第90話「隠されていた姿」
突如、召喚された姿に────
俺は明晰夢 でも見ている様な感覚に陥った。
「なんだよ……あれ」
「お兄様、あれは水の大精霊です。
以前、光のブックマン達が召喚した、天使アンゲロイとは……
レベルが違うモノです」
「そうなのか……」
俺とレイが呆然としている中で、
セナは、ニッコリ笑顔を見せ、俺に告げる。
「タクロウなら大丈夫〜なのだよ」
「そうなのか……セナ」
「うん!」
上空に漂う、大精霊ウインディーネ。
カインはウインディーネの横に並び。
矜恃を見せていた。
水が人魚の形をして、槍を携えている。
それは禍々しい威圧感を地に下ろしていた。
その姿を目にした冒険者達は、
滝のような雨に打たれるような重圧感に襲われていた。
冒険者達はこれは自分達の障碍となると。
理解しながらも、項垂れるモノ、蹲うモノしか……
────いなかった
ルルが実況する。
「あっあれはウインディーネですぅ!!!!!!!
大精霊ですぅ!!!!!!!
大精霊!!!!!!!!!!!
初めて見たですうぅぅぅぅぅううう!」
ルルが興奮気味に実況をしている。
召喚石は神様の眷族を召喚できる。
大精霊ウインディーネは、
水の神アルテウスの序列五位の眷族である。
誰もが、まさか、こんな観光街のフェスティバルに。
最高位の召喚石を行使するとは誰もが、思ってはいなかった。
だが、タクロウ、セバスチャンの姿に、
カインは猜疑して、召喚石を使った。
カインはニヤリとしながらボソッと呟く。
「これが──王族ミルディア家の召喚石か、なるほど。
これはいい!」
カインが右手を街に向け吶喊する。
「ウインディーネ!!!
〝水砲撃〟だ!!!!」
水の大精霊ウインディーネが槍を地に向ける。
数多の魔法陣が現れ重ねがけされている。
キュインキュインと高い音が街に響き渡る。
「あれ……あれは……!
超級魔法だぴょん……第二階位の魔法だぴょん
あんなの打たれたら冒険者達は全員失格だぴょん……」
この世界は初級、中級、上級、王級、超級、神話級と、
魔法を分けている。
だが、古い人間は上から一階位から六階位と、
呼んでいた。
今は廃れた言葉である。
カインが再度、吶喊する。
「────放て!!!!!!!!!!!」
水の大砲が上空から放たれる。
フェスティバルに参加している冒険者達は、
ウインディーネの超級魔法に対して直ぐさま障壁を張る。
「「「〝魔力盾〟」」」
「「「「〝岩盾〟」」」」
「「「「〝風盾〟」」」」
「「「〝水盾〟」」」
上空に様々な障壁が出現し、
ウインディーネの魔法を抑える。
だが、障壁から省かれている。
ウインドフィッシュの群れは瞬殺されている。
あれは──やばい。
俺も参加しないと……
俺が徐に魔法を唱えようした瞬間、
アテナの声が聞こえた。
「──主殿〜」
「アテナ!!」
何かとても焦っているアテナの姿。
アテナは颯爽と俺の元へと来た。
何があったんだ?
俺は動揺しながらもアテナに声を掛ける。
「何かあったのか?」
「主殿! ルークが……ルークの耳が!」
アテナの声が震えている。
俺は息を呑んで、アテナに背負われている。
ルークの姿を覗き込む。
「……こっ……これは」
俺はその姿を見て驚愕する。
────エルフだ。
これはどう見ても、エルフの長耳だ。
しかし、どういう事だ。
ルークはエルフなのか?
今までは普通の耳だった……ぞ。
────その瞬間。
記憶に残る────
印象的なシーンがフラッシュバックのごとく展開した。
まっ待て待て待て。
そうだ!!
何を────忘れていたんだ俺。
セナは男の振りをしていた。
その時、俺は判断理由として。
セナが自分自身が男って言ったのと、
一人称が僕。
一番、そうだ──感じた事は、
胸が無かった。
まっ──まさか。
一部の身体を変化させる?
隠蔽させる魔法でもあるのか?
いいぃやある。
存在する────
シルビアが使った魔法。
スティング、解除があるなら隠蔽もある。
俺が最初の頃──シルビアに貰った隠蔽魔法。
それが存在している。
だが、これは何系の魔法なんだ?
いや、それよりも──
なぜ、隠蔽魔法を使っているんだ?
しかも、歴史に存在していない。
エルフが目の前に居る。
どういう事だ。
アテナは俺の姿を見て、そっと話す。
「主殿、大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だ。
アテナ、ルークの耳を隠してやってくれ頼む」
「はい!」
ルークはエルフ。
だからあの時、俺がエルフの話をして、喜んでいたのか。
この世界はどうなっている。
俺が思っているよりも────
この世界は隠し事が多い。
セナは俺とルークの姿を見て、
レイに告げる。
「レイ、タクロウは少し動揺してるから。
僕があれを倒すね」
「なら私も! お兄様の為に戦います」
「大丈夫だよ! 余裕さ」
ニカッて笑いながら。
アイテムボックスから双剣を出す。
真っ白と真っ黒の剣。
セナはウインディーネに向かって踏み込んだ。
セナは空中を跳躍しながら、剣を向ける。
レイは絶世の姿に目を奪われていた。
「セナ……凄い」
セナは双剣を構え武器を放つ。
「〝白光新羅〟!!!!!」
フラッシュを焚いたかのような、白と黒の閃光が。
ウインディーネを襲う。
その眩さに街の人は目を瞑り、
そして、再度、瞳に風景を写した。
上空にいたウインディーネが消えていた。
────瞬殺だった。
いや、一撃だった。
殆どの人が何か分からない。
閃光がバッと視界を奪い。
その後にウインディーネは消えていたのだ。
それを確実に見ていたのは──
俺とセナとレイとカインだった。
────シュタッ。
「今度は僕が倒したのだよ!」
「────セナすげぇ」
「抱っこ──」
俺は呆気に取られながらセナのハグを受け取った。
「えへへへ〜」
「セナ……すごい」
セナはむぎゅむぎゅしているが、
俺はポカーンとしていた。
──だがもう一人それを見ていた者がいた。
「俺もびっくりしたぜ。あんな武技。
何百年も見た事がねぇ」
そう言いながら近付いてきた者。
鬼神ハドリー。
「お兄様、私が倒します」
「おっおい。あれは鬼神でハートで」
頬を膨らませながらもレイが告げる。
「私も倒して。
お兄様にハグハグ、むぎゅむぎゅしてもらいます」
「えへへへ、極楽なのだよ〜レイ」
「セナ! 煽ったらダメだ!」
セナは顔をべちゃ〜っとさせながら俺にくっつく。
レイはそれを見てパンパンに頬を膨らませる。
「むぅ〜」
ハドリーは頭を掻きながら告げる。
「俺の相手は一人か?
まぁいい。来い!!!!!」
上空に居るカインは訝しみ、俺達を見ていた。
「嘘だ!! 嘘だ!! 嘘だ!!!!!!!」
カインが叫ぶ。
俺はセナにべちゃ〜とされながら左手をカインに向けた。
俺は魔力を込める。
左手からキュイーーーンと音がなり。
俺は魔法を唱えた。
「〝雷閃光〟!!!!」
雷鳴を轟かす閃光がカインを襲う。
カインはすかさずバレルロールをして回避する。
「クッソぅ!!!!
鬱陶しい!!!!!!」
俺は獰猛な笑みを浮かべ告げる。
「勝負だ!! カイン!!」
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