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Future  作者: 浅咲夏茶
6th Chapter;Band members and culture festival.
92/127

Target:My band members.~My best song,Our best song./episode91

「エントリーナンバー11、バインリヒエリザさんです!」

 まあ、これを僕が言うのもなんだよな、ホント。だって知り合いだぞ? 知り合い、それも『幼馴染』のことを、『~さん』呼ばわりするなんて、ちょっとおかしい感じがする。……その一方、新鮮な感じもするけどな。

 ESS、エリザ親衛隊は当然エリザの登場と同時に歓声を上げた。男も、女も、カマホモも、誰だってESSなら声を上げた。外でファイルを配っていたメンバーも、途端に体育館の中に突入してきて、体育館は結構な大混乱となった。

「突然押し寄せることはやめてください」

 一応、口頭で注意をしておく。……まあ、彼奴等からすれば僕の注意なんざ聞く耳も持ってくれないだろうけどな。何せ、彼奴等からの僕の印象は、『エリザの側近にいる男』だし、それが何を指しているのかといえば、僕=敵というわけである。……敵じゃ、無いんだけどな。

「……えっ、えと……」

 僕が口頭で注意をしてから数秒。エリザが体育館のステージ中央に立ち、自分のミスコンへの思いというか、自分の意気込みというか、そんなのを発表した。……はずだった。

「ダーリン! 白砂凛君っ!」

「えっ、なっ、何!?」

 突然エリザに言われたのだが、僕は一体何を聞かれるのか非常に心臓の鼓動をバクバクさせていた。

「……好き」

「は……?」

「好き」

「いや、エリザ……」

「大好き。……結婚、してください」

 嘘……だろ? 何でこんな、それもこんな文化祭のミスコンのステージで僕の名前を上げてまでこいつは……。

「あ、あのだな、エリザ。場所を弁えて……」

「ダーリンは、私の事……嫌い?」

 嫌いじゃ……ないです、はい。

 まあ、そりゃそうなんだけどさ、こんなところで普通愛の告白なんてするか? ……まあきっと、エリザもエリザで、それなりに緊張していたりするんだろう。それを分かってやらなくちゃ彼氏にはなれない……んじゃないか?

 まあでも、僕は前から意思を貫いてきた通り、『彼女=将来嫁に出来る女』という思考のため、軽い気持ちで彼女になってほしい、または逆告白されて、軽い気持ちでOKを出したくはない。

 だが、この場の空気を考えてみて欲しい。エリザ親衛隊から見れば、僕は『敵』である。エリザも、親衛隊から熱い視線を注がれ、嫌な気分ではないらしいが、彼女特有の悩みとして、『口頭で怒れない』というのがある。だから、エリザは自分の口で自分の怒りを相手にぶつけることが出来ず、どうしても表情で出すしか無いのである。

 前に秋葉原の歩行者天国で、トラックを用いて無差別殺人事件を起こした容疑者だって、トラウマを抱え、自分の苛立ちを全て『口』じゃなくて『表情』で出さなくちゃいけないくらいに追い込まれていたという事案が有る。

 僕は実刑判決になった容疑者、被告を支持するわけではないけれど、人は誰だって『口』で全ていうことが出来るわけじゃないことを、僕はエリザのことをしって分かった。エリザはトラウマのせいで出来ないんだ。口頭で怒ることを。そして、怒ったら何かされるという、前の高校での嫌な思い出のせいで、彼女自身も、誰かに色々と言われても、ただただそれに従うことしか出来ないのだ。

「……エリザ」

「何?」

「……何でお前は、この場所を告白の場として選んだ?」

「誰かに見られているところで告白されたほうが、人を堕としやすいというか……」

 それ軽い脅迫じゃねえか! ……まあでも、エリザはそれだけ真剣だということなんだろう。……でも、ここで僕が仮にOKサインを出したとして、僕はどうなる? エリザ親衛隊からは嫉妬されるかもしれないが、もしかすると逆に、祝福を受けるかもしれない。……いや、僕はそんな祝福とかを受けるためにエリザを選ぶような、悪い人間じゃない。

「じゃあもう一つ聞く。前にも聞いたと思うが、お前はその……」

「ライク」

「え」

「嘘。ラブ、だよ……」

「なっ……」

 まあ、前にも聞いたことがあったから薄々分かっていた。でも、今回のエリザはそんなんじゃなかった。場所が場所なだけに、少々照れてほしいものなのだが、エリザにはそんなのお構いなし。すぐに僕に抱きついてきやがった。

「ちょ、こら……」

「ぎゅうううっ!」

「やめろって……」

 いや、本当にやめてもらわないと、マジで僕の評判下がるし、それこそ僕がESSに消されちゃうって……。エリザの気持ちは嬉しいけどさ……。

「さ、さて、ミスコンを続けま……」

 僕が司会の仕事を戻ろうとして、エリザの拘束から抜けた時だった。エリザ親衛隊の男が、「早く気持ちを伝えたらどうなんだ!」と、僕に強く言った。……って、あれ梨人じゃね? いや、マジで何でいまここで……。

「そーだそーだ!」

「純粋な女の子の気持ちを踏みにじる男なんて、最低よ!」

 うわあ、これまじでマズイ感じなんじゃ……。

 ふと、周りを見渡す。先生は沢山いる。でも、助けを求めに行こうとしても、この場で助けに行こうとしたら、絶対にその先生に『好意を抱いている』と勘違いされる。それが女の先生なら特にだ。……まあ、男の先生に助けを求めた場合は、あれだろ? 僕が受け、先生側が責めみたいな、そういうことなんだろ?

 くっそ……。全てはESSのせいなんじゃね、これ。……まあ、この場所をいいことに、凄い爆弾を言い放ったエリザもエリザだけどな。

「……分かった。エリザ、好きだ」

「えっ……」

「好きだ」

 軽い気持ち、という訳ではなかったのは僕も分かった。エリザを彼女にしたくないわけじゃなかった。恋や会長が可愛そうだからだ。特に会長とは、まあ、あれだ。あれをした関係であり、それこそ軽い気持ちで他の女に告白、そしてそれこそ妊娠させたなんて一大ニュース作っちゃったら、それこそス●イズ展開になっちゃって。結局、会長が「中に誰もいませんよ」と言ってしまう結末を迎えてしまうわけで……。そうなれば僕は首を斬られて殺害され、エリザは神経まで包丁が入って大量出血で死亡し……。そんなニュース流したくない。流したくない。

 でも、ここでエリザ親衛隊の威圧に勝てる奴なんて少数しかいないだろ? それに、エリザだって真剣だ。思いに応えてやりたいのが普通だろ?

「……えへへ。ダーリンの事、大好きっ」

 くっそかわええ。……まあ、エリザは元からデレていたキャラだが、それでもここまで来ると相当可愛いです、はい。……あの、鼻血いいですか?

 

 ***


 エリザは途中でそうういう騒動を起こし、波紋を呼んだのだが、結局はその事態も収束し、最終的にエリザが一位になった。あれらしい。「彼氏への告白シーンが神」とか、そういう理由らしい。あと、エリザ親衛隊のメンバーからは、「凛死ね」というメッセージが有る一方で、「凛さんとエリザさん、お幸せに」というメッセージもあった。

「……ねえ、ダーリン」

「な、なんだ?」

「……本当は、嫌いなんだよね?」

 ミスコンが終わった午後3時少し前。僕らのバンドが演奏を始める、本当少し前のこの時刻。エリザと僕は、体育館ステージの下の倉庫まで、楽器を取りに来ていた。

「……嫌いじゃない。でも、その、お前には悪いことしたと思ってる」

「分かってんなら、最初からするなって」

「……悪いな」

「でも、良かった。嫌いじゃ無かったんだ」

「本当に嫌いなら、お前に抱きつかれた時点で嫌気がさすわ」

「へへ」

 ちょこっと笑顔を見せたエリザは、すぐに楽器を取ると、そのまま倉庫から出て、会長と恋に会いに向かった。

「……凛?」

 恋が笑顔でお手前のヤンデレ女っぷりを見せつけてきた。

「なっ……」

「人の胸揉んだのに、結局……」

「やめて! お前はヤンデレキャラじゃないだろ!」

「……えとその、あの告白の意図って一体……」

「ああ、あれか。あれはだな……」

 僕が答えようとすると、僕が答える前にエリザが答えた。

「ライクってことの『告白』だよ。……まあ、これからも私はダーリンの部屋に居候させてもらうけどさ、ダーリンの将来の嫁は、絶対に恋だよね」

「えっ?」

「あっ、会長さんか!」

 エリザが会長という言葉を言うと、会長は口を開いて言ってくれた。

「お金なら問題はないからね。あと、エロイことも全然大丈夫なので」

 問題発言じゃねえか、おい!

「……んでもって、ダーリンは誰を嫁に選ぶの?」

「いや、僕はまだ嫁とか……」

「俺の嫁、とか言わないの?」

「いやまず、一人称『僕』ですけど?」

 まあ、恋を不良から助けようとした時、咄嗟に出た僕の一人称は『俺』だったけどな。まあ、そっちのほうが不良とも戦いやすかったし、何せ『僕』とか言ってると、あれ以上にいじめられていただろう。だから、あの件に関してはあれで正解だったに違いない。……ああ、僕はそう思う。

「ダーリン」

「ん?」

「……もうすぐ15時だよ」

「……だな」

 僕はそう言うと、エリザの方を叩いた。軽く、あくまで軽くな。痛くしちゃうと意味ないし。励ましじゃないしな、そこまでくると。

「恋」

「ん?」

「……ダーリンに早く想い伝えなよ」

「いや、それは……」

「もう皆気付いてるよ?」

「……」

 エリザがそう言うと、恋は顔を真っ赤にして顔を下に向け、俯いた。

「会長さん」

「なんだね」

「バンド、成功させましょう」

「ああ。……じゃあ、その成功を祈って君のパイオツを揉もうか」

「えっ……」

 ああ。会長何してんですかね、貴方って人は……。

「バンドの成功を祈って、もみもみー」

「私もさっきの恨みだああああああっ!」

「んじゃ僕も……」

 僕も加わろうとしたのだが、時既に遅し。……定員オーバーらしいです。脇腹こちょこちょも許されないとか、なんていう酷さ。僕の扱いはそんなんだったのか。

「……やっ、んっ、こらあっ……だあ、りっ、助け……んひっ!」

「ここか!? ここがいいのか!?」

「なっ、ちがいまっ……、ひゃぁうっ!?」

 やばいな。何だろう。……新しい何かに目覚めそうだ。そう、目の前の彼女らの戯れているシーンが、如何にも『百合』であり、僕の隠していた感情、つまり『百合属性』が今、ここで花開いた感じだ。

 一応イブリースを召喚しておき、僕は彼女たちが戯れなくなるまで待ったのだが、相当時間が必要らしい。……恋は、さっき僕と会長にされた恨みを、『何故か』エリザに向け、会長は自身の心のなかにある『サディストハート』が覚醒し、結局エリザにそれが向けられてしまっている感じだ。……そう。二人共、エリザをS心で虐めているのだ。まあ、僕もここに加わりたいのだけれど、もうすぐ3時だしな。

「……会長!」

「ん?」

「午後3時、20秒前ですよ」

「おお、悪い悪い。……んじゃ皆、やってやろうじゃねえか!」

 会長がそう、元気の良い、威勢のよい声を上げ、僕らに向かってそう言った。僕も、恋も、そしてちょっと身体をビクビクさせているエリザも、皆会長の言葉に異論はなく、皆右手を上げ、「おーっ!」と、言った。

 そして、ここから僕らのバンドの演奏が、幕を開けるのだ。

「んじゃ、咲希」

「何でしょうか、嬢」

 突如、咲希さんが体育館の放送室のドアを開け、階段を降りて、こちらの方に向かってきた。

「打ち込み担当、しっかりね」

「分かりました、嬢」

 そう言うと、咲希さんは、またドアの向こうに消えていった。

「……さあ、始まりはあと数秒だ」

「カウントダウンは、僕らでしましょうか?」

「だな」

 そういう事にまとまり、カウントダウンが始まる。

「5」

「4」

「3」

「2」

「1……」


「――僕らの」

「――私達の」

「――バンドストーリーの、エンディングを、見るためにっ!」


 痛い言葉だけど、そんな言葉でさえも気にしない、そういう心構えの下で、このバンドのエンディングが今、始まった。








「やり……きった」

 終わった後、僕も、会長も、恋も、エリザも、イブリースも、そして咲希さんも、皆笑顔だった。ただひとつ、問題が有るとすれば、僕がエリザと一緒のステージに経っていたことへのクレームが出たことくらいだ。……まあ、そのクレームが何処から出たかは普通に想像がつくだろう。そう、ESS、エリザ親衛隊だ。

「……いやあ、ちょっと音外れちゃったよ」

「バカですね、会長」

「なっ、ふざけるな」

「ふざけてなんか無いですよーだ」

「ちっ」

「まあ、あんまり機嫌悪くしないでください」

「誰のせいだ、誰の!」

「……それじゃあ、打ち上げしようか」

「私の家で?」

「……許してくれるかな?」

「私のお父様は酷い人じゃないし、大丈夫でしょ」

「んじゃ、そういうことで」

「はーい。……じゃあ、咲希。スケジュール調整よろしくね」

「はいはい」

 休みの時間にバンドの演奏を聞かせるという、ある意味無謀な企画だったけど、皆意外と聞いてくれた。それだけで僕も会長も、当然エリザも恋も、イブリースも皆、皆が笑顔になってた。


 ***


 それから、ミスターコンテストを開催し、真のイケメンを決めた後、閉式を行い、会長から代表者の立場から文化祭についての感想をもらった。そして、今年の文化祭は幕を閉じた。最後辺り、変に加速してしまったのは少々申し訳ないのだけど、まあ、すまない。

 片付けを終え、僕らが皆、会長の家につく頃には、とっくに夜の10時を回っていた。徹夜をしたから、皆疲れていた。寝たかった。……まあでも、何故明日が学校なのか、本当に苛立ちが隠せないのだが、僕らが苛立ったところでどうにもならないし、会長に言ってもらわないとな。

 まあ、今日はもう疲れてるわけで、風呂入って、飯食って、寝ればもう夜の12時前なんだろうけどね。

 

「大大、大好きだぞ、ボクのバカ旦那様……」


 そんな声が僕が寝る時に耳元で聞こえていたのを、僕は朝起きた時、覚えていた。始めは寝ている時、何か刷り込まれたのかと思ったのだが、この中にしそうな人は一人しかおらず、まあ聞くのも面倒だし、こんな時間から付き合わされるのも嫌だろうと、僕はそういう結論に達し、聞くのをやめた。


 でも、ちゃんと僕の耳元でその声、その言葉は聞こえていたが。

 時間がないので、時間が開いたら、もし時間が開いたら、本番で歌った曲の歌詞を書こうと思います。……ちくしょー、凛君青春しやがってー!


 あと10日で、運命の日、12月12日がやってくる訳ですが、どうしたらいいものか。……まあ、頑張ります!

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