拾壱
「て、ことで仕事くれー」
「何がて、ことでなのか説明するなら考えんでもない」
「え〜、面倒くせぇ〜」
鷹が千波を連れてきたのは作戦区の最重要ポイント、司令部だった。犯罪者の子である千波は作戦区にすら入ったことがなかったらしく、辺りに視線を巡らせている。
仕事の宛がある場所はここだったらしい。
「そいつは?」
鷹の作戦を単純に説明すると、ここで一番偉い真金に直接仕事を要求することだ。
「ひったくり犯」
「・・・何でひったくり犯をお前はこの都市の心臓部に招き入れているんだ?」
「仕事がほしいっていってたから。真金は常時手が足りない手が足りない言ってるからさ。仕事余ってるかと思って」
「無いことは無いが・・・。さすがに素性も知れんやつには渡せんな」
真金は千波に視線を向ける。千波はビクッと震えると鷹の後ろにかくれる。
「あ、あなた何者なんですか? こんなところに伝があるなんてただ者じゃないんですね? ずっと右目も閉じてますし」
「え? 今気づいたん?」
「というかお前は何の説明もせずにつれて来てたんだな・・・」
千波が震えながら問いかけ、鷹はあっけらかんと答え、真金がため息をつく。
「俺は劔之 鷹。日がな一日地上に出て天使を殺す仕事してまっす」
この世界で地上に出るのは異能者とその補助要員だけだ。一般人が地上に出るのなんて、自殺と大差ない。
「え? でもどこにもタトゥー入ってないよね?」
「俺は特別製なのさ」
「話してるところ悪いが、話を戻しても構わんか?」
鷹がてきとうにぼやかして答える。その二人の会話に真金が入り込む。
「あっ、すいません」
「いや、君が気にすることじゃない。寧ろ俺はそっちの面倒事を増やすバカに謝罪を要求したい」
「要求は却下されました」
ケラケラと笑う鷹に真金は無言で拳骨を食らわす。真金は殴られたところを押さえて、床をのたうち回る鷹を無視し、千波に向き直る。
「改めて自己紹介をしよう。鐡 真金だ」
「・・・錺 千波です」
「錺?」
錺と言う名字を聞いて眉根を寄せる真金。こちらは鷹と違いあっさりと答えにたどり着いたようだ。
「あぁ、国売りの子か」
国売りの子と言われた千波が表情を険しくする。そんな千波の表情に目も向けずに、真金は思案する。
そんな真金を見ていると警報が指令室内に鳴り響く。
「なんだ?」
「天使が警戒圏内に侵入しました」
「そうか。おい、鷹」
「何だよ」
声をかけられるとさっきまで悶絶していたのが嘘のように、あっさりと立ち上がる。
「仕事だ」
「え〜? 階級は何よ。上位でもない限り俺が出る必要無いっしょ」
「階級は能天使。初めては弱いに越したことは無いだろ」
「初めてって何がよ」
鷹は首を捻る。すると、真金は自分を見ていないことに気づいた。
真金が見ているのは千波だ。
「お前、まさか・・・」
鷹は気づいたようだが、千波は首を傾けている。
「そのまさかだ。仕事がほしいって言ったよな」
「え? あ、あぁ。はい」
突然話を振られて反射的に応答する千波。その千波にぶつけた真金の言葉に千波は言葉を失った。
「鷹の傍付きをしてろ。最初の仕事は地上に行って天使の排除だ」




