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20.今日も優雅に微笑む

 プルパールは穏やかな日々を過ごしていた。聖女見習いなって早3年。聖女リィスニーナは厳しくも優しくプルパールは聖女を実の母の様に慕った。今だから思う。本当に望んでいたのは権力や豊かな生活ではない。笑顔で穏やかに暮らせるそんな日々だったのだと。奉仕活動をし人々の笑顔に触れプルパールの心は満たされていったのである。そんな日々の中である日プルパールは真に覚醒し光属性魔法の使い手となった。

 

 明日は聖女就任の日だ。これは異例の早さで、それだけプルパールが努力したという事である。といってももう1,2年はリィスニーナの補助を受けれるのでプルパールに不安はない。できれば早めにリィスニーナを開放してあげたいとは思っている。


 国を挙げての盛大な就任式のあった夜、プルパールはリィスニーナに呼ばれ聖女に伝承される資質の話をされた。

 聖女の資質とは前世の記憶を持つこと。逆にその一点だけだった。それが初代聖女から伝えられ代々守ってきた聖女の唯一の決まり。そして聖女として過ごす内に資質の有無を見分けれる様になるのだ。


 リィスニーナの考えでは聖女の資質を持つのは魂の浄化を求められ人生を新たにやり直しさせられた者ではないかとの事だった。プルパールにも心当たりがあり、自分は道を間違えずに済んだのだと素直に思った。そして踏み外さずにすんだのはリィスニーナと、そしてシェリーのお陰と思っている。シェリーに初めて宣戦布告した時、微笑みを向けられて、拍子抜けしたのと同時に心が暖かくなったのを感じた。その後どうにもシェリーに強く出れずに周囲を取り込む作戦に転じた。もし、彼女を悪辣に嵌めて貶めようとうしたら今こうして居ることは叶わなかっただろう。

 あの微笑みをどうしても憎めなかった。それが今に繋がっているとプルパールは思うのだ。


 レドグリンはあの夜会の後、父親に廃嫡を申し出た。生涯酒を断つ決意をし、そして心身を鍛えるため本格的に騎士の道を志すことにした。プルパールが聖女見習いとなると自らも神殿騎士を志し、プルパールの聖女就任と合わせて聖女付き護衛騎士に抜擢された。


 マークサンドス公爵ランクレスは忙しい日々を送っているが日々充実していた。小麦の品種改良にも成功し、飢饉の心配もなくなった。何よりシュリーより受け継いだ公爵領に根ざした産業が公爵領を一層豊かにしていた。嬉しい悲鳴だが夫人に子をもう一人とせがまれ最近はお疲れ気味だ。仲がいい事である。


 かつて皇太子候補だったご令嬢達は全員良縁に恵まれそれぞれ嫁いだり婿を迎えたりした。

 皇太子妃、いや昨年皇后となったシェリー派閥の有力メンバーとして滅多に姿を表さないシェリーの代わりに社交界を引っ張っている。シェリー派閥の真のリーダーは女官長兼、皇后筆頭侍女となったリアーナなのは言うまでもない。


 そのリアーナは仕事にかまけて結婚していないと思いきや、しっかりと結婚し子も成していた。今の野望はシェリー第2子の乳母になることらしい。


 ギャンガーケル公爵家令嬢サマサリーヌは他国の王族より婿を迎え公爵を継いだ。そしてマークサンドス公爵家と並び、シェリーの後ろ盾となった。何故か他国人には人見知りにならないサマサリーヌは外交力を活かし、外交官としてもシェリーを支えた。なお二人だけの静かなお茶会は互いに子を成した今でも行われている。



☆☆☆☆☆


 皇宮の皇族しか入れない庭園に東屋にシェリーは居た。庭園の警備は極めて厳重だが庭園の中は皇族しかおらず使用人すら廃されて皇室の一家団欒中だった。


 シェリーの隣には義母の皇太后ビビアンヌ。二人の視線の先には芝の上で遊ぶ3人の男達。太上皇、皇帝アルデルン、第一皇子2歳だ。皇帝は皇子の馬、太上皇は悪いドラゴンで、馬に乗った皇子が悪いドラゴンを成敗しているのだ。


 涼し気な1陣の風が吹く。


「シェリー、お腹の子に障るわ。そろそろ戻りましょう」


「…………はい義母様」


 シェリーは美しい微笑みを浮かべた。


 愛しの夫と間に生まれた我が子を眺めながら思考を停止するのが最近のシェリーの喜びである。二人目を授かり夫からも義父義母からも大切にされている。


 シェリーが嫁いできてから全てが上手く回っている。流石は出来た嫁だとアルデルンへの譲位を早めたのだがシェリーはいつもの様に微笑みながら思考停止していただけである。

 ビビアンヌに助けられてシェリーが席から立つと遊んでいた3人がシェリーの元にやってくる。

 シェリーは3人を優しい微笑みで迎えるのだった。


 アルデルンの御代、帝国は最も輝ける時代となった。富み、栄え、そして慈愛に満ち溢れた国。そんな帝国の輝ける時代はシェリーフィアスの微笑みと共にあったのだった。


読了お疲れ様でした。

そしてここまでお付き合い頂き有難うございました。


微笑むだけというコンセプトで短編を書いたのがきっかけで生まれのがこの作品です。短編版は無常観が漂う感じだったので今回はご都合主義に仕上げました。


気付いた方もいるかもですが1話から完結までの全話同時アップも一回やってみたかったので今回やってみました。勿体ないのでもう2度とやりませんが。


また別の作品でお会いできれば幸いです

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