20/193
対峙
前回二人があったのは『オニの』のとき、ということで。。。。
トクジは目をみはった。
数年前、トクジと、その持ち物である《刀》を震え上がらせた男は、ぼうぼうだった髪と髭をしっかりと整え顔色も良く、野に棲む獣をうかがわせた気配もどこかにひそめて、しっかりと前をむく、堂々とした『大臣』になっていた。
「ひさしぶりだな。トクジ」
天宮の『四の宮の大臣』が、懐手にしていた腕をもどし、対峙する。
足を動かしたいのを我慢してトクジは言った。
「 ―― こりゃ、えらく男前になったもんだ」
「あほが。おれは元から男前よ」
笑い方は変わらなかった。
ゆるく穏やかな笑みには、ひどく深い底がある。
こちらも返そうとした笑い顔はひどくひきつったものになった。
「まあ、あがれ」と背をむけた男のあとをしかたなく追う。
シャムショの仕事をする男たちをわきにみて、奥へと進み、長い廊下をいくつか折れて、若い男が扉をあけていた部屋へとはいった。




