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10:勉強会の始まりが遅いと、お泊まりになることがある

最近、フォートナイトにハマってます!


書棚と勉強机、ベッドにクローゼットと箪笥ぐらいしか置かれていない部屋。 そこが俺の使っている部屋だ。家の外観は豪邸に見えなくもないが、扉を()ければ普通の家と変わらない。


世界中を回って仕事をしている為にあまり帰って来れない両親から月に生活費やらなんやら振り込んでもらっているので、金銭面に困るようなことはない。それもあり、生活費以外のお金は家具やら趣味やらに多少使用できるのだが、妹華の遊び代や服代等に費やしているので、俺が自由に使えるお金はバイト代のみだ。両親からも、たまには自分に使いなさい、と言われたりもしたが別段、欲しいものがないため、気持ちだけ受け取っている。それに、妹華は女の子だ。だから、男の俺と違って、服や化粧品などにお金がかかる。まぁ、一番の理由は、お金をねだってくる時だけ、頼み事を素直にやってくれる所だな。その日だけは、食器洗いや風呂掃除、洗濯物を入れたりするのが楽になる。もう、毎日お金をねだってきてもいいぐらいだ。



「ただいま〜」


「お邪魔するぞ!」


「・・・お邪魔します」


自宅の扉を開け、靴を脱ぐ為に床に置いたずっしりとかなりの重量があるレジ袋を両手に持ち直し、リビングへ向かう。冷蔵庫を開け、野菜やお肉、果物に飲み物等を仕分けしていき、レヴィに持ってもらっていたもう二つのレジ袋の中身も仕分ける。


「ふぅ。 こんなもんかな」


俺は息を吐いて、軽く伸びをする。と、懐に入れていた携帯が震えた。


「誰からだ?」


携帯を開き宛名を確認する。そこには『妹華』と表記されていた。どんな内容だろうか、とメールを開く。 その中身は、


『今日は友達の家で勉強するから、終わった頃に迎えに来て』


という内容だった。 俺はとりあえず、了解メッセージを送信しておく。用は済ませたので、レヴィとリィンと共に俺の部屋に入る。


「ふむ。人間の男の部屋はエロ本?とやらが散乱していると父上から聞いていたが、未来の伴侶の部屋はエロ本?とやらがないみたいだな」


「ほかの男はそうかもしれないけど、コイツは、エロ本より料理本とか勉強の本を集める方が好きな変な奴だから」


レヴィが零した言葉に、リィンがそう説明する。


「おぉ、なるほど。 だが、これで主が伴侶になる条件の1つを達成したな」


「伴侶になる条件?」


「うむ。 父上から、伴侶認定条件表という紙を貰っての。項目が30個ほどあるのだ。 ちょっと待っておれ」


レヴィはRPGゲームの魔王がイラストされたケースが取り付けられた携帯の画面を指でタップして軽く操作する。 暫くして、机に置かれたタブレットには誓約書的なのが映し出されていた。たしかにそこには30個の項目が記されていた。


「ふーん。親父に愛されてんだな、お前」


「私の親みたいね」


俺とリィンはそれぞれ感想を告げる。でもちょっと溺愛しすぎているフシがあるなレヴィの親父は。まぁ、魔王な訳だし、伴侶の条件が厳しいのは当たり前か。俺の両親なんて、『雫ちゃん以外は許さない』だからね。 意味わかんねえよ。なんでよりにもよって雫なのか。あいつ手間かかるから嫌なんだよね。それに今更、幼馴染を異性として見ろって言われても見えないもんは見えないしな。雫の方も昔と接し方変わらないし。


「親というのは子供に甘いのではないのか?父上がそう言っていたぞ?」


「あー、うん。甘い親もいれば甘くない親もいるんだよ。っんなことより、勉強だ!勉強!」


このままだと無駄話で今日は終わりそうな気がしたので、本来の目的に切り替える。


「おぉ、そうだった!! 勉強会?とやらを早く始めようじゃないか!!」


「なんでそんなテンション高いのか、理解できないんですけど」


余りにもハイテンションなレヴィに呆れるリィンが呟く。まぁ、勉強でこんなにテンション高くなるのは桜花ぐらいだからな。リィンにとっては勉強は地獄に等しい。


「はいはい、文句言ってないで、お前は棺桶から出て、筆記用具と教科書準備しろ」


「・・・棺桶から出たくないんだけど」


「別に俺が無理矢理開けてもいいんだぞ?」


「・・・それはヤダ」


リィンは少し躊躇った後、棺桶を開け始める。ギィィと音をあげて棺桶が横に開いていく。やがて棺桶の蓋が完全に外れて、中からリィンが姿を現した。


紅い瞳に腰まで流れる美しい金色の髪の後ろの一部を黒色のリボンで結んだハーフアップ。 身長は恐らく妹華と同じくらい。それに伴いスタイルも高校生にしてはロリに近い体型。服装は、白を基調とした狐耳パーカーと白の短パンに白黒のニーソを普段から愛用している。おまけに京治が喜びそうな絶対領域?的なのが存在していた。


「お前ってほんと、ちっせえよな」


「はァ? 何言ってんの。 前にも話したでしょ、私の身長について」


「いや、知ってるけど、やっぱさ。どうしても口にしちゃうんだよね、身長のこと」


机に置かれたペンをクルクル回す。


「ん? 二人共、何の話をしておるのだ?」


向かいの席でペンを手に俺の真似事をしていたレヴィがペン回しに飽きたのか、話しかけてきた。そうえば、レヴィらこの話は知らなかったな。


「あー、こいつが吸血鬼ってのは知ってるだろ?」


「うむ、知っておるぞ!しかし、父上から聞いた吸血鬼とは少し違うな」


「お前が聞いた吸血鬼の話ってのは?」


「人の血を得るために人を襲う恐ろしい化け物だと我は聞いた。他にも、日光を浴びると死ぬとか、ニンニクが嫌いとか、銀製の凶器に弱いとも聞いたぞ」


レヴィの答えはネット内にありふれた知識だ。たしかにあっているが、それは昔の話。


機械や時代は進化する。それは吸血鬼にも該当される。知能がある吸血鬼ならば、日光から身を守る方法も、ニンニクの克服も、銀製の凶器の対処法も思いつく。

人だって、生活をする為にいろんな技術を発達させた。 AIを作り上げた。 VRを作り上げた。 電車に車などの移動手段や食べ物を生み出した。


「その話は本当よ。ただ、私が生まれた頃にはその弱点を全て克服してたわ。といっても、克服と言うよりは抑制ね。今でも日光に10時間以上当たり続ければ貧血で倒れるし、ニンニクを食べすぎればお腹を下すし、銀製の凶器やらで体を傷つければ治るまで時間がかかる。 その代わり、寿命は人間と同じになった。まぁ、当然よね。良い話には必ず悪い話がついてくるのが当たり前なんだから」


リィンはそう説明する。 たしかに弱点を克服できるのは、吸血鬼にとっては大きい事だ。


「それはわかったが、その事と身長は関係があるのか?」


「ええ。 私達、吸血鬼の一族は、個人差によって背が伸びなくなるの。普通なら、最低170センチは超える筈なんだけど、ごく稀にいるのよね、私ぐらいの背の人も」


「吸血鬼というのは背が高いのだな。我は背が高すぎる男性はあまり好かん。勿論、未来の伴侶は別だぞ」


レヴィは眩しい笑顔を俺に向けた。なんというか、はた迷惑な話だ。寧ろ、俺のことは恋愛対象外でよかったんだけどな。俺は普通のちゃんとした人間の女の子と付き合いたいんだ。 勇者とか魔王とか鬼やら神やら天使やらのハーフとかでなく人間の女の子が俺の恋愛対象なんだ。


「ハイハイ。んなことより勉強するぞ。 お前らの順位を100番台に入れないと主に俺がぶち殺されんだから」


「別にあんたがぶちのめされるなら私は100番台入れなくてもいいんだけど、連帯責任で『華薇の拷問スペシャル』を食らうのは御免こうむるわね」


「ずっと気になっていたが『華薇の拷問スペシャル』ってなんだ? 我はこの世界に来るのは初めてのゆえ分からぬ」


「口で説明出来たら苦労しねえほどの恐ろしい拷問だよ。 多分、魔王の娘であるお前でも泣いて懇願するだろうな」


俺はかつて食らわされた『華薇の拷問スペシャル』を思い出して身震いする。それはリィンもだった。あれは本当にヤバい。 クラスメイトの大半が『一瞬だけ三途の川が見えた』と嘆くのが毎年恒例だ。中には失禁する生徒や、いけない心の扉を開けた生徒もいた。


「1度くらってみたいものだが、未来の伴侶がそこまで恐るのならば危険な技なのだろう。うむ、しっかりと勉強しなくてはな!」


レヴィは鞄から筆記用具と教科書、ノートを取り出し机に置いて、テンション高く声を上げた。


「はぁ。勉強めんどくさい」


リィンは筆記用具と教科書、ノートを机に置きながら、マイナスなテンションでため息をつく。


「とりあえずリィンの方は月曜日の科目を徹底的にやれ。今日中に覚えられない場合は明日から俺ん家に泊まり込みで猛勉強だからな。 んで、レヴィの方は苦手科目が分からないみたいだから、まずはどの程度勉強を理解しているか軽くテストだな」


俺は、リィンに月曜日の範囲の勉強をするよう軽く脅しておき、レヴィに問題集を解かせることにした。ちなみに俺は古典の勉強だ。


「うーむ。 全くわからん!」


「私も~」


数分後、レヴィとリィンが問題が分からないと嘆いていた。俺は一度、古典の勉強をやめ、二人に問題を教えることにする。


「レヴィ。 そこの問題はこの公式を使えば簡単だ。 それとリィンの方はもう1回問題文を読め。そうすればヒントを見つけれるはずだ」


2人にそう教えると、


「おお! この公式で解けるのか! 意外と数学も簡単だな!」


「あぁ、なるほど。ここでこうなってんのね」


答えが分かったらしくスラスラとシャーペンを走らせていく。 そしてその後もヒントを与えたりして全てを解き終える。で、採点したのだが、


「リィン、お前分かったとか言って2問しかあってねえぞ」


「・・・え? いやいや嘘でしょ?」


「・・・・」


「・・・まじ?」


俺の無言に冷や汗を浮かべて顔を青くするリィン。


「間違えた所は俺が解説と答え書いといたから見直ししろ」


そう言って、リィンに問題集を返す。


「・・・うぅ。できたと思ったのに」


悔しそうに呟き、リィンは見直しを始めた。俺はそれを確認してからレヴィに視線を向ける。


「レヴィは10問中7問正解だ。使う公式を教えただけでここまで出来るってことはお前、ただ単にやり方分からなかっただけだな?」


「そうえば、未来の伴侶から教わった公式を使ったらスラスラ解けたな。もしや、我、天才?」


「アホ。調子に乗るな」


ビシッと軽快な音を上げ、俺の手刀がレヴィの額をとらえる。レヴィは額を両手で押さえながら涙目でこちらを見る。


「な、何をする!? 未来のお嫁に向かって!いいのか? 我を傷物にするという事は婚約者になると決定したようなものだぞ!!」


「・・・傷物にはしてないからな!」


「・・・・静かにしてくれない?」


レヴィの問題発言を否定するために声を張り上げると、リィンに睨まれた。


「俺に言わずにレヴィに言ってくれ」


「傷物とか婚約者とかどうでもいいんだけどさ、勉強しろって言ったのあんたよね?なんで、発言した奴が1番騒がしいわけ?」


「・・・すみません」


正論で返された。ぐうの音も出ないってこういう事だね。まさか、リィンに勉強の事で叱られる時がくるとわ。というか、元々、レヴィがあんな発言をしなければ問題なかったんだ。 だから悪いのはレヴィだ。俺はそう勝手に納得して、勉強を始める。 レヴィも空気的に勉強しないといけないんだという事がわかり、見直しと次の問題を始めた。



「ん、はぁぁぁ!」


「終わった~」


「我、疲れた」


三時間の勉強を終えた俺達はぐったりしていた。あの後、レヴィが数学以外の教科も苦手と言うよりただ単に解き方を知らなかっただけということが分かり、リィンの方は予想通り単なるアホだと言うことを再度確認出来た。


「今日は遅いし夕飯食べてくか?」


俺は時計を確認した後に、そう提案する。


「うーん。ちょっとお母さんに聞いてみるわ」


「我も父上に聞いてくる!」


「ん、了解」


二人は携帯を取り出して、1度、部屋を出ていく。俺は携帯を取り出し、暇つぶしにパズルゲームをプレイしようと画面をつける。


「ん? 妹華から着信履歴が50回とメールが50件?」


メールのアイコンをタップし起動させる。すると、未読のメールがずらりと並んでいた。俺はその中の一つを開く。


『お兄!! なんで電話に出ないの! メールにも返信ないし!桔梗ちゃんのお姉さんが送ってくれるらしいからもう来なくていいから!変態クソお兄!!』


というご立腹な内容だった。俺は慌てて妹華に電話をかける。着信のメロディが少し鳴った後、


『ただいま、変態クソお兄の電話に出たくありません。出て欲しいなら、妹華は世界一可愛い、と十回、心を込めて叫んだ後にかけ直してください』


「・・・不在か」


通話を切ろうとすると、


『なんで切ろうとしてんのよ! バカお兄!!謝罪や言い訳したところで許してあげないから!! 変態クソお兄!!』


「うん、そっか」


妹華がキレてきたので、適当にあしらう。そして今度こそ通話を切る。そのタイミングで、電話を終えたリィンとレヴィが入ってきた。片方はどんよりした顔で、もう一人は嬉しそうな顔で。


「・・・最悪」


どんより顔のリィンが机に突っ伏して呟く。


「父上が泊まっていけとの事だ!我、嬉しい!!」


嬉し顔のレヴィが腕をわちゃわちゃさせて喜びを表しながら大声をあげた。


「いや、さすがにそれは・・・」


「もう遅いから、とのことだ!」


「・・・私も」


ボソリとリィンがまた呟いた。


「・・・え? お前も?」


「えぇ、最悪な事にね」


リィンはマジで嫌な顔で呟く。予想外の答えにどうしようか迷う、俺。飯を食べさせようとしただけなのに、なぜお泊まりに? しかも、異性のクラスメイトの家に。


「あのー、流石にクラスメイトだからって男の部屋というのは・・・」


「私もそう言ったわよ。でもお父さんが、『兄太君なら安心だ!』って一点張りで、気づいたらこうなってたわ」


「父上が『娘に手を出したら殺す』っ忠告しておけば、誰も手は出さないって言っておったぞ」


「うん、別に手を出す気ないから安心してくれ。っと言うかそういう問題じゃないんだよなぁ、明日も学校だしさ」


と、着替えやら明日の準備について話し、泊まりをなくそうとする。しかし、


「それなら安心だ。我、教科書全部持ってきてるし、昼餉分のお金もある。それに着替えや忘れ物なら、家に転移すれば万事解決だ」


「じゃあ、転移で家に帰れよ!!」


俺は叫んだ。こんなのツッコミ入れるしかないでしょうよ。転移できる時点で遅いから危険とかないよね?ていうか、コイツらなら犯罪者とかにあっても簡単に撃退しそうなんだけど。逆に吸血鬼と魔王の娘に手を出す馬鹿がいると思うか?そんな奴、いたら前世は勇者だよ。うん、きっと。


「はぁ、まぁ、いいよ。 勝手にしてくれ」


俺は大きくため息をついて、降参した。どうせ折れてくれるわけもないしな。


「さて、夕飯作ってこよ」


レヴィとリィンをリビングに案内し、俺は夕飯の準備に取り掛かった。


次回の投稿日に会いましょう!

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