8月28日
「晴れた夜の日って月から見られてるみたいじゃない?」
夏の終わり、エアコンも無いあるのは辛うじて動いているだろう扇風機の生温い風を浴びながら布団の中で蚊の鳴くような声で呟いたのを聞き瞼を閉じながら耳を傾けた。
「え?どういう事?」
「だってさ毎日毎日月の形が変わってだんだん細くなっていくじゃん、まるで目が細くなっていって自分の事を嘲笑ってるように感じるの」
正直、ああまためんどくさい事を言い出したよと思っていた。だが今日はいつもと様子か違う。眠い瞼を少し開け時計を確認すると深夜2時15分。落ちてくる瞼に逆らえず目を閉じながら答えた。
「大丈夫だよ、今は俺達2人だけだし誰からも見られてないよ、おいで」
薄い布団を彼女にかける。心做しか月明かりがいつもより眩しく感じたのは彼女、そう夏帆がおかしな事を呟いたからだ。
「私達これからどうする?」
カタカタカタと扇風機の音が鳴り響く。
「とりあえず明日は何か美味しい物を食べに行こうか。何がいい?ご飯系だったら定食でもいいなー、でも朝から麺とかも良くない?あそこのさ...」
行きつけのラーメン屋を口に出そうとした時
「もう、いいよ。」
「そっか。もうこんな時間だし寝よう?明日になったら月も見えなくなるよ。おやすみ」
彼女は何も答えない。
ベッドの下には頭から血を垂れ流している死体がある事など忘れてしまう程美しく、異様な空間だったと思う。
人というものは何とも不思議な生き物だと思う。なぜなら誰かから見られている様に感じカーテンを閉じたからだ。
「....」
なぜかその日はよく眠りにつけた。きっと、疲れていたからだろう。そう思い込むことにした。




