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エピローグ 目指すべきもの

 学園に帰ってきた後は、マリナ達は後処理があるからと言ってその場は解散となった。

 俺もその日は久しぶりに運動をして疲れたので寮へ帰るとぐっすり眠り、翌日またいつもの日常が始まる。

 そう思っていたのだが――


「あの人よ、昨日マリナ先輩と一緒に居たっていう一年は」、「けっ、何であんな取り柄の無さそうな奴がマリナ先輩と……」、「何だあの頭のマジカロイドは?」、「ねぇ、マリナ先輩とはどんな関係なのかな?」


 残念ながら、俺の日常は昨日を境目に崩壊してしまっていた。


「さっきからチラチラとこっち見て、完全に噂にされてるじゃん……」

「クウ?(アカリどうするの?)」

「取り敢えず全部無視だ。鬱陶しいけど一つ一つ構ってたら日が暮れるからな。さっさと教室に行こう」


 クウも俺のことを心配してくれているようだが、こういった類の噂話は、いちいち気にしていたら体がいくつあっても足りない。

 今は真っ直ぐ教室へ向かうのが最善手だ。


「ふぅ、やっと着いたか……」


 煩わしい視線を潜り抜け、俺はどうにか教室へと到着した。


「アカリ、お前随分と噂になってるな」

「うおっ、て何だガゼルか。何だよ、お前も噂が気になるのか?」

「ははっ、いや興味無いな。俺も教室に来るまで知らなかった」


 どうやら噂はガゼルの耳にも入っていたみたいだが、それでも彼はあまり興味が無いらしい。

 俺としてもそ方が気が休まるので助かる。


「どこに居てもチラチラ見られるから煩わしいったらねーよ」

「まぁ所詮は噂でしかないんだし、そのうち収まるだろ」

「だといいけどな」


 人の噂も七十五日と言うが、約二ヶ月もこの状態だなんて耐えられない。

 とにかく早めに何か手を打つ必要がありそうだ。


「アカリくん廊下凄いことになってますけど、何かあったんですか?」

「兄貴ってマリナちゃんと知り合いだったの?」

「あーお前らか、廊下が騒がしいのは俺じゃどうにも出来ねーよ」


 ガゼルと話していると、同じ部隊仲間のネネティアとセロルもやって来た。

 気になるのはセロルの発言だな。彼は勇者一族の家系だからマリナと知り合いなのも頷けるが、ちゃん付けで呼ぶとは一体どういう関係なのか。


「おいおいセロル〜、お前マリナとは仲良いのか〜?」

「え?ああいや、身内同士で催してる行事の時に一度手合わせしたことがあるだけだよ。まぁ見事に瞬殺されたんだけどね……」

「そ、そうか……」


 どんな関係なのか聞き出そうとしたが、思わぬ地雷を踏み抜いてしまった。

 セロルの身内に関する話題には、不用意に触れないようにしておこう。


「身内同士で催してる行事って言うと、もしかしてあれのことか?」

「ああ、あの有名なやつですか!?」

「え?何?そんな有名なイベントがあるの?」


 俺が一人反省していると、ガゼルとネネティアが勇者一族の行事の方に興味を持ちだした。

 他人まで知ってる行事って、一体どんな行事なんだ?


「ははは……うん、二人が予想してる通り、年に一度行われている「勇者剣舞会」のことだよ」

「おぉ、やはりそれだったか」

「あれは有名な行事ですからね。セロルくんも出場してるなんて凄いです!」

「いやいや、僕はお情けで出させてもらってるだけで、毎年一回戦負けだからね……」


 俺の疑問を他所に、行事を知っている三人だけで盛り上がり始めた。

 だからその行事って何なんだよ!勇者剣舞会って何!?


「なぁ、いい加減その行事っての教えてくれよ」

「……アカリ、それ本気で言っているのか?」

「アカリくんまさか剣舞会を知らないんですか?」

「えぇ……それってそんなに知ってなきゃまずいほど常識だったの?」


 ガゼルとネネティアから、まじかコイツみたいな視線を向けられた。

 その行事を知らないってそんなにまずいことなのか?てかお前らも勇者一族じゃないのに、何で責められなきゃいけないんだ。


「あのね兄貴、勇者剣舞会っていうのは年に一度開催される、勇者一族の剣術を披露する大会のことなんだよ」

「剣術を披露する大会?何でそんなもの披露しなきゃいけないんだよ?」

「勇者一族はこの世界では最強の存在でなくてはいけないんだ。それが勇者を背負う一族の使命だから。その為に毎年大会を開いて民衆の目を集めることで、一族の力を世界に示すんだよ」

「ふーん、なんか勇者一族も色々と面倒くさそうだな……」


 セロルに勇者剣舞会の説明をしてもらったことで、何となく概要は理解出来た。

 世界最強を名乗るのも大変なんだな。


「だが大会を楽しみにしている人間は多いからな。毎年凄い盛り上がりだぞ」

「えぇ、今では世界一のお祭りになってますしね」

「観戦の数も凄いもんね。僕なんか緊張していつもすぐ負けるんだよ」


 勇者剣舞会についてガゼル達も補足してくれたお陰で、その雰囲気も理解出来てきた。

 それだけ世界中から注目を集めてるなら、これは使えるかもしれない。


「よし決めた。セロル、お前を鍛えた成果は次の剣舞会で披露するぞ」

「えぇ!?そ、そんなの無理だよ兄貴……」


 俺の提案にセロルは恐ろしい程に驚き、すぐに元気を無くす。

 相変わらず弱気な性格は健在だな。


「いや、無理でもやるんだ。家族を見返したいんだろ?」

「そ、それはそうだけど……」

「確かにいい考えかもな。剣舞会なら公衆の面前で正々堂々と実力を発揮出来る。成長を見せるには最高の舞台だ」

「えぇ……ガゼルくんまで……」


 ガゼルが味方するなんて珍しいこともあるものだ。だが今は好都合なので、余計な茶々は入れないでおこう。


「セロルくん、確かに勇者一族は強くて怖いかもしれませんが、折角の自分を変えるチャンスですよ!ここはアカリくんを信じて挑戦してみましょうよ」

「ネネティアちゃん……分かったよ。せっかく皆が背中を押してくれてるんだし、僕頑張ってみる!よろしくお願いします兄貴!」


 ネネティアによる最後のひと押しで、弱気なセロルの心にもようやく火が灯った。


「おう、俺に任せとけ!お前を一人前の勇者にしてやる」


 俺は満面の笑みでそう応えた。

 セロルの人生を背負う責任重大な役目だからな。これから気を引き締めて挑まなければ。


 と、そう思ったのだが、何故か周りの三人の反応がイマイチだった。

 何かまずかっただろうか。


「なんか……笑い方怖いよ」

「本当に大丈夫なのか……?」

「私もなんだか不安になってきました……」

「急に酷いな!」


 何かと思えばまたこの指摘だった。

 そんなに俺の笑い方は不気味なのかよ。もう不用意に笑うのはやめとこうかな。


「クウー!(大丈夫、アカリはどんな顔でもかっこいいよ!)」

「クウよ、ありがたいけどそれはフォローになって無いぜ……」


 クウも慰めてくれようとしてくれたのだが、その優しさが逆に俺の心を抉ってくる。

 なんか最近こんなことばっかりだ。


「まぁ別に変なこと教えたりはしないから、これから頑張って一緒に強くなっていこうぜ!」

「うん、よろしくね兄貴!」


 改めて目標を定めた俺達は軽く拳をぶつけ合う。


 こうして、俺の第二の人生は新たな幕を開けるのだった。


一章までの灯のステータス


竜胆 (アカリ・リーシャン)


戦闘力:かつて魔王として君臨していただけあり、その強さは未だ健在。序盤は殴ることしかしなかったが、魔道兵器の新しい使い道を見つけたので今後はそっち方面を伸ばしていく。


精神力:四百年も眠っていたせいか、年齢系の話題には弱い。今のところ強敵に出会っていないので、あまり世界の危機感を理解してはいない。



所持金

七万ポット:入学前に荒稼ぎしたその残り。 そろそろ稼ぎ直さないとまずいと思い始めている。


所持魔道具

・モンスターボックス…魔獣を入れて置ける特殊な檻。

・モンスターリング…未登場。

・モンスターピアス…魔獣の話す言葉の意味が分かるようになる耳飾り。

・モンスターガントレット…魔獣と融合出来る小手。

・マジックストレージ…魔力を保存しておける筒。


現在の仲間

・クウ(ディメンションドラゴン。伝説の竜)

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