一章 24.ネネティア試験
〜ネネティア視点〜
学力、銃の腕前、戦闘技術、どれをとっても私は平均よりも成績がいい自身はあります。
でもそれら全てを帳消しにする程に、私は運が悪かったのでした。
「実技試験開始!」
親に背中を押されたのもあり、背を伸ばして受験したガーデニア学園でも、私の運の無さは変わることは無かったです。
筆記までは何事も無く問題を解けていたから、もしかしたら今日は人生最良の日かも、なんて思っていたのも束の間、実技試験が始まった途端私は五人の受験生に囲まれてしまいました。
「よし、一人目のカモみっけ!」、「とっとと仕留めちまおうぜ!」、「まずは俺から――」
「えいっ!」
五人の敵を相手に、私の持つ武器は長距離射撃用の魔道兵器。どう考えても私の負けは確実でした。
でも、だからこそ少しでも点を稼ごうと思い、ペラペラと会話をしている内に一人を仕留めたのです。
卑怯だとは思いますが、試験で徒党を組む様な奴らにそれを気にする義理はありません。
「こ、この野郎!よくもやりやがったな!」、「お前ら囲め!包囲しちまえば、あの魔道兵器じゃどうしようもねぇ!」、「おう!四方から一斉射撃だ!」
「くっ……!」
四人の受験生達は四方に分散し、囲む様に陣を組んできました。どうやら私もここまでの様です。
ならばせめて、相打ち覚悟でもう一人を道連れにしてやりましょう。
「ま、まだまだですよ……!」
幸いこの会場は瓦礫が散乱している為、それらを盾にすることで銃撃をある程度しのぐことが出来ました。
そうして少しずつ被弾しながらも、逃げ隠れを繰り返すことで、敵の油断を誘います。
「くそっ、ちょこまかと逃げやがって!」、「隠れんな!とっとと出てこい!」、「よし、俺はあっちの瓦礫を探してく――」
「そこっ!」
瓦礫の影に隠れ僅かに生まれた隙を見逃さず、私は二人目を狙い撃ち撃破しました。
でもその結果私の位置はバレてしまった上に、サクリファイスタンクももう限界に近い。どうやら本当にここまでの様です。
「そこかぁ!」
「あ、あと三人……、本当にずるいやらつらですね……!」
「ははは!共闘がダメだなんてルールは無いからな!」、「そうそう、お前もとっととやられちまえよ」、「早く諦め――」
「もーらいっ!」
残り三人の受験生に囲まれ、私の試験もここまでかと諦めかけた次の瞬間、敵の一人が突然吹き飛んで行ったのです。
それと同時に別の受験生が入れ替わる様に佇んでいたので、それをしたのは彼だと判断出来たのですが、どういう原理でそんな芸当が可能になるのか全く分かりません。
いきなりの出来事に私の脳は理解が追いつかず、しばらくの間固まってしまいました。
「ジョニー!?な、なんだお前!どこから現れ――」
「ほい二人目」
「き、貴様よくもダニエルを――」
「お前らさっきからうっさいわ!」
私が放心している間に、他の二人も次々とやられていきました。
それを成したのはどうやら突然あらわれたあの受験生みたいでしたが、殴って倒すというあまりにも無茶苦茶な戦い方には、何も言うことが出来なかったです。
「あ、ありがとう、ございます。助けてくれて……」
「あ?」
とにかく助けていただいたお礼くらいは言わなければとそう口にしたのですが、当の本人は何言ってんだこいつ?みたいな顔をしていました。
「私は――」
「悪いが時間が惜しいんで、とっととやられろ」
それでもせめて自己紹介くらいはしなければと思い名乗ろうとしたのですが、彼はそれを遮るようにまさかの私に攻撃をしてきたのです。
「よしっ、次の獲物だ!じゃんじゃん行くぞー!」
「え……?」
一瞬で私のサクリファイスタンクは砕かれ、もう彼は私への興味を無くしていました。
嵐のように現れ去っていくその様に、私はまたも言葉を失い放心状態となってしまいましたが、もう私に出来ることはありません。
こうして私の実技試験は、怒涛の勢いで幕を閉じたのです。
私の前に現れた彼がアカリ・リーシャンという名前だということは、その後の総評で知りました。
――
ネネティアから実技試験でのことを聞いた俺は、なんとなくその時のことを思い出していた。
確かに俺に名前なんか名乗ろうとしていた変な奴はいたが、それがまさか俺から二点奪った犯人だったとはな。
「くそっ、俺の二点が……」
「馬鹿かお前、あの試験で満点なんか取れるわけないだろ?二十点超えてるだけでお前は十分異常なんだから安心して誇れよ」
「そんなことはもう散々聞かされたよ!でもあと少しだったと思うとどうしても悔しくて……」
二点取れなかったことを悔やんでいると、ガゼルが俺を馬鹿にしながら変なことを言ってきた。
試験の仕組みならマリナから散々聞かされたし、満点が不可能なことももう十分理解している。
ただ、頭で理解してるのと気持ちの問題は完全に別だ。俺はまだあの結果に納得してはいない。この借りはいつかどこかで必ず返してやる。
「アカリくん、改めてあの時はありがとうございました」
「いやいや、礼なんかいらねぇよ。結局俺はあんたを倒したんだしな」
あの時俺は全員を敵としか見てなかったわけだし、助けたと言うよりはあいつらに一点でも取られるのが嫌だっただけのことだ。礼を言われる筋合いは無い。
「確かに、むしろそんな狂った試験場で二点も取れたことを自慢するべきだな」
「別に狂ってはねぇよ!てか、ネネティアはよく二点だけで合格出来たよな。この学園の入試は実技重視って聞いてた気がするけど」
「いえ、だからこそだと思います。アカリくんと同じ会場にいて二点も取れたんだから、私の人生では最良の日でした」
「いやいや、そんなのを最良日に入れないでくれ」
確かに俺と同じ会場だったということは、たった二点でも二位は確定となる。なら、合格してもおかしくは無いわけか。
ただそれでもあんな日を最良日に認定しないでほしいが。もっといい日がいっぱいあるだろうに。例えば誕生日とか。
「アカリは二八点なんて馬鹿げた点を取ってるから分かってないだろうが、あの試験は五点も取れば優秀な方だぞ」
「はぁ?たった五点で?」
「当たり前だ。そもそも最高点は三十点しかないんだから、三〜四点の間で受験生は争ってるんだよ」
「あー……言われてみれば確かに」
冷静に考えてみれば、同スペックの受験生同士が争えば、その数は十五人、八人、四人とどんどん少なくなっていく。
その中でひたすら勝ち続け、最後まで残ったとしても結果は多くて五、六点しか取れないのだから、冷静になって考えてみれば当然のことだった。
「もしかして二八点って、結構凄いのか?」
「はいはい、凄いな」
「二点でも合格出来るラインでしたから、凄いと思いますよ」
俺の呟きにガゼルは投げやりな感じで、ネネティアは真面目に応えてくれた。
「ちなみにガゼルは何点なんだ?」
「俺は三点だ。途中で魔力が切れてな……」
どうやらガゼルは実技試験も魔法で挑んだらしい。詠唱が無い為余分な魔力も消費しているのだろう。
やはりガゼルが今後強くなるには、そこが課題か。
「魔道兵器のレンタルしてただろ」
「使い方が分からん」
「あー、確かに。俺も結局後半は鈍器としてしか使ってなかったわ」
「それは意味が分からない」
何故だ。魔道兵器はいい感じに硬いから鈍器としても最適だと思ったのに。
なんならただ撃つよりも威力が出るぞ。
「二人とも魔道兵器の使い方が分からないなら、教えましょうか?」
「ほんとか!?」
「ほう、それは有難いな」
ネネティアの申し出に俺とガゼルは身を乗り出して乗っかる。
実技授業でも魔道兵器の扱い方は習っている最中だが、正直それだけでは厳しいと思っていたところなので、渡りに船だった。
「え、えぇ、でも私も大した腕ではないですよ?」
「五人に狙われている中で二人仕留められるなら、十分実力者だ」
「そうそう、俺やガゼルよりは遥かに上手いんだから問題無いって」
「おい」
ガゼルが何か言ってきたが無視だ無視。
それよりも俺は一ついいことを思いついた。
「なぁネネティア、まだ部隊決めてないなら俺達とチーム組まないか?」
「ふむ、確かにそれなら教えてもらうにもちょうどいいな」
「え?私がですか?」
俺の提案にガゼルも便乗してくる。せっかく知り合ったクラスメイトなんだからここで逃がす理由は無いし、何としても仲間に引き入れなければ。
「でも、私がいたら足でまといになるんじゃ……」
「銃撃戦じゃ俺達の方が足でまといなんだし気にすんなよ」
「それは誇ることじゃないぞ……」
上手くフォローしようとしたつもりが、ガゼルにダメ出しを食らってしまった。
だが、ネネティアには手応えがあったようだ。
「ふふっ、二人と一緒にいると楽しそうですね。分かりました、私を二人のチームに入れて下さい」
「よっし!決まりだ、これからよろしくなネネティア」
「銃の指導共々世話になる」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
こうして俺とガゼルは、ネネティア・イェーリスを新たにチームメイトとして招き入れた。
これで残すは後一人だ。




