00-私は誰?
新作です。
泥と涙と血と汗にまみれ脱獄逃亡する令嬢の物語です。
私は……誰?
名前は確か……凛……白石凛……だった?
名前……そう私はエレオノーラ。
エレオノーラ・フォン・ライゼンベルグ。
ヴァルディア共和国の……ライゼンベルグ辺境伯であるお父様の四女?
意識が浮かび上がった直後はそんなことを思い出し、ますます頭が混乱した。
名前と年齢? どこに住んでいて、何をしていたのか。
順番に思い出せば落ち着くはずだと……思っているのに違う記憶がある。
大学二年、心理学の専攻。
郊外のマンションに一人暮らしでコンビニのアルバイト……スマートフォンの青白い光にテレビから漏れる音楽番組の音。
(私は……日本で生きていた)
そこまでははっきりしている。
では、この石の冷たさを背中に受けているこの身体は誰なのか。
指を動かしてみるが、妙に白く細い。
明らかに見慣れない指なのに、知っている。
そして肩にかかった長い金髪。
(……これ、私じゃない……けど私だ。)
屋敷の長い廊下に重い絨毯。
歩く父の背中と、追う侍女の声、手を引かれた少女。
辺境伯の娘。
突然頭の中がスッキリした気持ちになり、2つの記憶がぴたりと重なった。
(私は大学生……だった……けど私は……辺境伯の娘でもある)
状況を整理しようとするが、現実が皮膚を通して主張してくる。
背中に触れる石が妙に冷たく、あたりの湿気が肌にまとわりついてくる。
錆と古い血の匂いが鼻をついてくる上に、瞬きをすると視界が揺れた。
身体を起こそうとして、視線を下へ向けるとエレオノーラの身体。
胸元の曲線が見え、自分が何も身につけていないことに気づいた。
その瞬間、手首に強い痛みが走った。
片方の手首に黒い枷が嵌められており、ゴツゴツとした金属が肌を擦り、薄ら血が赤く滲んでいた。
足首も同じだった。
(拘束……されてる? どうして……)
状況がわからず、記憶が定まらず、私の頭は混乱する一方だった。
次話→この後すぐ投稿予定です
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