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五話 無意識下にある人を構築する何か

しばらくは午前10時更新でいくつもりです。

更新時間を変更する場合はここでお知らせしますね。

 手の中には銀貨が三十枚。

 ミノタウロス一匹で三十万円だと思うと気分は複雑だ。


 毎日汗水垂らしながら営業していた給料がだいたいこの額。

 それがたった一回で得られてしまったのだ。

 もちろん日本円へ換金はできないが、この世界では紛れもなく三十万円の価値がある。

 こんな経験をしてしまうと会社で働くのが馬鹿らしくなってくるよ。


 ちなみに冒険者ギルドにミノタウロスを持っていたことで、ギルド職員から猛烈なスカウトを受けることとなった。

 今回はお断りさせてもらったが、正直冒険者になるのも悪い気はしない。

 冒険者になると色々メリットもあるみたいだしな。


「――で、お前はいつになったら役に立つんだ」

「しらん。ノリタカがウチを上手く使わんから悪いんじゃ」

「俺のせいかよ!」


 無表情の幼女はもぐもぐと串肉を食べている。

 くそっ、このままだと金をむしり取られるだけになる。

 なんなんだよこの幼女。寄生しているのか。


 ふぅ、落ち着け。熱くなっても仕方がない。

 とりあえずやるべきことをやろう。


 まずはこの町で異世界の地図を探すんだ。

 それと我が社の利益になりそうな情報を集める。

 桂木マテリアルは金属加工を主要事業にしているのだから、探すべきは未知なる異世界の金属だろう。

目的が決まったら早速行動。


 道具を売っている店を見つけて店員に地図のことを尋ねる。


「はぁ? 世界地図? んなものこの店にあるわきゃねぇだろ」

「そ、そうですか……ありがとうございました」


 次の店でも同じ質問をする。


「世界地図だって? あんた馬鹿にしてんのか?」

「もういいです。ありがとうございました」


 四件連続で回ったが世界地図はどこにもなかった。

 それどころかこの国の地図すら置いていない始末だ。


 五件目の店に入ろうとしたところで、先ほど助けた三人の男女が駆け寄ってきた。


「魔道士様! なにか困ってるのか!?」

「……地図を探しているんだ」

「地図? どこの?」

「できれば世界地図が欲しいが、ないのならこの国の地図でもいい。どこにあるか知らないか」


 三人は話し合いを行い、リーダーの少年が代表して返事をした。


「地図は貴重なんだ、もしあるとすれば領主様の館だと思う」

「領主? その館はどこにあるんだ?」

「あそこだよ」


 少年が指さした方角には大きな屋敷があった。

 なるほど、考えてみれば地図は秘匿されるくらい貴重な情報源だ。

 そんなものをそこら辺の店で売っているはずがない。

 うっかり現代人の感覚のままでいたよ。


「ありがとう。館に行ってみるよ」

「こちらこそ! またな魔道士様!」


 少年達は手を振って走り去った。


 助けた甲斐があった……のか?

 でも結果的にいい情報を得られたわけだし良かったのだろう。


 ぐいぐいとルルフェが俺のズボンを引っ張る。


「あれ、欲しいで」

「まだ肉を持ってるだろ! 我慢しろ!」


 ホットドッグを再びねだるので、俺は幼女を叱った。



 ◇



 営業ってのは断られるのが当たり前の仕事だ。

 一発目で成果が出るなんて奴はできる営業マンでもほとんどいない。

 だから必要なのは行動力と鋼の精神とトーク力。

 熱意や信用も必要ではあるが、まずはその三つがないと話にもならない。


 俺は住人から領主が好きなものを聞き出し、それを土産に屋敷を訪問する。


「止まれ! この屋敷に何用だ!」


 門へ近づくと二人の兵士が即座に行く手を遮る。

 やっぱ警備が厳しいな。一発目はアウトかな。


「領主様とお話しをさせていただければと思っておりまして……あ、申し遅れました。わたくし佐藤則孝と言うもので、魔道士をさせていただいております」

「サトゥ、ノォリィテケェ?」

「さ・と・う・の・り・た・か!」

「すまん。言いにくいのだ」


 謝られても困る。

 それはそうと面会はできるのだろうか。


「残念だが領主様は面識のない者といきなり会うことはされない。もしどうしてもお会いしたいというのなら、有力者からの紹介状でももってこい。その上で後日、面会の時間を伝える」


 ははは、ですよねぇ。アポ取りは基本中の基本だし。

 でもここであっさり引き下がっては営業畑で育った俺じゃない。

 できるだけ情報を引き出し次につなげる。


「それでですが、この町ならどのような方に紹介状をいただけるでしょうか」

「ジブリン商会の幹部であるトトロン殿やギルドマスターのオリバス殿だな。言っておくが、どちらも簡単にはお会いできない方々だ。地道に紹介状を繋いで領主様の元に来るんだな」


 冷や水をかけられた気分だった。

 まさかとは思うが、領主に会うだけでめちゃくちゃ時間がかかるんじゃないのか。

 まともにやってたらいつまで経っても地球に帰れないぞ。


「ただ一つだけ直接会う方法がある」

「!?」

「けどタダってわけには……いかないよな?」

「あの! このお酒をどうぞ!」

「お、悪いな。結構値が張るんだろ?」


 一瓶銀貨二枚の酒だ。

 二万円の酒なんて俺でも飲んだことねぇよ。

 けど、ここは耐えろ。情報を聞き出すためだ。


「実はな、領主様の娘が盗賊にさらわれて捜索中なんだよ」

「おい、こんな奴に――」

「いいじゃねぇか。もし無事に取り返してくれれば大万歳だろ」


 盗賊に娘がさらわれた……身代金目当ての犯罪か?

 確かにこれはチャンスだ。もし俺が取り戻せたら領主も会ってくれるはず。

 そして、謝礼に地図を複製させてもらえればミッションクリアだ。


「盗賊はどの辺りにいるか分かりますか?」

「噂では隣町までの間のどこかに根城があるって話だ。凶暴な魔物もでるから十分に気をつけるんだな」

「ありがとうございますっ!」


 俺は急いですでにチェックインしている宿へと戻る。

 自室へと戻ると、ベッドでいびきを掻く幼女の姿が目に入った。


 もう一つのベッドに腰掛けて計画を立てる。


 まず盗賊の根城を探し出す。

 そこへ直接乗り込み交渉をして娘を取り返すんだ。

 ネゴシエーターの経験は皆無だが、きっと俺ならやれる。

 というかやるしかないんだ。


 俺は左手で震える右腕を握る。


 もし盗賊が素直に応じない場合は……覚悟を決めるしかないか。

 ここは日本とは違う。やられる前にやらないと俺が死ぬ。


 ビビ。ビビ。


 リュックの中のトランシーバーが鳴る。

 またなんかあんのか。

 通話ボタンを押すと広瀬さんの声が聞こえた。


『佐藤君?』

「はい、なんの用ですか」

『あのね、近いうちにこっちに戻ってきてもらいたいの』

「はぁ? 基地にですか?」

『渡したい物があるのよ。開発課が試行錯誤して作ってた物があってね、それを是非佐藤君にって大原さんが言ってるの』

「それって実装データを集めたいだけなんじゃ……」

『と、とにかく早めに帰ってきてね!』


 ブツンと通話が切れる。

 くそっ、俺は実験モルモットかよ。

 この会社マジで無茶苦茶だな。


 トランシーバーを枕元に放り出し横になる。


 ほんともう誰でもいいからこの業務を代わってくれ。

 まだ営業部にいた方が何倍もマシだったよ。

 やるべきことはあやふやだし、いつ死ぬかも分からない場所だし、手持ちの金は少ないし、幼女にたかられるし。碌な事がない。


 俺は無意識に鑑定を自分に向けて開いていた。


 そこにはリアルタイムで表示される、俺という人間を構成するソフトウェアみたいなものが起動している様子が見ることができる。

 PCで言うならプロセスの一覧だな。


 【筋肉 25%】

 【神経 56%】

 【脳 12%】

 【魔力 98%】


 それぞれの項目の下には無数の稼働する部位が稼働率を示している。

 魔力の部分を見て、ふと気が付く。


 なんで魔力だけ98%も稼働しているんだ??


 詳細の一覧を見るとその理由が明らかとなった。


 【神への供物 実行中】

 【無意識アイドリング 実行中】

 【原初からの恩恵 中断】

 【能力の制限 実行中】

 【魔力拡散増加 実行中】


 我が目を疑った。


 これってどういうことだ。

 俺達地球人は、能力を制限されて魔力を吸い上げられてるってことなのか?

 どう見ても悪意のある設定がされている。


 俺は【神への供物】【無意識アイドリング】【能力の制限】【魔力拡散増加】を中断。

 それと少し考えてから【原初からの恩恵】を実行にした。


 それと同時に激しい頭痛に襲われる。

 なんだこれ……頭が……割れるように痛い。


 俺はそのままベッドで意識を失った。



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