第88話「混戦」
俺はリリーの元へと向かった。
リリーとセバスチャンは突然の事に唖然としていた。
特にリリーは見た事のない魔法、
雷鳴を聞き、目をぱちくりさせていた。
俺はセバスチャンの姿、リリーの表情を見て、
この状況を直ぐに理解した。
「セバスチャン、ここは俺がやります」
「タクロウ様、しかし……」
「大丈夫ですよ! あんなやつ俺がコテンパンにぐへぇええあ」
突如、右手から激痛が走った。
俺は痛みの方へ視線を転じると、
リリーが俺の右手に噛み付いていた。
「へぇんなむしゅ。はいんの事へぇんに言うゆるしゃない」
「噛みながら話すなよ、わかった! わかったから!」
俺を睨みながらも噛むのを止めるリリー。
いってぇ。
歯型ついてるよ。
リリーの奴。
「では、タクロウ様。お願い致します」
「私は行かないわよ!! ここに居るから……」
また、汐らしい顔をしているリリー。
俺はそっとリリーに告げた。
「フェスティバルで、
良いところを魅せるんじゃなかったのか?」
「そんなのわかってるわよ!! ヘンナムシ!」
俺の言葉でリリーのツインテールがうねっている。
おぉ──元気は少し戻ったかな。
「大丈夫だリリー。
アイツ、いや、カインはリリーの事嫌いじゃないと思うぞ」
俺の言葉に目を見開くリリー。
「えっ……そんなの嘘よ」
「ほんとさ、セバスチャンでは、また!」
セバスチャンはリリーを抱え、その場を後にしようとする。
リリーが小さく俺に告げる。
「タクロウ。ありがとう」
「あぁ」
タクロウか。
初めて俺の名前呼んだな。
セバスチャンとリリーは跳躍して、
その場からあっという間に消えて行く。
「へぇ〜ちゃんと待ってくれるなんて、優しいだな」
「お前にわからせようと思ってな、力の差を!!」
カインは両手の指を鳴らす。
無詠唱の風刃が俺に襲う。
俺は魔法を唱える。
「〝魔力盾〟」
カインが何度も指を鳴らし、風刃を出すが、
俺の障壁がカインの攻撃を防ぐ。
それを見て、カインは苛立ちを見せる。
「ただ、守るだけなのか!!!」
珍しいな。
クールな奴かと思ったが凄い吠えてる。
突然、ルルーの解説の音量が上がる。
「ウインドフィッシュが街に入ったぴょん〜
魚狩りじゃあ!!!」
いなごの大群の様な数のウインドフィッシュが、
各冒険者のリュックサック目掛け、
散らばって冒険者を追いかける。
街はウインドフィッシュに覆われて、
辺りが見渡せないくらい、囲っていた。
そして、ウインドフィッシュの群れは、
俺とカインにも襲いかかる。
気持ち悪いくらいの数が俺に向かう。
俺は魔法を唱えた。
「なんて、数だよ!!
〝雷閃光〟」
雷鳴が共にウインドフィッシュの群れが瞬殺される。
だが、カインは俺に向かって指を鳴らす。
直ぐさまは魔法を唱える。
「〝魔力盾〟!!」
カインの風刃を俺は障壁で防ぐ。
だが、カインは一切、
ウインドフィッシュに攻撃をしていない。
カインは疾風を身体の周りに纏わせ、
自動防御をしていた。
「お前? いや、タクロウか?
さっきから詠唱をちゃんとしてるなぁ!!
ハッハッハっ!!
まさか、まさか! 恩恵貰ってないのかよ」
カインは高笑いしながら指を何度も鳴らす。
俺は跳躍しながら、
ウインドフィッシュとカインの魔法から逃げる。
手数が圧倒的に違いすぎる。
無詠唱の中級風魔法。
そして、なんだよ、後、あの風の自動防御は。
俺の愚者盾と違って。
視界の外から近づく、
ウインドフィッシュからも守るとか。
俺はウインドフィッシュから距離を取りつつ、
カインの攻撃を障壁で守るのがやっとなのに。
「守ってばかり、じゃあ何も手に入らないんだよ!!!
ハッハッハっ!!!!
恩恵がないお前じゃ!! 俺とは勝負にならねぇよ!!」
俺は獰猛な笑みをカインに見せ告げる。
「悪ぃなカイン。俺は恩恵を沢山貰ったようだ」
「〝炎槍〟!!」
カインの後ろに現れたレイが唱えた。
炎の槍がカインに目掛けて向かう。
カインはそれに直ぐに気づき、踵を返し指を鳴らす。
風の刃が炎の槍を相殺させる。
────俺はすかさず魔法を唱えた。
「〝雷道〟」
魔法による高速移動で、カインに一瞬にして近づく。
この一撃でキメる。
俺は左手を握り、魔法を唱えた。
「なっ!?!」
「俺の恩恵は仲間だ!!
〝雷拳〟!!」
俺の紫電を纏ったアッパーはカインの腹にめり込み。
カインは上空へと吹っ飛んで行く。
だが、俺の近くには何万のウインドフィッシュが、
近づいていた。
「〝白光神羅〟」
セナが武技を放つ。
白と黒の閃光が一瞬でウインドフィッシュ万の群れを、
蹴散らしていく。
「すっすげえ!!」
「やっと見つけたのだよ!」
「お兄様〜見つけました」
セナとレイがにっこりと微笑み俺に近づく。
──ルルが直ぐに解説を始める。
「すごいだぴょん!!! あんな武技見た事ないだぴょん」
大型ビジョンには俺達が映し出される。
またかよ。
だが、どうしてだ。
上空からカインのやつが落ちてこない。
カインが魔法を唱えた。
「〝荒狂暴風〟!!」
ウインドフィッシュを蹴散らしつつ、
鋭い竜巻の様な魔法が、上空から俺を襲う。
俺は魔法を唱えた。
「〝魔力盾〟!!!!」
王級風魔法が障壁で簡単に止まった。
空中に浮いているカインは、
悔しげに表情を歪め、アイテムボックス召喚石を出した。
「来い!!! ウインディーネ!」
召喚された、水の大精霊。
戦場が一変すると誰もが感じる威圧感を放っていた。
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