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八章 13.近代化

 シーラと無事合流を果たした俺達は、そのまますぐに学園を出立した。彼女には現状の説明をしようかと思ったが、どうせドロシーにも話すことになる為、二度手間になるからそれは後回しだ。

 シーラの退職についてはすんなりと話が通った。と言うより、シーラが無理やり押し通した。学園長の部屋へ入ったかと思うと、すぐに何やら言葉の応酬が聞こえ始め、最終的には満面の笑みで彼女が出てきたのだ。

 こっそり中を覗いてみると、そこには半べそをかいて放心状態となっている学園長の姿があった。恐らくはシーラから相当な猛毒を浴びせられたのだろう。なんて不憫な学長なのだろうか。

 ともあれそんな感じで、無事退職届を受理されたシーラと共に俺達は意気揚々と次の目的地へ向かっているのである。


「次に会うのはドロシーですか。なんだか久しぶりですわね」

「お前らが会うのは何年振りなんだ?」

「そうですわね、最後に別れたのはあの子がお偉い様の警護につく前でしたから、もう二十年は過ぎていると思いますわ」

「だいぶ長いな……」


 シーラ曰く、ドロシーとはもう二十年も会っていないらしい。なんなら他の魔人達ともそれと似た期間会っていないらしいので、再会するのを非常に楽しみにしている様であった。


「ふふっ、大した時間ではありませんわ。ほとんど不死身のわたくし達にとっては、二十年なんて昼寝していたらあっという間ですのよ」

「流石長生きしてる魔人は貫禄が違うな。じゃあこの後に合流するシンリー達も楽しみなのか?」

「シンリーは、出来れば会いたくないですわね……」

「やっぱお前も怖いのかよ」


 魔人の寿命がどれ程なのかは知らないが、少なくとも俺が封印されていた四百年の間は健康に過ごしていたので、その程度では計り知れない程に長いのだろう。

 しかしそんな彼女らにも怖いものがあるらしく、その最たる例がシンリーだ。彼女の怒りには全魔人が恐怖し、出来るだけ近寄らまいとしている。そんな風に皆から思われていて、なんだかシンリーも可哀想に思えてくる。


「それで肝心のドロシーはどこに居るぜよ?」

「そこなんだけど、正直俺はあいつがどこにいるかいまいち理解してないんだよな」

「確か区長の警護をしているんでしたわね。その場所を把握していないだなんて、貴方様も抜けてますわ」

「うるせー。仕方ないだろ、知らないもんは知らないんだから!」


 カイジンにドロシーの居場所を尋ねられたのだが、俺は彼女が誰と一緒に居るかは知っていても、何処にいるかまでは知らない。そう正直に言うと、シーラに馬鹿にするように笑われた。

 こんなことになるのなら、ラリヤに何となくでも聞いておくんだったな。


「安心して下さい貴方様、わたくしも伊達に長年教員生活を積んできた訳ではありませんのよ?区長の暮らしている街くらいは把握していますわ」

「おおー、流石先生は頼りになるな」

「当然ですわ。わたくしは他の魔人とは違って、遊んではいませんでしたから」


 長年教員として知識を蓄えていたシーラは、この世界の情勢や常識については俺達より一歩抜きん出た知識がある様だ。さりげなく他の魔人達をディスっているのは気になるが、まぁそこは無視して早速彼女に案内してもらおう。


『クウー(アカリー、行ったことない所には飛べないよ?)』

「あっそうか、クウのワープも見たことない場所には行けないのか」


 しかし、移動手段としてここまで大活躍してきたクウの空間魔法も、流石に未知の場所へ自在に行く力を併せ持ってはいなかった。こうなればワープ無しで、自力で区長のいる地へ向かう他無い。


「マジカロイドを借ります?それですと移動に数日は掛かりますが」

「いや、そんなにのんびり移動してる暇は無い。ここはあいつらの一族の翼を借りるとするか」


 シーラにマジカロイドをレンタルしてくるかと尋ねられたが、そんな遅い移動手段では、予定している仲間集めの期間には到底間に合わない。

 だから俺はとある魔獣達を呼び出す為に、モンスターボックスに手を掛けた。


「出てこいライチの子孫達!」

「「「ピィー!」」」


 俺が呼び出したのは、かつて最速の飛行能力でとある渓谷の頂点に君臨していた魔獣、サンダーバードだ。

 軽トラくらいの大きさをした、カラスの様な漆黒の羽毛を持つ巨大な鳥。彼らは皆俺のかつての仲間であるライチの子孫で、雷の如き神速で天を自在に飛び回り全身から電撃も放つことが可能という、天を狩る雷の申し子だ。

 虚無の魔人の仲間である雷の魔人と能力は似ているが、羽毛は柔らかいし顔は可愛いしで、あんなうるさい奴よりもサンダーバード達の方が当然勝っている。


「これからシーラの誘導する場所まで、ひとっ飛び頼むぞ皆」

「「「ピィー!(お任せ下さい!)」」」


 さすがはライチの子孫なだけはあり、カラスの様な見た目とは裏腹に皆非常に礼儀正しかった。この大人しく真面目な性格の鳥達だからこそ、高速かつ安全な移動が実現可能性なのだ。


「じゃあ振り落とされないようにしっかり掴まっとけよー」


 そうしてサンダーバードに乗せてもらった俺達は、シーラ案内の元ドロシーの居るであろう区長の街へと向かうのであった。








 


 ――










 シーラが誘導しサンダーバードに乗って超高速で移動することにより、ドロシーの居る街へはあっという間に到着した。

 この町は区長が住むのに相応しく、今まで見てきたどの街よりも文明が発達している。ビルの様に高い建物も何棟か建っており、順調に近代化が進んでいるという様子であった。これで魔物の殲滅も完了すれば、娯楽面にも力を注げそうな感じである。テレビとかゲームとかそっち方面にな。


「さてと、区長はどこに住んでるのかな」

「そりゃあ勿論、あの一番大きい建物に決まってるぜよ!」

「いやそれはどうだろうか。多分ああいう所には住まないと思うよ」


 区長の住処にカイジンは一番大きな十階建てくらいのビルを指差したが、それは違うと思う。見た限りだとあれはオフィスビルっぽいし、それにもし仮に集合住宅だったとしても、絶対そんな所に区長が住む訳が無いだろ。

 このボウルサム区の長が暮らす家なのだから、もっと高級そうな一戸建てに住んでいるに違いない。


「まぁここまで来れば、後は虫達を飛ばすだけですぐ特定出来るんだから、考える必要は無いか」


 街に到着したのなら後は虫によるも容易だ。区長やドロシーがどこに居ようとも、これで簡単に見つけられるのだから。

 俺はモンスターボックスから無数の虫達を呼び出すと、すぐに索敵に向かわせた。


「ねぇお姉ちゃん、何でこの街はこんなに背の高い建物が多いのかな?」

「それは恐らく、定められた街の範囲に出来るだけ多くの人間を収容する為ですよ。平面は範囲が決まっていても、上はいくらでも伸ばせますから」

「おー、何かそれっぽい理由だね。流石お姉ちゃん!」


 俺が虫を飛ばしていると、トリーリアとバレリアがそんな会話を始めていた。バレリアもビルを見るのは初めてだろうに、その理由を瞬時に理解するとはなかなか優秀だ。

 なんて二人の会話を聞いていると、早くも虫達が区長を見つけたのか連絡が入ってくる。しかもその居場所はなんと、カイジンの予想通りあの一番背の高いビルの中だったのだ。


「まじかよ、予想が外れたな……」

「はっはっは!今回の勝負はあしの勝ちの様ぜよ殿!」

「ちっ、何勝手に勝負にしてんだよ。まぁいいや、とっとと行くぞ」


 見事予想を的中させたカイジンは高笑いして勝ち誇っていた。勝手に勝負にされて勝手に負けにされて、別にそんなつもりは無かったのにムカついてくる。

 ともあれそんな感じで、謎の勝負に負けて嫌な気分になりながらも、俺達は区長とドロシーの居るビルへと飛んで行くのだった。


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