もアカリと同じ魔道兵器が欲しいんだ」
「あー、そういうことか。でもこれ想像を絶する程高いぞ?」
どうやらガゼルも自分専用の魔道兵器が欲しいらしい。まぁせっかく魔法が使えるようになったんだから、それを求めるのは当然か。
だがこの特注魔道兵器をガゼルが払いきれるほど稼げるかは怪しいところだからな。その上ガゼルの場合は俺のもの以上に耐久性を上げる必要があり、その分値も張るだろう。正直破産しないか心配だ。
「覚悟はしている。俺は一生かけて払ってでも、魔法を使えるようになりたいんだ」
「……分かったよ、そこまで言うなら取り敢えず話だけでも聞きに行くか」
「ああ、恩にきる」
ガゼルはもう覚悟が決まっているらしく、一点の迷いも無さそうだ。それならもう俺から何か言うことは無い。
「それなら折角ですし、私もついて行っていいですか?ここに一人残るのも寂しいですので」
「オーケー、それなら三人で行くか」
ネネティア一人を取り残すのはかわいそうなので、結局は三人揃ってガンテツの所へ向かうこととなった。
――
射撃場を出た俺達は、魔道兵器の調整とガゼルの話をする為にガンテツの元へとやって来た。
「お疲れガンテツ、今ちょっといいか?」
「おー兄ちゃんじゃねーか、久しぶりだな。で、今日は連れもいるみたいだが何の用だ?」
レンタル場に着くと今日もガンテツが受付をやっていたので話しかける。もう彼ともすっかり仲良くなっており、この店の常連になってきた気がするな。
「取り敢えずこれの状態を確認してもらっていいか?少し無茶させたから心配で」
まずは魔道兵器の確認をしてもらおうと思い、俺はホルスターから取り出した魔道兵器をガンテツに手渡す。
「どれどれ……ん?銃身に煤が詰まってるな。兄ちゃん、お前こいつで何をしたんだ……?」
「えーと、ちょっとそいつで火を噴いた、かな」
「はぁ?火ってどういうことだよ!?」
上手い説明が思いつかずあるがままの事実を伝えたら、逆にガンテツを混乱させてしまった。どう伝えればよかったのか、難しいな。
「そうなったのは俺が原因だから、俺から話そう」
「ふむ……兄ちゃんは?」
「俺はガゼリシア・エインシェイトだ。その魔道兵器は、俺の魔法を通し炎の魔弾を放った影響でその様な状態になってしまった。申し訳ないが修理を頼めないか?」
「魔法……?話だけは聞いたことあるが、使える奴がいたとは驚きだな。そういうことなら少し待ってろ。この程度の煤ならすぐ取り出してくるからよ」
ガゼルの説明を聞いたガンテツは、納得してくれたのか修理のために裏へ下がって行った。彼が魔法の知識をもっていて助かったな。
「よかったのか?」
「何がだ?」
「いや、ガゼルも魔道兵器が欲しいて言ってたから、てっきりそれを頼むのかと思ってさ」
「馬鹿を言うな、まずはお前の魔道兵器を修理するのが先決だろうが」
「へぇ、意外と冷静だな」
俺はてっきり、ガンテツに会ったらもっと血眼になって魔道兵器の開発を頼み込むのかと思っていたが、当の本人は思いのほか冷静で驚いた。
これは俺もちゃんと造ってもらえるように手伝わないとだな。
「ほらよ兄ちゃん、もう無茶な使い方はするんじゃねーぞ」
「おっ、ほんとにすぐだったな。ありがとうガンテツ、助かったよ」
ガゼルと少し話していると、ガンテツはあっという間に魔道兵器の整備を終えて戻ってきた。
相変わらず仕事が速いな。
「いいってことさ。んで今日の用事はそれだけなのか?」
「いや実は、こっちのガゼルにも専用の魔道兵器を造ってもらいたくて今日は連れて来たんだ」
「なるほどな、さっき話してた魔法を魔弾に変化させるってやつを実戦で使えるようにするためか」
「まぁそういうことだ」
ガントツはすぐに魔道兵器を造る理由を察してくれた。さすが職人なだけはあってすぐに理解してくれる。
なら、後はガゼルと一緒にどういったものにするか細かい打ち合わせを行うだけだ。
「んでガゼリシアの兄ちゃんはどんな魔道兵器をご所望なんだ?」
「俺のことはガゼルで構わない。俺は、アカリと同じく自身の魔力を魔弾に変えられるものかつ、魔法の熱に耐えられる様にしてもらいたい」
「魔法か……一応知識として知ってはいるが、見たことはねぇからな。現物を見てみないことには手の付けようがないぞ」
「なら、一緒に外に来てくれ」
ガンテツも魔法の知識こそあれど、本物を見たことは無いらしい。
まぁ元々この世界では忘れられた古代の技術らしいから、むしろガゼルが扱えてる方が凄いのだし当然か。ガゼルのは魔法と言っても、ただの属性変化だが。
「ではいくぞ……はあぁ!」
早速外へとやって来ると、ガゼルは天に向かって右手を突き上げ、そこから赤く燃える炎を噴き放った。
「おぉ、これが魔法か……!」
「どうだ?上手く魔弾に反映出来そうか?」
「まぁ、出来ねぇことはねぇだろうが……高くつくぞ?」
出来るんだ、凄いなガンテツ。でも俺の魔道兵器でも魔弾にすることは出来たんだし、原理自体はほぼ完成されてるものなのか。
「いくらだ?」
「軽く二千万ポットってところかな」
「に、二千万!?」
ガンテツの口にした衝撃の値段に、ガゼルでは無く俺が声を荒らげて驚いてしまった。
二千万は、さすがに高過ぎる。これ本当にガゼル払いきれるのか……?




