第89話「円卓の騎士対千血」
────遡ること。
剣戟が轟く。
凄まじい轟音が響き渡り、空気がビリビリと震える。
冒険者達はこの音を聞くだけで、
近寄ってはならぬと知らされる。
その場は圧倒的なまでの、威圧感を放っていた。
剣聖アテナと千血アディラが武器を重ねている最中、
ルークはまだ、一度も魔法を唱えてなかった。
隙を与えないように、
素早く立ち回るアディラに対して、
大振りだが、一撃が致命的になる剣聖の剣戟。
何度も武器を重ねた後。
二人は一度間合いをとって、睨み合った。
「昔とは違うようだなアテナ」
「姉さん……今日で超えてみせる!!」
「ふふははは!!
その雑魚を守りながら何が超えるだ? 笑わせる!!」
「ルークはアタクシよりも強い」
「ほぉう」
ルークは何も言わない。
アディラの鋭い殺気がルークに襲うが。
もう既にルークの瞳は不動の意志を示していた。
この状況下で焦燥の色は微塵もなかった。
その瞳を見て、アディラは感じてしまった。
あの時とは何かが違う。
いや、この二人は何かが変わった。
強い意志のようなものが────
「まぁいい……遊びは終わりだ!!!
〝砂嵐〟!!!」
アディラが王級土魔法を唱えた。
一瞬で砂嵐がルークとアテナを囲う。
視界からアディラは消えた。
ルークとアテナは背中合わせをし、
いつ砂嵐の外から攻撃が来るか──
睥睨する。
だが、少し経つとアテナは頬をぽりぽりと掻き、
ニヤリとする。
そして、銀色の大剣を最上段に上げ、武技放つ。
「〝烈火〟!!!!!」
烈火は南火流の最高位の武技。
それを簡単に放つアテナもそうだが、
上級魔法の上、王級魔法を簡単に放つアディラ。
二人の戦う姿は圧巻だった。
アテナの鋭い斬撃で砂嵐が消滅し、
そのまま狙ったかのような斬撃がアディラへと向かう。
だが、アディラは身体を素早く捻り、斬撃を躱す。
そして、その体勢から上級土魔法を直ぐさま唱える。
「〝岩雨〟」
アテナとルークの上空から魔法陣が現れる。
数多の岩がルークとアテナに降り注ぐ。
アテナは降り注ぐ岩に対して武技を放つ。
「〝烈火〟!!!!」
赤い炎の様な斬撃が空を切り裂く、
降り注ぐ岩を一瞬でかき消していく。
だが、すかさずアディラはアテナに向かって武技を放つ。
「〝五月雨四式〟」
北土流、最高位の武技。
五月雨四式。
五月雨は一式から四式までが技としてあり。
一式は素早い突き。
二式は一突きで百の突きが現れる。
三式は一突きで千の突きが現れる。
四式は一突きで千の突きが全方向から現れる。
四式を使えるのは世界で五人しかない。
素早い攻撃を得意とする北土流を使い。
圧倒的な火力の魔法を使う。
千血アディラは剣聖アテナの天敵だった。
────昔は。
全方向の鋭い突きがアテナを襲う。
だが、アテナはその場を動けない。
動くと後ろのルークが──
だが、アテナは余裕の動きで武器を放つ。
「〝流水〟!!!」
アテナは身体を高速スピンさせ、全方位の突きを弾く。
一突きも身体に触れさせない綺麗な反射。
カウンター、受け身が得意な東水流の武技である。
アテナは魔法が使えないというハンデがありながらも、
その若さで全流派の最高位の武技も全て、使えていた。
だが、その剣聖アテナでさえ、
東西南北の四宝剣と呼ばれる各、武技使いに、
まだ、届かなかった。
宝六魔と四宝剣。
この世界で最強と呼ばれる称号がこの名だ。
タクロウは勿論、そんな事はまだ知らないのである。
突如、雷鳴が一体に轟く。
ルークとアテナとアディラはハッとした表情を見せ。
一旦、動きが止まる。
アテナとアディラ、そしてルーク。
前、対面した音よりも一段と響いているのを唖然としていた。
────とても強い響きを。
「これはアイツの魔法か」
「ふふふっ、主殿、さすがだ」
ルークは無言でずっと何かを待っていた。
アテナはニヤリと微笑み、大剣をアディラに向ける。
「主殿が戦っている中、アタクシが負ける訳にはいかない」
「魔法が使えないお前に、何が出来る!」
アディラは言葉でアテナを少しでも揺さぶろうとするが、
全くといっていいほど、ぶれない。
(なんだ……この二人は。数日間で何があったと言うんだ。
あの男がそうさせたと言うのか──)
ルルのアナウンスが鳴り。
ウインドフィッシュが街に入る。
アディラはニヤリとする。
視界が悪くなる状況で魔法が使えない、
アテナは不利である。
剰え対等であれば、まだ何とかなる。
だが、相手は一度も勝ったことのない格上である。
何十万のウインドフィッシュの群れが街を覆う。
一瞬にして冒険者達のリュックサック目掛けて襲い掛かる。
魔法石を好物とするウインドフィッシュ。
アテナ達の周りにも、
既にウインドフィッシュが囲んでいた。
アテナは急いでルークを背負い跳躍する。
────地の利がアディラに傾く。
アディラはアテナから距離を取り、
魚の群れに隠れながら上級土魔法を放つ。
「背負い、守りながら──戦えるか!!
〝岩荊棘〟」
岩の茨が鋭く襲う。
アテナは武技を放たない。
ルークに耳元でボソッ呟かれ、
ただ大剣で魔法を払いながら跳躍している。
アディラは何かを吹き込まれたのを見て、
アテナに裂帛する。
「何をしている、アテナ!!!」
そして、アディラが魔法をアテナに唱えようとした瞬間。
━━━━━━━━━━━━━━━刹那。
空を切り裂くように人が上空に吹っ飛んでいく。
それにアディラは気づく。
「カイン!!」
その光景を見て、更にアテナとの距離を取るアディラ。
だが、追従するように素早く追いかけるアテナとルーク。
上空から極限まで研ぎ澄まされた突風が振り下ろされる。
(カインがこの魔法を使わないといけない相手とは……
まさか──あの男か)
だか、魔法は障壁で簡単に止められる。
そして、その後。
突如として天空に召喚された水の大精霊ウインディーネ。
「バッカな!! カイン何している!!!」
アディラは初めて戦いの中、動揺を見せてしまった。
────それをずっと狙っていたモノがいた。
「〝重力圧〟」
アディラの上から黒い球体の様なモノが現れる。
その黒い球体から────
凄まじいGがアディラにのしかかり攻撃する。
「──────グハッア!!」
ルークはただ、この一撃の為にずっと魔量を込めていた。
────王級闇魔法。
「これで終わりです!!!! アディラ!!!!!!」
ルークは裂帛しながら魔量を込め続ける。
アディラは踠くが────何も出来ない。
「ガキに負けるなど!!!!!!!」
圧倒的なGが何もさせない。
そのままアディラは気絶して。
そして────ルークも魔力切れでそのまま目を閉じた。
「アタクシがあの時……主殿にやられた魔法を……ルーク。
やはり、強いなルーク」
アテナはそのままルークを背負い。
──主の元へと向かったのである。
この度は、読んで下さり有難うございます。
皆様の評価とブクマが励みになっております。
今後とも、引き続きご愛読いただければ幸いです。




