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サラリーマン賢者の異世界業務日誌~ダラダラしながら高給をもらえるように一生懸命頑張ります~  作者: 徳川レモン
一章 平社員編

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四話 ドヴォルザークの町

 アイビッシュ国の辺境にドヴォルザークの町はある。

 辺境の町と言ってもそれなりに栄えており人口はだいたい二万。

 町を見る限りではこの国の文明レベルは近代程度だ。

 しかしながら魔法などの超越的な力やそれを利用した道具などがある為、一部の分野では非常に現代に近いことが予想される。引き続き調査を行う。


 パタン。業務日誌を閉じる。


「もうおわったんか?」

「まぁな。てか、いつまで俺に付いてくる気だよ」

「あむっ、んふぅ」


 幼女はフォークで大量のスパゲッティを巻き取り頬張る。

 その顔は幸せそうだ。育ち盛りなのかよく食う奴だ。


 現在俺は、ドヴォルザークの中にあるカフェで町の様子を観察している。

 洒落たテラス席からは通り過ぎる人々がよく見えて都合が良い。


 一応ではあるが俺もこの世界の食事をしてみた。


 どうやら味覚は地球人と変らないようで、特に違和感を覚えるようなことはなかった。

 ただ、味に関して言えば物足りなかったな。塩気が足りない、甘味が足りない、酸味が強すぎる、旨味が薄い。

 唯一満足できたのは値段の割に量があったことくらいだ。

 平均的な料理レベルは間違いなく地球が圧倒的に上だ。


「ルルフェ・ベルデウスじゃ」

「あん?」

「ウチはルルフェ・ベルデウス」


 ああ、自己紹介をしてなかったな。

 礼儀としてそれくらいはしておいてやるか。


「俺は佐藤則孝だ」

「サトゥ、ノォリィテケェ?」

「違う。則孝」

「ノリ、タカ」

「そう、それが俺の名前だ」


 流暢に日本語を喋ってるくせに発音が分からないのかよ。


 ……いや、これは魔法のおかげだったな。

 日本人同士でも発音が分からなくて確認し合う時もあるし許容の範囲内だ。

 

「ノリタカにはええこと教えてやるわ。ウチ、魔王なんじゃ」

「なんだそれ」

「魔王しらんのか?」

「知らん。つーか、それってすごいのか」

「でぇれぇ、な」


 本当かよ。めちゃくちゃ胡散臭いぞ。

 俺の感覚では魔王ってのは魔族を率いるラスボス。

 けど、それがこっちでも同じ意味で使われているかは怪しい。

 そう言う意味で俺は知らないと言ったのだ。


 魔王ね……どう見ても俺のイメージする奴とはかけ離れてる。


 目の前の幼女は黒い布にすっぽり覆われていて、どういった服を着ているのかも確認できない。襟が立っているので辛うじてその布がマントであることは分かるがな。

 だからってやっぱり魔王にはとても見えない。


「ウチを連れていけばええことあるで」

「本当かよ」

「ノリタカがなにをしたいんかは知らんけど、戦いやったら即戦力じゃ。特に守りの堅さは定評があるからな」


 グッ、と幼女はスパゲッティを口いっぱいに頬張って親指を立てる。

 はぁぁぁ、いきなり面倒な奴に絡まれちまったなぁ。


 俺はハンカチを取り出してルルフェの口元を拭いた。



 ◇




 この国で手っ取り早く金を稼ぐには魔物を倒すのが一番だそうだ。

 冒険者ギルドと呼ばれる場所に魔物の死体を持って行けば、相応の報酬が支払われるのだとか。

 とりあえず俺は当面の資金を調達する為に、町の外の草原で魔物狩りを始める。


 基本的に休暇をもらえるのは月に一度だけなので、それまでは自力で生活をしながら業務をこなさなくてはならない。

 そう考えると給料三倍って思っているより安いかも。

 早くこんなブラック業務から開放されて帰宅したい……はぁぁ憂鬱だ。


 バチンッ。


 ライトニングスパークで寄ってくるスライムを仕留める。

 で、死んでドロドロに溶けた体液の中から核を抜き取って袋に入れた。


「こんなものが金になるのか」

「ようわからんけどそうらしいで」


 ホットドッグのようなものを、もぐもぐしながらルルフェはこちらを眺めている。

 ほんとよく食う奴だ。しかも平然と俺にたかるし。


「あっちに金になりそうなんがおるで」


 あ? 金になりそうなもの??

 指さす方向へ視線を向ければ、三人の男女が必死で何かから逃げている姿が見えた。

 追いかけているのは牛頭人身の怪物だ。


 おいおい、この世界にはミノタウロスがいるのかよ。


「Bクラスのミノタウロスやったら儲かるやろ」

「なんだそのBクラスって」

「人間が勝手に付けたランクじゃ」

「ちなみに聞くが、このスライムは?」

「最低のEクラスやな」


 五段階のランクか? いや、六段階くらいありそうだな。

 その辺りは後で確認するとしよう。


「鑑定(タスクマネージャー)」


 ライトニングスパークをアイドリング状態にして鑑定を行使する。

 ウィンドウに項目が現われるので、俺はレベルを五にまで引き上げた。

 最大が十レベルなので、まずは五で効くかどうか確認する。


「いやぁぁあああっ!」


 少女がつまずき地面に転ぶ。

 ミノタウロスは斧を振り上げ頭をかち割ろうとしていた。


 俺は指で空に文字を描き、杖から魔法を発する。


 バヂヂヂッ。


 青い閃光が走りミノタウロス弾き飛ばした。

 だが、殺すには威力が足りなかったらしく、魔物は起き上がってこちらに向かってくる。


 それなりにダメージは入っているみたいだし、レベル十なら仕留められるだろ。

 てことでレベルゲージを一気に最大にまで引き上げる。


 ズ、バンッ。


 雷撃が瞬時にミノタウロスを直撃。

 数メートルほど吹っ飛び地面を転がった。

 焼け焦げた身体からは白い煙が立ち昇りピクリとも動かない。


 死んだか? よし、念の為にもう一発撃ち込んどくか。


 雷撃を再び直撃させ様子を見る。

 目を細めてじっくり観察を行った。


 怪しいな……もしかしたら死んだふりをしているかも。

 てことでもう一発直撃させる。


 ……いや、まだ生きてるかもしれない。


「もう死んでるって!!」


 もう一発雷撃を撃ち込もうとして助けた少年達に止められる。

 少年達の後ろには殺されそうになっていた少女もいた。


「助けてくれてありがとう。兄ちゃんすげぇ魔道士なんだな」

「すごい? 俺が?」

「だってあのミノタウロスを一撃で殺したじゃん」

「ま、まぁな……」


 実感がないから、褒められても分かんねぇよ。


 ビビ。ビビ。


 リュックの中で何かが鳴っている。

 取り出すとそれはトランシーバーだった。

 そう言えば広瀬さんが無線機を入れてるとか言ってたな。


「はい、こちら佐藤」

『広瀬です。そちらの様子はどうですか?』

「今のところ問題はないですね。それで急にどうしたんですか」

『それなら良かった。説明して送り出したものの、無事に着けたかちょっと心配していたんですよ。それに大きな魔力反応も急に消えてしまいましたし』

「魔力反応が消えた……」


 ちらりとルルフェを見る。

 もしかしてコイツが計器に反応していた魔力なのか?


 幼女は最後のホットドッグを口に入れて幸せそうにもぐもぐしている。


 ……ありえないな。偶然だろ。


「それらしい生き物とは出会いませんでした」

『そうですか。では引き続き調査をお願いします』

「了解しました」

『あ、言い忘れていましたが、この軍用トランシーバーの使用範囲はその町でギリギリ圏内です。それ以上に遠くへ行く際は報告をよろしくお願いしますね』

「分かりました」


 通話ボタンから手を放すと、三人にじっと見られていることに気が付く。

 なんだよ、なんでそんなキラキラした目で見るんだよ。


「お兄さん、遠距離会話の魔道具まで持ってるんだ! すげぇ!!」

「この人きっと名のある魔道士なんだよ! 顔はさえないけど!」

「あの! 助けていただいてありがとうございました!」


 三人の男女ははしゃいでいる。

 勘弁してくれ、俺は子供が苦手なんだよ。


 俺はミノタウロスを担ぎ上げると、さっさとその場を退散した。



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