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二章 6.伸び代と新兵器

 今回の演習の事故はネネティアの不運によるものだと思っていたが、セリーダ先生曰く原因はネネティア自身にあるらしい。

 その理由とは一体何なのか。


「ネネティアの不運は紛れもない事実だろう。だが今回の事故に関して言えば、あれは未然に防げたものだ」

「未然に防ぐ方法があったんですか?」


 事故を起こさないようにすることは、今後の俺達部隊の課題でもある。その打開策があるならば、是非とも聞きたいところだ。


「そうだ」

「ど、どうすれば防げたんですか……!?」


 ネネティアもその方法が知りたいのか、セリーダ先生に食い入るように聞き出す。


「簡単だ。訓練を始める前に魔道兵器の動作の調整や、故障や不備がないかの確認を行っていれば、今回の事故の原因は判明していた。つまりは、事故の原因はネネティアの確認不足にあったということだ」

「確かに……今日私は魔道兵器の確認を大して行っていませんでした……」


 事故の原因はネネティアの確認不足か。確かに言われてみればその通りだが、それを言うならレンタル武器を貸し出した方にも原因はある様に思えるが。


「それならネネティアだけの責任じゃないんじゃないですか?魔道兵器を貸し出してる方も整備不足だったってことでしょ」

「通常ならアカリの言う通りだ。だが、ネネティアが不運だというのもまた真実ではある。だからこそネネティアは己の行動から起こる結果を常に予想し、最悪の事態に備えるべきだったということだ」

「それでも、全てをカバー出来る訳じゃないだろ……!」


 セリーダ先生の言い分は最もだが、それはさすがに無理がある。ネネティアだって身に起こる全ての出来事を気にしていたら、何も行動出来なくなってしまうではないか。

 先生の無謀過ぎる要望に、俺も熱くなって口調が荒れてくる。


「ああ、だが今回の事故は少し確認すればすぐ判明することだっただろう。己の扱う武器を確認することは、そんなに不自然なことか?」

「いや、それは不自然では無い、か……」

「そうだ、実戦で武器の調子が悪かったと言っても、誰かが助けてくれる訳では無い。だから今回の事故に関しては、己の命を守る大切な魔道兵器を確認しなかったネネティアが悪い」


 セリーダ先生に反論するも、結局は彼女に言いくるめられてしまった。確かに実戦で武器がどうのと言い訳をしたって、それで魔物は止まりはしない。

 先を見据えるなら、ネネティアにも責任はあるか。


「庇ってくれてありがとうございますアカリくん。でも、セリーダ先生の言う通り、今回の事故は確認を怠った私が悪いです。今後は、自分の不運と真剣に向き合って、もう二度と防げる事故を起こさないようにします!」

「それでいい。だがネネティアだけを責めるのもそれはそれで違うからな。アカリの言う通り、レンタル場には既に整備不良の報告は入れておいたから安心しろ」

「なんだ、セリーダ先生も先に報告してたんですね……。人が悪いですよ」

「先に言っては言葉が軽くなってしまうからな」


 ネネティアは今回の事故を真摯に受け止めている。これならもう二度と同じ事故は起こらないだろう。

 それにしてもセリーダ先生は人が悪いな。今回の説教は全て彼女の手のひらで踊らされていた気分だ。

 癪だから、先生の度肝を抜くくらいこの部隊を強くして見返してやろう。


「ふふ……見てろよセリーダ先生……」

「クウ……?(アカリ顔怖いよ。どうしたの……?)」

「悪い悪い。目指す目標が一つ増えて、これからが楽しみでな」


 また変な笑い方をしていたらしく、クウにさりげなく指摘されてしまった。

 本当にこの顔も気を付けないとな。


「さて!それじゃあ総評も終わったことだし、今日の罰はここまでとするか!」

「よっしゃー!やっと帰れる〜」

「ふん、はしゃぎ過ぎだ」

「でも疲れたからね……今日はゆっくり休もう」

「はい、もう二度とこんな事故を起こさないよう、私も気を引き締め直します……!」


 セリーダ先生からようやく解散の指示が出て、俺達は訓練場を後にした。校舎の外へ出ると既に空は真っ黒に染まり、いつの間にか夜になっていたらしい。

 この日の訓練は、多くの反省を受け新たな目標を見つけて幕を閉じたのだった。








 ――









 実技演習の事故より約一週間が経過した。今日は、セリーダ先生より特注の魔道兵器が完成したと伝言を受け、俺は足早にガントツの元へ訪れていたのだ。

 先生からはは「もうそんなものを頼んだのか?」と呆れた顔で言われたが、そんなものは無視だ無視。


「おっ、待ってたぞ兄ちゃん!」

「武器が完成したんだってな。どんな感じなんだ?」

「ほらよ、これがお前専用の魔道兵器だ」


 待ちわびていたという雰囲気のガントツに早速本題を切り出すと、彼は受付台の下から一つの魔道兵器を取り出した。

 見た目は今まで俺が使っていたセルフと大差無いが、きっとこの中には俺の要望がふんだんに含まれているのだろうな。


「おぉー、ピカピカだな〜」

「クウー!(綺麗だねアカリ!)」


 新品の魔道兵器は光を反射して美しく煌めいており、黒い金属の光沢感が男心をくすぐる。

 そして何より、自分専用という響きが素晴らしい!


「それじゃ早速説明だが、まず弾倉が必要無い分耐久性を向上させる為に金属を厚くしてる影響で、通常のセルフよりもだいぶ重くなっているぞ」

「確かに、重さは今まで使ってたやつの二倍くらいあるな。まぁでもこのくらいなら問題無いよ」


 確かに魔道兵器自体の重さは上がったが、魔力操作で肉体を強化すればこんなもの今までとほぼ大差無い。

 重量に関しては、俺にとってはマイナスでは無いな。


「肝心の魔力伝達経路に関しては、魔剣と同じ構造にしておいたから内部から破裂するリスクはかなり抑えられている。ただ何事にも限度はあるからな。耐久度が危険になったらフレーム部分が赤く光って、知らせてくれるようにしてある」

「おぉー、そんな機能まで付いてるのか。何から何までありがとう!」


 光の色で武器の耐久度まで知らせてくれるということで、俺は早速魔道兵器に魔力を通してみた。

 すると魔道兵器はすぐに起動し、フレーム部分に青い血脈のような光が灯った。恐らくこの青い光が赤く変わるのだろう。


「もう魔力を通したのか?気が早いな兄ちゃんは」

「いやー、早く試して見たくてつい」

「ははっ!それだけ嬉しそうな顔をされたら造った甲斐があったぜ!」


 魔道兵器を受け取ってからずっと顔のニヤニヤが止まらず、だらしないところを見られてしまった。

 だが、こんな素晴らしい魔道兵器を造ってもらえたのだから、顔が緩むのも当然だろう。


「んで肝心の魔剣に似た魔力を照射し続ける機能だが、そっちもある程度は上手く組み込めた」

「おおっ!すげー出来たんだ!?」


 魔力を照射し続ける機能、即ちビーム攻撃も可能となっているようだ。これはますますテンションが上がるな。


「引き金を引く時間の長さで魔力を放出する長さを変えられるように調整した。素早く指切りすれば、通常の魔道兵器のように魔弾を放てるし、長く引き続ければ魔弾も照射し続けるというイメージだ」

「なるほど、引き金を引く長さで弾の大きさを調整した訳か」


 引き金を引く長さで弾の大きさを調整出来るのは、非常に分かりやすい仕組みだ。

 最近はセロルとの訓練の他にもネネティアから魔道兵器の扱いを習っているので、これは練習の成果を発揮するのが楽しみだな。


「ああ、だがその結果フルオートで魔弾を放つ機能が失われてしまったから、その点が今後の改善点だな」

「まぁその分魔力を照射し続けられるんだから問題は無いだろ」


 ビームを撃てるのだから、その代償としては大したことではない。俺の夢見た兵器がこの手の中にあるのだから。


「兄ちゃんがそう言うならまぁいいか。それじゃこの魔道兵器の制作代金だが――」

「……ガントツさん、今いい?」


 ガントツと次の話に移ろうとしたところで、またも何者かが割り込んで来た。入って来たのは女子生徒で、銀色に輝く髪をツインテールに束ねた少し口調のキツそうな人物である。

 なぜこう毎度毎度、俺達が話をしていると途中で遮る者が現れるのか。

 てかこいつ誰だよ。


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