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楓
雨が降る日に楓の木を見ると思いだす
楓の木は細い幹の佇まいが琥珀色で美しい
その幹から細い指先のような枝の新芽が出ていて
触れると柔らかくしなる
繊細な心のひだのように
楓の葉はゆっくりと黄色から赤に染まる
ふんわりひらひらと落葉する
そのさまはたおやかな言の葉のよう
心に落葉して
温かなベッドをつくるから
無力なまま眠りに落ちる
真の夜、夜の夜、木の葉に雫が落ちる
雨のように包まれる
その切なさに
何も言わないで
何も言えないまま
私は気づかないふりをする
そして
気づかれないように
目を閉じたまま
涙を落とすの
楓よ楓
誰かに抱きしめられる
言の葉よ
私のためだけに在らず
この手に収まらず
風にさらわれ
染まり舞い落ちる
目を閉じたままでいる
心の中を雨のように落ちてゆく




