290 厨2病と共にある日常
遅くなりました。かなり長いです。
桜の一撃であっという間にラスボスを倒して早々にダンジョン探索を切り上げたデビル&エンジェルに対して、防衛大生パーティーは夕刻までギリギリまで粘って12階層の森林エリアまで到達してから転移魔法陣に乗って管理事務所に戻ってくる。
「いや~、ずいぶん頑張ったな~」
「肩慣らしのつもりだったけど、回復役の鴨川さんが一緒という安心感でついついキリのいいところまで頑張っちゃったよ」
班員が今日の探索を振り返っている。前回同様に明日香ちゃんの手助けがあったとはいえ、1日で5階層を踏破するというのは彼らの経験上初めての強行スケジュール。
その立役者の明日香ちゃんはといえば…
「歩美ちゃん、お化けの階層では頼りっ放しでとってもお世話になりましたよ~」
「二宮先輩はあれだけ強いのに、アンデッドが苦手だったんですね」
二人の話によれば、11階層では役立たずの明日香ちゃんに代わって歩美の無双状態が続いたらしい。聖女の能力を如何なく発揮してくれたおかげでゾンビが溢れ出てくる階層を何の苦もなく通過するという驚くべき事態に、さしもの防衛大生も歩美の神聖魔法に恐れ入った感を禁じ得ないという表情を見せている。
ここでパーティーリーダーの光弘が…
「鴨川さん、もしよかったら明日も自分たちとご一緒しませんか? もちろん近藤がしっかりとガード役を務めますから」
「えっ、いいんですか。ぜひともよろしくお願いします。近藤先輩、明日もご一緒できて嬉しいです」
「こちらこそよろしく頼む。明日はまだ足を踏み込んでいない13階層だから一緒に行動してもらえれば心強い」
「はい、頑張ります」
歩美が小さく両手のコブシを握っている。勇人に認められたのが、今の彼女にとっては何よりものご褒美のよう。
「それでは明日は8時に待ち合わせだから、今日はしっかりと休養を取って備えてください」
「岡山さん、わかりました。遅刻しないように今日は早めに寝ます」
「皆さん、今日1日大変お世話になりました。明日もよろしくお願いします」
光弘のシメの挨拶に明日香ちゃんと歩美が軽く頭を下げながら応えている。その明日香ちゃんの表情は久しぶりの光弘との再会でピカピカに光っていただけに、今日はこれでお仕舞というのはちょっともったいなさげ。
とはいえ「明日ももう1日一緒に行動できる」とすぐに頭を切り替えている。それにこれだけ頑張ったんだから夕食後のデザートは奮発しようという秘かな企みも心の中では進行中。ほのかな恋心とデザートに対する食欲の両天秤状態というのは、いかにも明日香ちゃんらしい所業といえる。
「「それでは失礼しま~す」」
「また明日~」
ちょうど外に出てきた渚とも合流して、三人は肩を並べて魔法学院へ。
「歩美ちゃん、一緒に行動してみて近藤先輩の印象はどうだった?」
「えっ、ええぇぇぇ! そ、そんな急に印象を聞かれましても…」
歩美に対して勇人の話題を振ったのは渚。当然ながら彼女も朝の管理事務所でのやり取りを目撃しており、その瞳は「恋バナを絶対に訊き出してやる」という固い意志を映し出している。対して訊かれた側の歩美はといえば明らかな挙動不審。今の彼女の胸に去来する感情は第三者の渚から見ても一目瞭然。
ちなみに明日香ちゃんは光弘との遣り取りに気を取られて、歩美にそこまで強い想いがあったとは気付いていなかった模様。相変わらず周囲にまったく影響されないマイペースぶりを如何なく発揮している。
「ムムム… 歩美ちゃんはずっと近藤先輩とベッタリでしたが、もしかしてああいうタイプが好きだったんですか?」
渚の発言で、ようやく歩美の秘めた想いに気が付く明日香ちゃん。いつにも増して周りが見えていないのがよくわかるセリフを吐き出している。
「二宮先輩、恥ずかしいから大きな声で言わないでください」
「そうかそうか、歩美ちゃんは近藤先輩狙いなのか。ということは美鈴さんは歩美ちゃんの気持ちに気付いて今日の同行を勧めたってわけだね」
今朝の美鈴の発言の意図に気付く渚。ちなみに彼女自身は聡史一本と心に決めているだけに、B班のメンバーたちに特別な感情は抱いていない。というか、渚の中で聡史の存在が大きすぎて他の男性を比較の対象にすらしようとはしていない。
「歩美ちゃん、明日も一緒ですから少しでも近藤先輩との距離を縮めるんですよ~」
自分のことはさて置き、歩美をけし掛けようとする明日香ちゃん。
「まずは今夜のうちにメールだな」
さらに渚が追い打ちをかけている。
「ええぇぇ! 出会ったその日のうちにメールですか? なんだか先輩が迷惑に思わないか不安です」
「いいのいいの。あんまり重たい感じじゃなくって、今日のお礼とか差し障りのない話題で送ってみなよ」
渚は美晴ほどではないがボーイッシュでかなりサバサバしたタイプ。後輩の恋心に対して面白半分、真剣さ半分で、しきりに歩美にメール送信を勧めている。取っ掛かりが出来たら前進あるのみ… これが渚の持論らしい。
この遣り取りを聞いていた明日香ちゃんは…
(フムフム、そういう手がありましたか。私も寝る前にコッソリ岡山さんにメールを送りましょう)
心の中でチャッカリ便乗を決め込んでいる。〔彼氏がいない歴=年齢〕という恋愛のノウハウやテクニックをまるっきり持ち合せていない明日香ちゃん。ちょっとでも有益そうな情報があればすぐにノッかっていくのは当然。夜になったら絶対に忘れずにメールを送ろうと固い決心したよう。
その夜、風呂をを済ませてパジャマに着替え、すっかり寝る態勢の明日香ちゃん。いつも早い時間からベッドでゴロゴロする姿が当たり前なので、同室の美鈴とカレンも何も言わずに寝室に消えていく明日香ちゃんを見送っている。
当の明日香ちゃんはといえば、さっそくスマホを取り出してメールの文章を考え出している。
(さてさて、渚さんは『差し障りのない内容で』と言っていましたねぇ~)
ということで、なんとか捻り出したメールの内容は…
〔岡山さん、今日はお疲れさまでした。1日かなりの強行軍でしたが、明日は大丈夫そうですか?〕
送信ボタンを押した明日香ちゃん。しばらくするとメールの着信を知らせる音が。
〔二宮さん、お疲れ様です。行程はハードでしたがその分レベルも上昇したし、とっても内容のある実戦でした。明日もこの調子でよろしくお願いします〕
光弘からも本日のお礼を込めた返信が到着する。ここでツカミはオッケーと判断した明日香ちゃんは、追撃のメールを。
〔ダンジョンから出た後、晩ご飯の時にデザートでイチゴたっぷりのパフェをいただきました。もうホッペタが蕩けそうになるくらい美味しかったです〕
はい、送信と…
〔イチゴパフェですか。美味しそうですね。僕たちは夕食を済ませたら厚木のビジネスホテルに宿泊です。日頃は二段ベッドの四人部屋なので、久しぶりの個室はとてもリラックスできます〕
前回のダンジョン実習は防衛大学のカリキュラムの一部だったので伊勢原駐屯地内に寝泊まりしていた。だが今回はあくまでも休日の個人的なダンジョンアタックとなっており、光弘たちは宿泊先としてホテルを予約していたらしい。
なるほど… と考えた明日香ちゃんは、再び文字を打ち始める。
〔そうなんですか。それでは今夜はグッスリ眠れそうですね〕
防衛大生に比べて自分は恵まれているな~… と考えつつも、特待生寮のベッドに寝転がっている明日香ちゃんはメールを送信する。
〔はい、グッスリ眠れそうです。そうでした。デザートで思い出しましたが、お盆の時期は数日の休みが取れますので、どこかに美味しいものを食べに出掛けませんか?〕
光弘の返信を見て瞳の中にキラッキラのダイアモンドをいくつも煌めかせる明日香ちゃん。果たして光弘と出掛けるのが嬉しいのか、はたまた美味しいものが楽しみなのかはこの時点ではまだ不明。
〔もちろん大喜びで出掛けますよ~。日程が決まったら教えてください〕
ついつい頬が緩んでニヘラ~としてしまう。まあ、その気持ちはわからないではない。こんな遣り取りをしているのがとっても楽しい時期だというのは、誰にでも経験はあるだろう。
〔わかりました。休暇の日程が決まったら、すぐに連絡します〕
普通の人からしてみれば「こんなのデートの約束じゃん」と言われるかもしれないが、なにしろ〔年齢=彼氏がいない歴〕の明日香ちゃんには、まだそこまでの考えが及ばない。というか、自分がデートをするなんていう自覚そのものを持ち合せてはいないよう。
〔今からとっても楽しみですよ~。それでは明日もよろしくお願いします。おやすみなさい〕
〔こちらも楽しみです。それではおやすみなさい〕
明日香ちゃんの胸中には、本人はよくわかっていないが、なんだかとっても甘酸っぱい感情が広がっている。一抹の気恥ずかしさも手伝ってややドキドキしながらも、こうして明日香ちゃんの一夜は過ぎていくのであった。
◇◇◇◇◇
翌日…
「おはようございます。今日もよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします。今日は13階層からスタートするから、二宮さんには色々とご指導をいただきたいです」
と。こんな具合に防衛大生と明日香ちゃんたちは挨拶を交わしてダンジョンに入っていく。
その同じ頃、魔法学院の食堂では…
「あっ、学君。いい所にいたわ。探してたのよ」
「西川先輩、カレン先輩、おはようございます。僕に何か御用ですか?」
「学君に用事があるわけではないの。今日1日美咲ちゃんを貸してもらえないかしら?」
「長谷川さんですか? 僕たちは構いませんけど、魔法の練習でもするんですか?」
「もっと大事なことよ。それじゃあ今日は美咲ちゃん抜きで頑張ってね」
「はい、わかりました」
こうして1年生パーティー〔ブービートラップ〕のリーダーから許可を得たらこっちのもの… という表情で美鈴たちは美咲の姿を探す。実は美鈴とカレン、昨日聡史が口にした「お姉さんたちに任せろ」という発言で変なスイッチが入っているよう。
元々は聡史も一緒に伊豆の旅行の準備に出掛けるつもりだったのだが、大魔王と天使の協議の結果美咲を大変身させて聡史を驚かそうというサプライズが決行される運びとなって今日この日を迎えている。
頭の中がすっかりサプライズ一色の美鈴とカレンは、食堂の隅っこでボッチで朝食を摂っている美咲を発見。
「美咲ちゃん、おはよう」
「こんな隅っこでご飯を食べるぐらいだったら、私たちと一緒に食べればいいのに」
「な、な、な、何事」
朝一番で2年生の大御所女子二人に囲まれた美咲は、明らかに挙動不審に陥っている。それもそのはずで、これまで美咲がこの二人と関わる際は必ず傍らに聡史がいた。だが今朝に限っては肝心要の聡史の姿はなくて、大魔王様と女神様に美咲ひとりで応対せねばならない。これは中々美咲にとってはハードルの高い案件といえよう。
「お、お、お、おはようございます」
食べ掛けの目玉焼きの皿をトレーに起きながら、美咲は辛うじて挨拶のセリフを絞り出している。その声はわずかに震えているような気配。
「美咲ちゃん、今日は私たち二人と一緒に行動してもらうから」
「学君からちゃんと許可をもらったから、パーティーとは別行動でお願いしますね」
美鈴とカレンの有無を言わせない頭ごなしの要請に、美咲の立場としては断るなど土台不可能。それどころか返事も出来ないようで、目をパチクリしている。とはいえ左目は眼帯に覆われているので、右目だけが挙動不審げに宙を漂うだけ。
「今日はダンジョンには入らないから、一旦部屋に戻って普段着に着替えてきて。30分後に女子寮の入り口で待っているわ」
朝食時の美咲の格好は、このままダンジョンへ向かう仕様の演習服。ついでに厨2病を誇示するがごとくに左目を覆う眼帯と左手に巻かれるいかにも厨2病患者御用達の包帯。さらに昨日聡史から手渡された魔導士のローブとトンガリ帽子が後生大事に隣の椅子に置かれた状態が見て取れる。
どうやら昨日の寝坊を反省して深夜アニメは午後0時で切り上げてダンジョンに向かう準備をしっかりと整えてから食堂に来ていたよう。
「ど、ど、ど、どこに行くんですか?」
「それはお楽しみよ。とにかく今日は1日美咲ちゃんのために使うから」
「私たちが付きっ切りで色々とアドバイスしますからね」
事ここに及んでは、美咲としても目の前に立っている大御所二人に完全にロックオンされるという非常事態に気が付いている。自分の身に降りかかった災いから何とか逃れようと聡史の姿を右目で探しているが、現在食堂の一番手前と奥側で引き離されており、とても声が届く距離ではない。
「きょ、きょ、今日はダンジョンに入るのでちょっと都合が悪くて…」
「だから学君には許可をもらっているから大丈夫よ」
「な、な、なんだか体調が…」
「私が回復してあげましょうか?」
必死に断りの文句を並べようとするも、大御所たちによってあっさりと却下されてお仕舞。コミュ障の美咲にとってこの二人の誘いを断るのは、もはや世界征服並みの難易度に相当するよう。すでにこの時点で諦めたような… いや諦めを通り越して涙目になる美咲。
「い、い、行きます」
「それじゃあ、30分後に普段着で寮の入り口だからね」
「は、は、はい」
こうして美咲は、美鈴とカレンに押し切られるように返事をする。というよりも、頭上から圧し掛かってくるような強烈な圧力に抗いきれなかった模様。食事を終えるてトレーを戻すと、大事そうにローブとトンガリ帽子を抱えて部屋に戻っていく。
その姿を見送る美鈴とカレンは、何やら変なスイッチが入ったままの表情。美咲の姿が食堂から消えると、二人で顔を見合わせてシメシメという表情で頷くのであった。
◇◇◇◇◇
30分後、女子寮の入り口にやってきた美鈴とカレンの目には、制服を纏って立っている美咲の姿が映っている。もちろん左目の眼帯と左手の包帯は健在のまま。こんな厨2病全開の重症患者を引き連れて美鈴とカレンはどこに向かおうとしているのだろうか?
「やっぱり…」
「そんなことだろうと予想はしていましたが…」
普段着で待て… と指示を出したものの、厨2スタイル全開の上制服姿の美咲を見て、大御所二人は中々手強い敵だと覚悟を固めた様子。
「美咲ちゃん、お待たせしたわね。それじゃあ、バス停に向かいましょうか」
「は、はい」
三人で校門に向かって歩き出すタイミングで、カレンが美鈴の耳元でそっと囁くように…
「美鈴さん、これは相当な荒療治が必要ですよ」
「かなりの難敵だけど、私たちの力で何とかするしかないわ」
大魔王と女神が悪巧みをするがごとくの恐ろしげな会話。「荒療治」とは一体何を指しているのかと、少々疑問が浮かんでくるのももっともな話といえよう。
このまま三人連れ立って、大山ダンジョンのバス停に向かう。ちなみに美鈴とカレンはすでに7月第2週という蒸し暑さを感じる季節に合わせて、夏らしいコーディネートの装いに身を包んでいる。もちろんその格好自体、美咲からすると年長の女性らしい眩しさに包まているのは言うまでもない。
「それじゃあ、バスに乗りましょうか」
「ど、ど、ど、どこに行くんでしょうか?」
「ちょっと賑やかな街に向かいますよ」
美鈴とカレンに促されるように美咲はバスに乗せられていく。駅に着いたと思ったら今度は電車に乗り換えて、この近辺ではデパートやファッションビルが並んでいる一番華やかな街へ…
「まだ時間的に早いから、まずはコーヒーでも飲みながら作戦会議よ」
そう言いつつ、スターバッ〇ス的な店に入ってアイスラテを三人分注文する。席に着くなり容器にストローを差し込みつつ、収納から取り出した数冊のファッション雑誌をドン。
「美咲ちゃんは普段どんな服装をしているのかしら?」
「せ、せ、せ、制服と演習服」
「そうじゃなくって、例えば寮の部屋にいる時とかの話よ」
「ちゅ、ちゅ、中学校の時のジャージ」
どうやら美咲の服飾に関する経験値は限りなくゼロの模様。年頃の女子にあるまじきこの有様は、やはり厨二病を発症したゆえの弊害なのであろうか?
「それじゃあ、ここにある雑誌の中から美咲ちゃんの好みの服はないか選んでもらえるかしら?」
美鈴とカレンはファッションに関して年相応の関心は持ち合せている。自分に似合う着こなしなどを考えて服を購入しているが、わざわざ買いに行く時間が取れないおかげでネット通販が中心の生活。ことにカレンに至っては、その大きなお胸に合わせてサイズを選ぶとウエストがガバガバだったりするものだから、海外通販を好んで利用している。
美鈴がテーブルに取り出した雑誌は、そのほとんどが服の通販カタログと言って差し支えない。
「こ、こ、こんなたくさんあっても全然わかりません」
「最初から白旗を上げないでよ。少なくとも美咲ちゃんの好みとかをハッキリさせないと、お店も選べないでしょう」
なんとなく美鈴とカレンの思惑が透けて窺えてくる。どうやら地味で暗い美咲の外見を今日一日かけて魔改造しようという趣旨らしい。
そのためにわざわざバスと電車を乗り継いでこの街まで来ていたよう。聡史の発言が引き金となって二人のお姉さんスイッチが発動した結果が本日の行動に繋がっているのは明白。
こうしてしばらく雑誌とにらめっこしながら、主に美鈴とカレンが美咲そっちのけで「ああでもない、こうでもない」と意見を戦わせる時間が経過する。ふと時計を見た美鈴が…
「そろそろ予約の時間だわ」
「もう10分前ですね。急ぎましょう」
スイッチオン状態のお姉さんは二人掛かりで美咲をコーヒーショップから連れ出すと、その向かう先は美容院。昨日の夜にネットで予約を入れた旨を伝えると、店員が…
「ご予約は一名様と伺っておりますが」
「はい、この子のカットをお願いします。女の子らしい素敵なヘアースタイルにしてください」
「かしこまりました。こちらの席にどうぞ」
初めてやってきた美容院で何も知らないままに席に案内された美咲は緊張でカチコチに固まっている。そんな美咲の意向などまるッと無視した美鈴とカレンは、担当してくれる女性美容師と共に作戦会議開始。
「長さはどのくらいが良さそうですか?」
「そうですね… 今のままですとかなり重たい感じが強いですから、肩よりもちょっと下で切り揃えるのが良さそうですね」
「そうね、夏だしちょっと短いくらいでいいかも」
「それから毛先がだいぶ傷んでいるようですから、全体を少しづつカットしつつ上手く肩までの長さで切りましょう」
「美咲ちゃん、美容師さんにお任せでいいかしら?」
「は、は、はい」
ほぼ恫喝に近い美鈴の同意を求める声に身を固くして頷く美咲。もうこうなったら身を任せるしかないと、彼女自身諦めた表情。
「それではカットしますね」
ということで、美咲のほぼ伸ばしっぱなしの髪にハサミが入っていく。さすがは予約が必要な美容院だけあって、伸び切った髪をカットする腕はお見事そのもの。あっという間に美咲の姿は、夏を前にした明るい活動的なヘアースタイルに変身していく。その様子を後ろの椅子に腰掛けて見守っている美鈴とカレンは…
「中々いいんじゃないのかしら」
「美咲ちゃんは元々の素材がいいから、こうしてちゃんと手入れすれば見栄えがしてきますね」
鏡越しに変身していく美咲の様子を眺めながら満足そうに頷いている。当の美咲といえば、どうやら鏡を正面から直視するのは苦手らしく、じっと目を閉じたままされるに身を任せた状態。そのまましばらく時間が過ぎてから…
「こんな感じでいかがでしょうか?」
美容師の声に美鈴とカレンは美咲の左右に身を寄せる。
「そうね、中々いい感じじゃないかしら」
「前髪をあと1センチ短くして眉を半分見えるようにしましょう。それから眉の形を可愛く整えてください」
どうやらカレンのほうがより細かい注文を入れている。すべては美咲のためというお姉さんスイッチのなせる業。ちなみに美咲はいまだ目を閉じたままで、変身した自分の姿を見ようともしない。というか勇気がなくて見られないよう。
「これでいかがでしょうか?」
「さすがはカレンね。可愛く映るツボを心得ているわ」
「前髪を短くして正解でしたねぇ~。だいぶ明るい雰囲気になりました」
席に座った段階で美容師さんの命令でトレードマークの眼帯を外させられた美咲であったが、こうして両目がハッキリと映るようになると中々の美少女具合が引き立ってくる。
「美咲ちゃん、もったいないからもう眼帯は使用禁止よ」
「うう、そ、それは…」
まだ目を開けないままに必死の抵抗を試みる美咲。だがそろそろ覚悟を決めなければならない刻限が近づいている。
「さあ、自分の姿をその目でしっかりと見てごらんなさい」
「怖がらずに自分で確かめるんですよ」
お姉さん二人に促されて恐る恐る目を開く美咲。
「ま、周りが明るすぎて何も見えない」
「どれだけ固く眼を閉じていたのよ~」
「明るさに慣れるまでゆっくり待っていましょう」
中々に手を焼かせてくれる美咲に、美鈴とカレンは思わず苦笑している。だが1時間弱の短い時間で変身を遂げた美咲は、まるで別人のように鏡に映っているのも紛れもない事実。
そしてようやく美咲の目が明るさに慣れて、おぼろげに視力を取り戻してくる。
「だ、だ、だ、誰ですか~?」
「美咲ちゃん、ちょっと落ち着きなさいって。鏡に映っているのはあなた自身よ」
「う、う、う、嘘ですよ~。わ、わ、私は騙されませんから」
横に何度も首を振って鏡に映る自分を必死で否定しようとする美咲。だが彼女が首を振れば、鏡の向こうの影も同じように首を振っている。
「騙すも何も、そこに映っているのは美咲ちゃん本人に間違いないわ」
「そうですよ。私たちは一切魔法を使っていませんからね」
強いて挙げるとすれば、美容師さんの魔法のような技術がもたらした成果であろう。見事に明るく変身した美咲の姿に、担当してくれた女性も満足げに頷いている。
ここまでお姉さんたちから指摘されると、さすがに美咲も自分の変身ぶりを疑えなくなっている。
「美咲ちゃん、見事な変身ぶりよね」
「女の子はある日突然幼虫から蝶に変われるんですよ」
「うう…」
何も言わないままに鏡を見つめる美咲の心中は今どのような感情が渦巻いているのか… さすがにそこまで美鈴とカレンは推し量る術を持ってはいない。だが美咲の瞳から落ちた一滴の涙が、彼女の気持ちを雄弁に物語っている。
「美咲ちゃん、私たちからのプレゼントは気に入ってもらえたかしら?」
「まだまだ第二弾、第三弾もありますから、楽しみにしてくださいね」
美鈴とカレンの言葉を耳にした美咲の瞳からは、とめどもなく溢れてくる涙が頬を伝い流れ落ちる。
「あ、あ、あ、ありがとうございます」
ようやくそれだけ言葉にすると、しばらくの間美咲は泣きじゃくりながら両手で顔を覆って嗚咽を漏らす。
たっぷり10分以上泣き明かして、ようやく落ち着いてからトイレで顔を洗って戻ってくる美咲。
「こ、こ、こんな自分がいたなんて気づきもしませんでした。西川先輩、カレン先輩、本当にありがとうございました」
「お礼は今日1日が終わってからでいいから」
「そうですよ。この程度はまだ序の口ですからね」
先程までの自分に対するイメージがちょっとだけ変化した様子の美咲。どうやら今までと比べたら自分を肯定的に捉えている風が窺える。
「さあ、それじゃあ次に行くわよ」
「ここは私が払っておきますね」
カレンが素早く会計に向かうと、美咲に何も言わせずにお金を支払っている。
「あ、あ、あの、先輩お金が…」
「いいから気にしないで私たちに甘えなさい。美咲ちゃんは魔法に関しては私の弟子なんですから、師匠の言うことにはきちんと従ってもらいますから」
「は、はい」
こうして美咲変身大作戦はこの先まだまだ続いていく。美咲が次に連れてこられたのは若い女性向けのテナントがたくさん入った110番に似ている名称のビル。すべての階が女性向けファッションで埋め尽くされており、相当勇気を出さないと男性には近寄りがたい建物。
「高校1年生だったら、この辺のお店がちょうどいいんじゃないかしら」
「そうですねぇ~。私にはちょっと合わない雰囲気ですけど、美咲ちゃんにはいい感じです」
カレンの発言には「サイズ的に」という言葉が抜けている。前述の通り普通の高校生向けファッションでは手頃なサイズがないのがカレンとしても悩みどころといえよう。
だがそれは桜たち持たざる者からすれば「贅沢な悩みだ」と厳重な抗議の刃を突き付けられかねない。
ということでファッションにはまったく疎い美咲の意見は後回しにして、美鈴とカレンがせっせと似合いそうな服を見繕っては美咲が試着を繰り返す流れに。そして何着目かのワンピースを試着室に持ってきた美鈴が、彼女のとある部分に気付く。
「美咲ちゃん、その左手の包帯も外していいんじゃないかしら?」
「ダ、ダメ」
スイッチの入ったお姉さんたちに次第に慣れてだいぶ表情が和らいでいた美咲だが、この美鈴のひと言で打って変わって固い顔になり、左手を押さえたままで背中を向ける。
(どうやら何か理由があるようね。こういう時はカレンに任せた方が良さそう)
瞬時に心の中で判断した美鈴だが、当のカレンは伊豆に行く際に穿いていけそうなショートパンツを選んでいる最中。だがそんな都合はお構いなしに、美鈴がカレンを呼びつける。
「カレン、ちょっと来てもらえるかしら。美咲ちゃんが包帯の話に触れたら急に頑なになってしまったのよ」
「はい、急にどうしたんですか?」
頭の上に???を浮かべながらやってくるカレン。そんな彼女の目には、左手を押さえて背中を向ける美咲の姿が… 何やら事情がありそうというのは、カレンも瞬時に悟った様子。
「美咲ちゃん、無理は言いませんがその包帯の下がどうなっているか私にコッソリ見せてもらえますか?」
「ダ、ダメ」
「隠していたらいつまで経っても心を開けませんよ。私を信じてくれるなら、どうか見せてもらえませんか」
「い、嫌です」
しばらくこのような押し問答が続く。だがそこは女神様だけあって、徐々に美咲の頑なな心を解きほぐすのに成功。ゆっくりと美咲が左手に巻いてある包帯を巻き取ると、そこには幾筋も刻まれた刃物で切った傷跡が…
「リストカットしたんですか?」
「は、はい」
「傷跡を消せますが、どうしますか?」
「で、で、出来ることなら消したいです」
「それでは手を出してください。手首の傷と共に心の傷が消えていくように祈りながら目を閉じなさい」
「は、はい」
美咲が目を閉じると、カレンは彼女の手首を軽く持ち上げてから、もう一方の手で傷跡を優しくなぞっていく。カレンの手から発する光を受けたそばから、くっきりと跡になって刻まれていた傷は見る見る薄くなって、仕舞いには無事な皮膚と見分けが付かないように。まるで最初から何もなかったかのように、あっという間に傷跡自体が消えている。
「さあ、目を開けていいですよ」
「き、き、き、傷が無くなっている」
「回復魔法にはこんな力もありますから」
驚いた表情の美咲にカレンが優しげな言葉を紡ぐ。本当は女神の力であって回復魔法とは一線を画す術だが、いちいち詳しい内容を話してもこの場では何ももたらさない。
「買い物が終わったら、美咲ちゃんの心にあるいろいろな悩みを訊かせてもらえますか。誰かに打ち明けると、きっと気持ちが楽になりますよ」
「は、はい。ウエ~ン…」
まだ信じられない表情で自分の手首を見つめたまま茫然としている美咲の瞳から溢れ出す涙。もちろんこれでもう左手に包帯を巻く必要もなくなった嬉しさゆえに違いない。
試着室で再び美咲が泣き出すというトラブルがあったものの、ワンピース2着とジーンズやショートパンツ、ブラウス3枚、Tシャツ数枚、半袖パーカー等々、大量の衣服を買い込んでファッションビルを出る三人。こちらのお会計は美鈴が担当している。
続いて向かうのはドラッグストア。せっかくきれいに切り揃えた髪を維持するために必要なシャンプーやトリートメント、さらには基礎化粧品や解かすだけで髪にツヤが出てくるブラシ、日焼け止め等々を買い込んでいく。こちらのお会計はカレンが担当しており、買い込んだ品はそのまま収納に放り込んで相変わらず手には何も持っていない。
「次はどこに行こうかしら?」
「だいぶ時間も経ちましたから、ちょっと遅めのお昼にしましょうか」
すでに時間は午後3時を回っている。ついつい買い物に気を取られて時が経つのを忘れていたことに気付く一行。落ち着いた店がいいだろうということで、ちょっと値の張りそうなレストランへ向かう。
個室を用意してもらってランチを食べ終わり、お茶を飲みながらカレンが例の件を切り出す。
「美咲ちゃん、手首を切った理由を教えてもらえますか?」
「は、はい」
今日1日これだけ世話になって、さらに傷まで消してもらったとなれば、さすがに美咲も素直に打ち明けざるを得ないと覚悟を決めている。ボソボソと囁くように自らの過去を喋り出す。
「ド、ドモリ癖が原因で小学校の6年生の時にイジメられて… そこから家に引き籠もってしまって… ちゅ、ちゅ、中学校は保健室登校しかできなくて…」
「まあ、大変だったのね」
美鈴もさすがに美咲の告白に驚いた表情。彼女自身はイジメられた経験こそないが、中学時代に告白してきた男子生徒の申し出を断った際に、その男子を好きだった女子生徒からいわれなき誹謗中傷をされた出来事がある。
といっても美鈴自身精神的に強かったので、はっきりとしたイジメになる前に自分で対処して未然に防いだという彼女からしたら実に他愛のない出来事。
だが、世間には美鈴のようにイジメを跳ね返せる人間のほうが少数。美咲もその大多数の犠牲者の一人ということになる。
ちなみに桜はイジメの噂を耳にした途端に首謀者をドツキ回して、多くの標的になった生徒を助けていた。もちろんこれは例外中の例外の話。
「そ、それで… 教室に行けない自分がイヤで… 何度も死のうと思って手首をカッターで…」
「よく話してくれましたね。もう美咲ちゃんは大丈夫ですよ」
「わ、私が大丈夫?」
「そう、少なくともここにいる私たちは美咲ちゃんの味方よ」
「わ、私の味方?」
「私たちだけではありませんよ。聡史さんも絶対に美咲ちゃんの味方をしてくれます。だから今日学院に戻ったら聡史さんにもこの話をしてみましょう。きっと理解してくれます」
「そうね… 聡史君だったら間違いなく美咲ちゃんに手を差し伸べてくれるわね」
「は、はい。勇気を出して打ち明けてみます」
美咲の表情がこれまでにないくらいに安心した心持ちに包まれている。今まで周囲の無関心や悪意に満ちた目に晒された結果、自らを守ろうとする防衛本能ゆえに頑なに閉ざしていた心が春の日差しに温められて雪解けを迎えたかのよう。
美咲自身も聡史なら何事も受け入れてくれそうと薄々勘付いてはいたが、美鈴とカレンに改めて指摘されてみると、なるほどその包容力の大きさが身に染みてくる。
みたび美咲の目に涙が滲んでくる。これまで数えきれない程悲しみに打ちひしがれて涙を流してきた美咲だったが、今日ほど嬉しくて泣いた日はなかったかもしれない。
人生におけるターニングポイントと評しても差し支えないくらいに、彼女のこれまでの人生そのものが周囲から肯定された瞬間だった。
◇◇◇◇◇
学院に戻って美鈴たちと軽い夕食を口にした美咲は、二人のお姉さんに伴われて特待生寮へと向かう。美鈴がインターホンを押すと、応対したのは桜。
「美鈴ちゃんでしたか。どうぞ中に入ってください」
ドアロックが開く音がすると、桜が顔を覗かせてくる。
「お邪魔するわね」
「おや、お客様ですか?… ムムム、その顔には見覚えありますけど… はは~ん、なるほど… そういう話ですか。どうぞごゆっくり」
桜は変身した美咲をみて何やら意味深な表情で、その口振りからすると色々と事情を察しているよう。
桜はそのまま我関せずの態度で、キッチンのテーブルに置いてある飲みかけのアイスココアを口にしつつ漫画本を手に取っている。自分では余計な口を出さずに、美鈴とカレンにお任せらしい。
三人でリビングに入り込むと、聡史はソファーで何やらレポートを読み返している最中の様子。
「あれ、美鈴たちか。一緒にいるのはお客さんか? 珍しいな、ゆっくりしていけよ」
「聡史君、もっとちゃんと見なさいよ。お客さんじゃないわよ」
しげしげと見慣れぬ人物の顔を見つめる聡史。だがそこに立っているのが誰だかまるっきりわからない表情。
「すまない。どうしても誰だか思い出せない」
「本当にわからないのかしら? いつもながら聡史君の鈍感さは天然記念物レベルよねぇ~」
美鈴に悪態をつかれて、聡史はややヘコんだ表情。仕方がないのでカレンが美咲の背中を押して本人の口から正体を暴露させようと取り計らう。背中を押された美咲は…
「クックック、我が同胞ともあろう者がこの悠久なる大魔導士が分厚い衣を脱ぎ捨てた姿も理解せぬとは…」
「はぁ~… その声と手遅れなくらいの厨2具合は、まさか美咲なのか? ずいぶん外見が変わったな」
聡史の口からなんとも間抜けなトーン、かつ傷つきやすい乙女のハートに一切考慮していないフレーズが飛び出す。これには美鈴も相当おかんむり。
「ちょっと聡史君、他にもっと言わなければいけないセリフがあるでしょう」
「だってなぁ~… あの美咲がだな、急に普通に可愛い女子になったら逆に戸惑うだろう。俺にとってはあの古典的な厨2具合が絶妙にツボだったんだけど」
「さ、聡史君… それはどういうことなのかしら?」
「外見がどうあろうと、俺には美咲の厨2キャラがいいんだ。せめて眼帯だけでも装着してくれ」
「わ、わかった」
美咲は素早くポケットにしまっておいた眼帯を取り出して装着。聡史はようやく落ち着いて美咲を眺める。
「うん、中々いいんじゃないか。外見はずいぶん可愛く変身したけど、美咲は在りのままでいればいいんだ」
「聡史君は美咲ちゃんの頭を引っ叩いて厨2発言を止めさせていたじゃないの。あれは何だったのよ?」
「適当なツッコミを入れておかないと、どこまでも増長するからな。ある程度の所でストップをかける必要がある」
まるで厨2病評論家のような聡史の口振り。なぜここまで厨2談議が白熱するのか誰にもわからないが、話自体が勝手な方向に進んで中々カオスな状況。
それよりも驚くべきは、どうやら聡史は厨2キャラが好みという意外な真実。これには美鈴とカレンは唖然としている模様で、今日1日の苦労がすべて無駄になった気がしてならない。逆に美咲は厨2キャラを肯定されてなぜか嬉しさ倍増。
「美鈴とカレンで美咲をここまで変身させたのか?」
「そうよ。どうやら聡史君のお好みではなかったようだけど」
「いや、そうじゃないんだ。外見がどうあろうと、美咲の厨2キャラが俺にとっては心のオアシスなんだ」
「どういう感性なのよ。聡史君が段々わからなくなってきたわ」
「全部中学時代の友達が悪い。俺自身発症はしなかったが、当時は厨2の世界にどっぷり漬かっていたからな。そのせいでなんだか厨2発言が生活に一部のような気がしてならない」
「クックック、さすがは悠久なる大魔導士がその大いなる志を認めた者よ。我が龍殺しの紋章を受け継ぐのはそなたしかあるまい」
すべての遠慮を取っ払って厨2全開になっている美咲が胸を張っている。このままでは埒が明かないと判断した美鈴。思い出したように例の件を切り出す。
「聡史君、今日一日美咲ちゃんと過ごしていたんだけど、思いがけない話を訊いたのよ」
「思いがけない話? どんな内容なんだ」
「美咲ちゃん、今ここでちゃんと話せる?」
「じ、じ、実は小学校の6年生の時に…」
美咲が切り出した過去の話を黙って最後まで聞いている聡史。すべてを訊き終えると…
「そうだったのか。よく頑張ったな」
「う、うん。ヒック、ヒック… ウエ~ン、グスグス」
聡史からのほんの短い応えではあったが、その表情に込められた優しい想いに触れて美咲は本日四度目の大泣き。その間何度も聡史に頭をポンポンされている。
「落ち着いたか? これまでの美咲が進んできた道は、何ひとつ間違ってはいない。ここから先も、美咲は自分が進みたい道を進め。俺は黙って見守ってやる」
「う、うん。ありがとう」
生き方を肯定されるのは嬉しいもの。ことに美咲はこれまでクラスの生徒たちからイジメを受けたり白い目を向けられたりしてきた過去がある。それを丸ごと聡史が受け入れてくれて、なおかつ「見守ってやる」と言われては、美咲はようやく探し求めていた居場所が見つかった心地良さに全身で思いっきり浸っている。
この遣り取りを漫画を読みながら横目で見ていた桜は…
「美鈴ちゃんたちは、お兄様を巡る新たなライバルを世に解き放ってしまいましたねぇ~。私の見立てですと美咲ちゃんは外見よりもずっと手強いですから、お二人とも手を焼きそうですわ」
誰にも聞こえないようにボソッと呟く声が、キッチンの狭い範囲に広がったのが印象的であった。
年度末は色々と立て込んでしまって投稿が遅くなったことをお詫びいたします。あの厨2病患者の美咲が実は聡史のお気に入りだったと判明したところで、次回のお話はようやく夏休み編に突入いたします。まずはクラスイベントの旅行からスタートですが、果たして無事に終わるのか。おそらく予断を許さない展開が…… この続きは出来上がり次第投稿いたします。どうぞお楽しみに!
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