世界に「窓」を開いたブラウザ 第5話:インターネットの爆発
作者のかつをです。
第二十章の第5話をお届けします。
ネットスケープのIPOは、インターネットの歴史において最も象徴的な出来事の一つです。
ここから、AmazonやGoogleといった企業が生まれる土壌が出来上がりました。
そして、マイクロソフトとの激闘。時代の変わり目の熱狂を描きました。
※この物語は史実を基にしたフィクションです。登場する人物、団体、事件などの描写は、物語を構成するための創作であり、事実と異なる場合があります。
1994年4月。
マーク・アンドリーセンとジム・クラークは、「モザイク・コミュニケーションズ」を設立した。
(後に、旧所属先であるNCSAからのクレームにより、「ネットスケープ・コミュニケーションズ」へと社名を変更する)
彼らは、Mosaicのオリジナルコードを一行も使わずに、ゼロから新しいブラウザを作り上げた。
より速く、より安定し、より高機能なブラウザ。
その名は、「Netscape Navigator」。
この製品は、インターネットの歴史における「ビッグバン」だった。
ネットスケープ社は、このブラウザを基本的に無料で配布するという戦略をとった。
そして、企業向けのサーバーソフトで収益を上げるというビジネスモデルを確立した。
結果は、圧倒的だった。
市場シェアは瞬く間に90%を超えた。
世界中のパソコンの画面には、ネットスケープの「N」のロゴマークが輝いていた。
そして、1995年8月9日。
ネットスケープ社は株式を公開(IPO)する。
設立からわずか1年半。赤字続きの会社。
しかし、株式市場は熱狂した。
初値は公開価格の2倍以上となり、時価総額は数十億ドルに達した。
24歳のマーク・アンドリーセンは、一夜にして億万長者となり、雑誌『タイム』の表紙を飾った。
裸足でコーディングしていたオタクの学生が、時代の寵児となったのだ。
この日をもって、「ドットコム・ブーム」が始まったとされる。
インターネットは、単なる技術ではなく、莫大な富を生み出す「ニューエコノミー」の象徴となった。
しかし、その輝かしい成功の影で、眠れる巨人が目を覚まそうとしていた。
マイクロソフトのビル・ゲイツである。
彼は当初、インターネットの波を過小評価していた。
しかし、ネットスケープの快進撃を見て、彼は全社の方針を180度転換する。
「インターネット・タイダルウェーブ(津波)」
ゲイツは全社員に向けたメモでそう宣言し、Windows 95に自社製ブラウザ「Internet Explorer」を無料で同梱することを決めた。
ここから、ネットスケープ対マイクロソフトという、壮絶な「第一次ブラウザ戦争」が幕を開けることになる。
ネットスケープは最終的に敗れ、会社は消滅することになるが、彼らが点火したインターネットという炎は、もう誰にも消すことはできなかった。
世界は、完全に繋がったのだ。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
ネットスケープのソースコードは、後にオープンソース化され、「Mozilla Firefox」へと受け継がれていきます。彼らの遺伝子は、今も生き続けているのです。
さて、長い旅もいよいよ終わりです。
ENIACの女性たちから始まった物語は、現代の私たちへと繋がります。
次回、「あなたが今見る世界へ(終)」。
『IT創世記~開拓者たちの足跡~』、堂々の完結です。
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