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異世界から日本に帰ってきたらなぜか魔法学院に入学 この際遠慮なく能力を発揮したろ  作者: 枕崎 削節


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370 ジジイが降り立ったソフィアの街(後編)

先ほど投稿したお話の続きとなります。

 廃工場の正門から一歩内部に踏み込んだジジイ。当然ながらその敏感な気配察知のスキルは建物の内部に数多くの人間が潜んでいる様子を捉えている。



「どれ、少々脅かしてくれようかのぅ」


 正門から奥に続く真っ直ぐな通路の両側に5棟ずつの工場の細長い建物が並んでいる。ジジイはひとまず右側の建物の中央部に狙いを定めると、気合一閃。



「太極波~」


 ドゴ~ン!


 もちろん本気の一撃ではないにせよ、ジジイの放った闘気は当たり前のように建物に着弾して小さな爆発を生じさせる。


 続いては左側に並ぶ建物にも同様の一撃。


 ドゴ~ン!


 建物のど真ん中には大穴が開いて、無事な通路側の出入り口からは大勢の武装したマフィアたちが転がり出てくる。



「チ、チクショウ! 待ち伏せがなんでバレたんだよ」


「まさか爆弾を放り込んでくる相手なんてどうしたらいいんだ?!」


「こうなったら撃って撃って撃ちまくるしかないねぇだろがよ!」


 建物の内部に潜んで有利な位置から先手を取ろうと企んでいたのが、逆にジジイの先制攻撃を食らってその目の前に姿を晒さねばならないなんとも気の毒なマフィアたち。


 こうなったら当初のプランなどかなぐり捨てて、各自がめいめいに発砲開始するしか手段がないという状況に追い込まれているのは「相手が悪かった」と諦めてもらうしかないだろう。


 逆に自分に向かってくる夥しい銃弾に身ひとつで立ち向かうジジイはといえば…



「フン!」


 身にまとう闘気のオーラを一段階厚くしてバリアーの効果を持たせている。おそらくは龍王の力を得た効果であろう。これまでよりもさらに自在に闘気を扱えるようになっているのはちょっとビックリかもしれない。まあ、このジジイなら、この際何でもアリか…


 それよりももっとビックリしているのは、盛んに銃を撃ち放っているマフィアたちのほう。「絶対に当たった」と思った弾がジジイの体に到達する寸前でバラバラと地面に叩き落とされていくのだから、驚かないほうが無理というモノ。



「な、なぜだ! なんで当たらないんだ!」


「頼むから当たってくれぇぇぇぇ!」


「おい、このままじゃあっという間に弾切れになるぞ!」


 発砲するマフィアたちの間に徐々にパニックにも似た心理状況が広がっていく。これだけ大量の銃弾を浴びせられていながら、無傷どころか弾自体を撥ね返す存在を目の前にすれば、大抵の人間は泡を食って当然だろう。


 マフィアたちの額にジットリと汗が浮かび出した頃合いに、今度はジジイが一歩一歩前進を開始する。



「ヒィィィィ! 来るなぁぁぁぁ!」


「ヤメろぉぉぉぉ! これ以上近付くんじゃねぇぇぇぇ!」


「このバケモノがぁぁぁぁ!」


 徐々に接近してくるジジイの様子に、マフィアたちのパニックはいよいよ昂進していく。そしてそのどうにも止めようがない危険な心理状態は、彼らが手にする銃がカチカチと乾いた音を立てて弾丸を吐き出さなくなった時点でピークに達していく。



「俺たちはどうすりゃいいんだぁぁぁぁ!」


「銃が通用しない相手なんて、もうお終いだぁぁぁぁ!」


 だが、中にはまだギリギリで踏み止まっている男もいるようで、一旦建物の内部に身を隠したかと思ったら銃とは違うより大型の物体を肩に担ぐようにして戻ってくる。



「銃が通用しないんだったら、コイツをお見舞いするしかねぇだろう」


「そうか、それがあったのを忘れていたぜ!」


「でかした! これであの怪物も一巻の終わりだぜ」


 急にマフィアたちが元気を取り戻している。その原因は、ひとりの男が肩に担いできたロケットランチャーのおかげで間違いないだろう。


 マフィアが士気を取り戻したのはいいとして、それよりもこんな軍用装備品を隠し持っているなんて「一体どこの修羅の国だ」という言葉が出かかってくる。


 そんなことには構いもしないマフィアたちは、ロケット砲の発射準備を整えてよう。



「発射するぜ! 周りから離れてろよ!」


 バシューン!


 炎の尾を引いて一直線にジジイに向かっていくロケット弾。わずかな後に…


 ドカーン!


 立ち上るオレンジ色の炎と耳をつんざく強烈な爆発音。轟音が去った後に煙が晴れると…



「バ、バカな…」


「ロ、ロケット砲の直撃を受けたはずなのに…」


「なぜ生きているんだ…」


 その場で普通に立っているジジイの姿を見て、今度こそ魂が消し飛ぶような衝撃を受けている。


 対するジジイは敢えてプレッシャーをかけるようにゆっくりと歩を進めながら…



「素人がかような花火をオモチャにするではないぞい」


「うわぁぁぁぁぁぁぁ! もうダメだぁぁぁぁぁぁぁ!」


「逃げろぉぉぉぉぉぉ!」


 ジジイの余裕満載のセリフが一気にマフィアたちの精神を崩壊させる引き金になったよう。彼らは踵を返して一斉に逃げ去ろうとする。


 だがジジイがみすみす逃げ去るマフィアたちを見逃すはずもなく…



「フン!」


 さしたる気合も込めずに右手を突き出すと、その拳から生じた衝撃波がマフィアたちに襲い掛かっていく。



「ギャァァァァ!」


「ゲホッ!」


「グワはぁぁぁ!」


「ウゲぇぇぇぇ!」


 たったの一撃で30名以上のマフィアの精鋭たちが壊滅した模様。これはもう戦闘ではない。単なる殺戮に過ぎない。


 もっともこれまで散々悪事を働いてきたツケが一気にやってきたのだから、マフィアたちは少しでも悔い改めてあの世に向かうしかないだろう。  


 こうして邪魔な有象無象を排除したジジイは、通路の最も奥にある元々は事務所であったと思しき建物へと向かっていく。


 正面の出入り口にはカギが施されてあったので、何の躊躇いもなく鉄製の扉を蹴破ると、空気を斬り裂いてこちらに何らかの物体が飛んでくる気配を捉える。


 

「無駄じゃよ」


 二カッと笑うジジイの右手には、黒塗りのナイフが二本。もちろん手で掴み取ったのではなくて、3本の指で挟んで止めている。



「ホイ、お返しじゃ」


 クルッと向きを変えたナイフがジジイの手首のスナップによって二本まとめて投擲されると、暗がりから「グハッ!」という断末魔の声が聞こえてくる。


 

「くだらん児戯よのぅ。もうちょっとまともな相手はおらんのか?」


 暗殺者の必殺技である暗闇での投げナイフを「児戯」のひと言で片付けるジジイ。地上最強の座を現状学院長と分け合っているだけのことはある。


 そのまま階段を昇って2階のフロアーに出てみると、そこには合計で5名の男たちが並んで立っている様子がジジイの目に飛び込んでくる。



「はて、見掛けは人の姿ではあるようだが、中身はどうやら別物のようじゃのぅ」


「ほう、ひと目見ただけで我らの正体がわかるとは、貴様は一体何者だ?」


「ホホホ、何者かと聞かれてものぅ。一介の武芸者としか答えようがないぞい。並の人間よりはずいぶんと長く修行は積んでおるがな」


「何をわけのわからない戯言を! よかろう、この場で我らが討ち取ってくれる」


 5名の男たちの輪郭が一瞬ブレたかと思ったら、そこにはつい今しがたまでとはまったく別の存在が立っている。頭には特徴的な角を持つレプティリアン・ナイトがまとめて5体、ジジイに向かって射殺すような視線を向けている。


 その姿を見て取ったジジイは…



「やはりな。我が宿敵アドラメクを倒して本懐を遂げたと思いきや、どうやらそなたらとの因縁はもうしばらく続きそうよな」


「貴様、なぜ我らに言い伝わる伝説の英雄の名を知っている?!」


「知れたことよ。我が長き転生においてひたすら彼奴を倒すために武を磨いてきたのがこのワシの生き様でのぅ。それが此度米国において宿敵の記憶を宿す副王なる存在を倒したのでな」


「なんだと! アメリカの我が同胞たち… あまつさえ副王殿まで手に掛けたのは貴様だというのかぁぁぁぁ!」


「だからそう申しておるじゃろうに。まったく物分かりの悪いトカゲよのぅ」


「許さぬ! わが命を懸けても貴様だけは絶対に許さぬぞ!」


「ならばそなたも自らの本懐を遂げてみるがよかろう」 


 ジジイのセリフが戦いの火蓋となって、5体のレプティリアン・ナイトからお馴染み万物を分解する波動が放たれる。



「無駄じゃよ」


 だがジジイは余裕の表情で何もしないままに恐ろしい波動を正面から浴びている。



「口ほどにもない。分子単位まで粉々になるがよい… な、なんだとぉぉぉぉ!」


 レプティリアン・ナイトたちの表情が一斉に驚愕によって引き攣っていく。分解の波動を受けたジジイはまったく何も変わらない様子でその場に立っているという、レプティリアンにしてみればなんとも信じられない結果を突き付けられた影響だろう。



「ワシも色々とあってのぅ。否も応もなく闘気が強化されたようで、銃だろうがロケット砲だろうが、そなたらの波動であろうが、何も効果を及ぼさぬようになったのじゃよ」


「そんなはずあるかぁぁぁぁ! 貴様のペテンを暴いてやる!」


 再び分解波動が放たれるが、相変わらず涼しい顔で立っているジジイ。



「さて、遊びはお仕舞のようじゃのぅ。それでは参るぞい」


 そのセリフを吐くや否や、ジジイの体がレプティリアンたちの視界から消え失せる。より正確に言えば、あまりにも素早く動いたせいで動体視力が追い付かなかったということになる。


 人間よりも何倍も優れた動体視力を持つレプティリアンの目をもってしても動きが捉えられないというのだから、おそらくこの時のジジイは桜の数倍もの素早さで動いたと思われる。


 そして5人並ぶレプティリアンたちの最も右側の1体の横に姿を現すと、脇腹目掛けて拳を一発入れていく。


 ジジイから攻撃を受けたと気付いたレプティリアンは…



「こ、この! 急に姿を現すとは。だが効かぬぞ。我の身を包む波動が衝撃を吸収して… ゲフッ!」


 大して効果はないと強がっていたはずのレプティリアンが、突然口から大量の血を吐いてその場に倒れ込む。どうやらジジイのパンチがレプティリアンの体表に張り巡らされている波動のバリアに打ち勝った模様。


 効果が表れるのにタイムラグがあったのは、バリアの波動とぶつかったジジイのより強い波動が波のように徐々にレプティリアンの体に浸透してダメージを与えたからに他ならない。


 ということで、ここから先はジジイの一方的なターンが続いて、あっという間に5体のレプティリアンは討ち取られていく。



「大した手間でもなかったのぅ。さて、親玉はどこにいるか…」


 ジジイが闘気の膜を拡大するように広げていくと、驚くべきことに壁を突き抜けて建物の内部に広がっていく。その様子は、あたかも美鈴やカレンが探知結界を張り巡らせて敵の接近を知覚する状況とよく似ている。


 

「ふむ、どうやらこの建物にはすでに誰もおらぬようじゃ。仮に逃げ出すとしたら、人目につかぬ地下かのぅ」


 ということで、地下に向かって階段を降りていくジジイ。ぐるりと周囲を見渡すと、どうやら怪しげな箇所を発見したよう。



「この辺りじゃのぅ。ハッ!」


 壁に両手を押し当てて気合を込めると、ガラガラと音を立てて壁が崩れていく。その先にはジジイの予想通りに長く伸びる地下通路が存在しており、かなり長い距離まで続いているようで、終わりがどこなのか見通すことはできないよう。



「ふむ、どうやら走って遠ざかる気配があるのぅ。追いかけるのも面倒ゆえにこうしてくれよう」


 ジジイは少しだけ精神集中する素振りを見せた後、どこまでも続く地下通路をクワっと見つめる。そして…



「龍撃波ぁぁぁぁ!」


 太極波とは違う龍の形状をした闘気の塊が飛び出していき、地下通路をものすごい速度で突き進んでいく。この龍撃波は追跡機能があるので、どこに逃げようとも必ずターゲットを仕留める仕様となっている。


 やがて…


 ドッパァァァァァァァァン!


 途轍もない爆音と衝撃波がジジイの元にも届いてくる。



「これはさすがに外に出たほうがよさげじゃのぅ」


 素早く階段を駆け上がって外に出てみれば、どうやら地下通路が延びていく方向にかなりの区間で地面が大々的に陥没している様子が飛び込んでくる。


 爆発の影響で地下通路直上にあった建物はすべて跡形もなく倒壊しており、周辺も壁が崩れたりガラスが割れたりして相当な被害が出ている様子。


 それだけならまだいいのだが、どうやら地下での爆発のせいで疑似的な地震まで発生してパニックに陥った市民が逃げ惑う様子まで伝わってくる。


 この酷い状況を目にしたジジイといえば…



「少々加減を間違えたようじゃのぅ。まあ、起きてしまったことは仕方がないわい。それでは退散しようかのぅ」


 こうして人気のない場所に移動してから、迎えのコミューターによって回収されていくのであった。


 翌日のブルガリア国内では、首都ソフィアで起きた暴動事件と大規模な爆発の話題でもちきりとなる。


 テレビが伝えるニュースによると、マフィア組織同士の抗争と思しき件での死亡者238名。負傷者多数。


 地下の爆発によって倒壊した建物はビルが37件、民家や商店が96件。爆発による死者、行方不明者は多数に上り、現在も被害状況確認中との報道が流れる。同様に爆発の原因に関してはハッキリとしておらず、現在も各方面で調査中。


 さらに運の悪いことに、首都の相当な部分に電気を送っている変電所も大きな被害を被っており、復旧のめどはたっていない模様。しばらくはソフィアの街の3分の1の地区が停電となるらしい。


 ほかにも地下に張り巡らされたガスの配管も多くの箇所で損傷しており、こちらも安全のため供給停止の措置が取られているとのこと。水道管も同様となっている。


 その他道路の陥没が多数箇所あり、都市機能が復旧するには少なくとも3か月、長くなると半年以上の期間を要する見込みという発表がなされている。


 桜の事前の忠告もむなしく一国の首都が相当な長期間マヒする被害を出すとは、ジジイには呆れ果ててモノが言えない。


 もちろんのことだが、より正確な被害状況が伝わった段階で兄妹からコッテリと説教を食らうジジイであった。


 

とても無事とは言えませんが、なんとかミッションをクリアしたジジイ。残るは学院長だけとなりましたが、こちらはきっとクールに決めてくれるはず。そう信じたいです。この続きは出来上がり次第投稿いたします、どうぞお楽しみに!


それから皆様にいつものお願いです。


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