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1話:ショップのお姉さんとにゃんにゃんしてますにゃん

誤字・脱字などありましたらご指摘、ご報告お願いします。

 私こと、飼い猫であるチアーク・ペローは今日も、

飼い主である御神みかみ ゆずりは様(通称:マスター)と一緒に、

VRMMO『The picture book of goddess Online』

(通称:絵本)にログインしたのですにゃ。

 

 今日もたっぷり遊んでくれるんだとウキウキしてた私だったのですが、

マスターったら急にギルドのメンバーと狩りに行くことになってしまったのにゃ。

 マスターは何だかんだ言って、面倒見がいいから、

メンバーの頼みを断れなかったんですにゃね。


 私はマスターのペット……とはいえ、鑑賞用なので一緒には行けませんにゃ。

 だから、マスターが帰ってくるまでギルドショップの隣で、

招き猫をして待っていることになりましたにゃ。

 

 マスターは泣く泣く

「絶対に帰ってくるからっ! そしたら……前みたいに遊ぼうね!」

なんて、フラグたっぷりのお芝居ちっくな台詞を残して出かけていきましたにゃ。

 

 言われなくても、ショップのカウンターに設けられた座布団の上に鎮座して、

待機してますにゃん!

(ときどき、ショップのお姉さんになでなでしてもらいますにゃ♪)

 我ながら、忠犬もびっくりの忠猫ですにゃね。


 うにゃ? なんでマスターについていけないのかって?

 うーんと、それはこのゲームのペットシステムの仕様問題ってやつですにゃね。


 動物やモンスター、それに人型の生き物を連れて歩く機能。

 それが、『ペットシステム』なんですにゃけど。

 別に、この『絵本』独特のシステムというわけではないですにゃ。

 昔から色んなMMOで導入されているシステムでして、 

連れて歩いたりして見せびらかしたり、

一緒に戦闘したり、ペットに乗ってフィールドを移動したり。

 用途は人それぞれですにゃん。

 

 この『絵本』での、ペットの種類は大きく分けると2種類ありますにゃ。

 『戦闘用ペット』と『観賞用ペット』。

 前者は、戦闘面において主人をサポートするペットのことで、

モンスターや精霊といった、戦闘に特化した生き物が多いですにゃ。

 戦闘用は騎乗することも可能で、街やフィールドに連れていくことが出来ますにゃね。


 後者は戦闘には一切参加できない、文字通り見て楽しむだけのペットですにゃ。

こっちは、限定イベントモンスター、課金ペットが主流になりますにゃ。

 撫でたりとか、ちょっとだけ騎乗も出来ますにゃ。

 入手条件が限られてる上に、連れて歩ける場所は色々と制限が掛かるので、

 純粋に冒険を楽しむゲームユーザーにはあまり人気がないのですにゃ。

(課金専用ペットとかって揶揄されたりもしますにゃ。ぷんぷんにゃ)


 あとは私のようなゲームユーザーが、

現実で飼っているペットをVRに連れてきて、ゲーム内でペット登録する場合は、

強制的にこの観賞用ペットで登録されますにゃ。 


 これは、システムが未実装だからとか、

(人間が使用してる機能をペット用に置き換えるのは、

時間とコストが掛かるらしいですにゃ)

 法的にNGなんじゃないか? とか言われてますけど、

少なくとも現在のバージョンでは、そういう仕様ってことになってますにゃ。


 とにかく、そういう理由でマスターのオトモとして狩りやら、

クエストには行けなかったのですにゃー。しゅんしゅん。


 ふかふかの座布団の上でゴロゴロとくつろぎながら、

私はお日様の匂いや柔らかい風を楽しみますにゃー。

 思わず、VRであることを忘れそうになりますにゃね。

 これって、全部作り物……なんですにゃよね?

 うにゃーん、本物にしか感じませんにゃ。人間の技術ってすごいですにゃ。

 

 特に、この『匂い』。 

 これが、もう本当に本物と区別がしづらくなってますにゃ。

 あったかいこの匂いが作り物だなんて……。

 まぁ気持ちいいなら何でもいいですにゃーん♪ うにゃうにゃ。

 匂い、質感、温度……こういう感覚? ってものを作っちゃうなんて凄過ぎますにゃ。

 

 なんでもVRが普及してからは、こういった5感の再現や調整専門の技師職が

 誕生したんだとか。

 所謂、『センスプランナー』とか『センスシステマー』って呼ばれる人達ですにゃ。

 

 たしか、ご結婚されたマスターのお姉さま、田代たしろ 柚子ゆず様は、

 もともと、香水関係のお仕事をされてたんですけど、

 何のご縁なのか、大手ゲーム会社で『リードセンスプランナー』をされてますにゃ。

 世の中何が起こるかなんて、猫でも分からないものですにゃね。 


 たまに、開発中の『香り』を持ってきては、マスターや私を実験体にしますけど。

 ……あれは悪夢でしたにゃ。

 し、刺激系の香りはやめてほしいですにゃっ! ふしゃー!

 むむっ、思い出しただけでも鼻がむずむずしますにゃ。むにゃー。

 あ、でもマタタビちゃんならいくらでも……むふふふふ。



 「ふふっ、どうしたの? チアークちゃん。マスターが帰ってこなくて寂しいの?」


 

 はぅ! むにゃむにゃと変な顔をショップのお姉さんに見られてしまったにゃ!

 なんか笑われたにゃ! う、うなー……はずかしいにゃ。

 とりあえず、別に寂しくなんかないから否定しておくにゃ。きりっなの。

 


 「そんなことないにゃ」


 「そっか、もうちょっとで帰ってくるからね。一緒に待ってようね」



 そういうお姉さんは、何だか微笑ましいものを見るような目で、

 にこにこ笑ってるにゃ。子供扱いはやめろにゃーっ!

 ほ、ほんとうに寂しくなんかにゃいんだからね?



 「あー、もう! チアークちゃん可愛いなぁ……ぎゅー」



 ふにゃーーーっ! ぎゅーぎゅーは禁止ー!

 うな!? 首元なでなでとは、卑怯っ!

 うにゃにゃ……気持ちいいにゃ。ごろごろごろごろ。

 猫の性ですにゃー、くっくやしい……ごろごろごろごろ。


 お姉さんとにゃんにゃんごろごろな時間(変な意味はないにゃよ?)

 を過ごしていると、突然、ポーンと高いシステム的な音が鳴り響いたにゃ。

 平和なタウンに似つかわしくないこの音は、運営からの重要なお知らせ音にゃ。

 ここだけじゃなくて、全サーバーに向けてこのお知らせは発信されてるにゃ。


 システム音が鳴ってから、しばらくしてから、

ユーザー1人1人のメニュー画面が自動で開かれ始めましたにゃ。

 メニューが開けない場所にいる人達用にと、大きめのスクリーンも色んなところで、

表示されているにゃ。

 ちょうどショップのお姉さんがメニュー画面を開いたので、

 私も横からそれを見ることにしましたにゃ。

 


 ---------------------------------------------------------------------------------------

 

 「The picture book of goddess Online」をご利用いただきありがとうございます。

 定期メンテナンスが終了しました。

 このメンテナンスをもって、いくつかのシステムがバージョンアップされます。

 

 また、大変長らくお待たせしておりました、

 体感時間を加速させる新サーバー「アクセル・サーバー」がオープン致します。

 それに伴いまして、未実装システムと課金アイテムの販売も開始致します。

 

 なお、この内容は重要なお知らせとして運営から全ユーザーに向けて、

 ご案内のメールを送信させて頂きました。

 また、HPも更新しましたので合わせてご確認頂きますようお願いします。

  

  更新内容

  ・「アクセル・サーバー」オープン

  ・アクセル・サーバーオープン記念イベント開始

  ・アクセルチケットの販売開始

  ・ペットシステムの更新  


 今後とも、「The picture book of goddess Online」を宜しくお願いします。

 

 

 ---------------------------------------------------------------------------------------



 「キタ━━(゜∀゜)━━━━ッ!!」

 

 「え、マジでw? 本当かよ運営!」


 「っしゃああああーーー!! やっとアクセル解禁だぜぇぇぇ!!」

 

 「イベントってなんだろう? wktk」


 「てか、また課金とか(´・ω・`)ショボーン もう私の財布のHPは0よっ(TωT)」 


 「ヒャッハーヽ(・∀・)ノゲームの中に引き籠るゼ」




 物の数分もしないうちに、あちこちから上がる歓声。

 無理もないですにゃね、皆が待ち望んでいたシステムがようやく公開なのですにゃ!

 まだサーバーにインしてもいないのに、お祭り騒ぎが始まってますにゃー。

 ネットの中の連中は、悪乗り好きが多いにゃん。

 

 うにゃ? 『アクセル・サーバー』について詳しく?

 しょうがないですにゃね……。

 新しく追加された『アクセル・サーバー』。

 そこは、他のサーバーとは違う特色を持っているにゃ。

 アクセル(加速)と名が付く通り、

そこでは現実時間に加速処理が施されるらしいにゃ。

 現実時間の加速処理なんていうと、小難しい感じですにゃけど、

(私もさっぱりですにゃーん)

 分かりやすく例えるなら、ゲームを現実の時間では1時間プレイしたとして、

それがVR内での体感時間(ユーザーが感じる時間)に変換すると、

1か月になるって仕組みですにゃ。

 うん、とんでもないお話ですにゃね。全然実感が湧きませんのにゃ。


 時間に加速処理をかけて、短縮する技術「アクセル」によって、

短い時間で長いプレイを楽しんでもらうサービスサーバー、

それが『アクセル・サーバー』ってわけですにゃ。すごいにゃ? 驚きにゃ?


 私も周りのお祭りムードに煽られて、

何だか分からないけど嬉しい気持ちになりますのにゃー♪

 きっとマスターも喜んでるに違いないにゃー。

 また、廃神ライフが始まるに違いないのですにゃっ!


 そこまで考えて、私はハタッとあることに気づいてしまったにゃ。

 私の中にあった楽しい気持ちが嘘みたいに沈んでしまいましたにゃ。

 

 あることとは、もちろんマスター関連の事にゃ。

 この運営のお知らせはマスターも絶対に見てるんですにゃ。

 皆が待ち望んでいたってことは、当然マスターも、

 この『アクセル・サーバー』の解禁を待ち望んでいましたのにゃ。

 しかも、オープンと同時に限定イベントの開催宣言付き。

 これは、廃神プレイヤーと言われるマスターが食いつかないはずないのですにゃ。

 イベントには絶対参加するに決まってますにゃ。


 イベントでは何が起こるかわかりませんにゃ。

 納品系なのか、それとも戦闘なのか……。

 どちらにせよ、何が来ても良いように、万全の準備をしていくと思いますにゃ。

 そうなると、色々と制限の付く鑑賞用ペットはお荷物にしかならないにゃ。

 当然、ペットは戦闘用ペットを連れていくと思いますにゃ。

 そうなると、私は必然的にお留守番というわけですにゃ。

 

 今までは戦闘に参加出来なくても、一緒に行けないところがあっても……、

 マスターとお話し出来るこの世界が好きでしたにゃ。

 だから、それ以上の高望みはしてこなかったのですにゃ……けど。

 今回ばかりは観賞用ペットだったことを、歯がゆく思いますにゃ。



 「私も戦闘用ペットだったら良かったにゃん。

  そしたら、マスターとずっとずっと一緒に遊べますのにゃ」

 


 気が付いたら、私の口からはそんな言葉が漏れていましたにゃ。

 そんなのは、ただのワガママに過ぎないと理解はしたいますみぃ。

 でも、だけど……。

 そんな言葉が頭の中をぐるぐる回っていましたにゃ。



 「いっそのこと、プレイヤーだったらにゃぁ。

 そしたら、マスターと同じ遊びが出来るし、手助けも出来るにゃん。

 ……私は役立たずにゃんにゃんですにゃ」



 なんだか、より一層みじめな気分になったので、

 私はこっそりお姉さんの手から離れると、お店のカウンターから降りましたにゃ。

 これ以上しゅんしゅんしないように、一刻も早くその場を離れたかったのにゃ。

 そこから私は、何も考えずにゲートまで走って行ったにゃ。



 「あ、チアークちゃん見て!

  ペットシステムがようやくバージョンアップしたみたいよ。

  アクセル・サーバーが話題を浚っちゃって、埋没してたみたいだけど。

  チアークちゃんには関係あるんじゃないかな?」



 そんなお姉さんの重要な言葉さえも、私の耳には入りませんでしたにゃ。

 ひたすら、ただただがむしゃらに走っていったんですにゃ。



 「鑑賞用ペットを戦闘用ペットにシフト出来るんですって!

 色々問題があったみたいだけど、やっと実現したのね!

 良かったわね! チアークちゃん。念願のご主人様との冒険だよ!

 ……って、あれれ? チアークちゃん!?」



 逃げ込むように適当なゲートに飛び込むと、即座にログアウトを実行。

 ログアウト時に起きる独特の浮遊感に包まれながら、私はじっとしていましたにゃ。

 この瞬間が、いつも嫌にゃんですけど、こればかりは仕方ないですにゃね。

 目を瞑って待っていれば、すぐに現実世界の寝床に戻っている、

そう思って、私は大人しくゲートで待機しましたにゃ。



 だけど次に目を開けた時、私は自分の目を疑ってしまいましたにゃ。

 だって、そこは慣れ親しんだ寝床ではなかったのですにゃ。

 青白い光に包まれた見たこともない部屋。

 なんだか変なところに飛ばされていたのですにゃ。

短くしようと思ったのに続いてしまったのにゃん。

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