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Future  作者: 浅咲夏茶
6th Chapter;Band members and culture festival.
90/127

Target:My band members. ~Second date with Rin/episode89

 休憩時間も終わり、吹奏楽部と合唱部の演奏が始める予定時刻、8時15分が回ってきた。

「では、部活別発表に移ります。まずは、吹奏楽部と合唱部による、アニソンメドレーです。では、お願いします」

 アニソンメドレーなんて、軽音楽部がやるべきだと思いながら、この学校に軽音楽部がないことをふと思い出す。まあ、アニソンを金管楽器とか、合唱でどう演出するのか僕は結構気になった。一応、ヲタクだからね。

「さてと。……皆さん、おはようございます。合唱部です」

「吹奏楽部です」

 恐らく、両部の部長である二人の女子生徒。合唱部の生徒がマイクを握り、隣の吹奏楽部の部長はサックスを持っていた。後者の部長は、何かこと有るたびにサックスの音色を奏でてくれた。

「この度、アニソンメドレーにしたわけですが、一応、2014年秋のアニソンも入っています。年代は、1994年から2014年まで、計20年のアニソンメドレーになります。アレンジ入りです。……まあ、この部長のソロが来るかも知れません。……というわけで、アニソンメドレー、スタート!」

 そうしてアニソンメドレーが始まった。吹奏楽部なので、ギターとかはない。でも、ドラムとかがあるので、何とかそれで原曲を演出する所は演出し、あとは合唱部が『合唱』じゃなくて、まるでアニメの中の声優さんの声みたいにして歌ったり。……凄いわ、ホント。


 体育館は暗く、まるでライブのような感じだった。何せ、外からの光を全て遮断しているんだからな。……だから、いっその事こんな早い時間じゃなくて、もっと遅い時間帯にライブすべきなんだよ、全く。


 ***


 演奏曲は軽く20を超えていた。……すげえわ。僕らのバンドみたいな即席よりすげえよ、マジで。流石吹奏楽部、流石合唱部、そんな感じだ。

「吹奏楽部、合唱部の皆さん、ありがとうございました」

 午前8時55分。ライブは終わった。メドレーと言っても、40分も弾いていられるのは凄いと思ったし、どんだけ練習したんだ、って風にも思った。

「それでは、ここからは各部のお店の番宣タイムです」

 吹奏楽部と合唱部がステージから下りた後、会長がすぐにそう言って話を進めた。……ここまで恋さん空気ですが、なにか喋らせるべきなのかな?

 僕はマイクを切り、恋に聞いてみた。

「な、なあ恋。何か喋らないのか?」

「そ、そんなこと言われても……」

「つか、お前って何かの審査委員長とか、そういう系?」

「……まあその、ミスコンの審査委員長だけど」

「お前がかよ?」

「わ、悪いな」

「だから執事服着て紛らわしてるんだな。ふーん」

「……あと、きっともうエリザは着替えたと思うんだけど、凛はいつ着替え……」

「僕は着替える必要がないからね」

「そっか。……んじゃ、会長さん」

 恋は会長に話しを持ちかけた。

「ん?」

「いつ着替えるんですか?」

「次の休憩の時に着替えるよ。……あ、もうすぐ司会来るから」

「す、すいません」

 やっぱり忙しいもんだ、ホント。


 ***


 それから番宣が終わり、続けてクラス別発表が始まった。と言っても、メイド喫茶だとか、執事喫茶だとかをしているクラスが多く、ほとんどのクラスは発表なんかしなかった。……まあ、1年と2年はここで発表したのだが、驚いたのは『アニメを作っていた』ということだった。

 脚本はなんと1学年の学年委員長。監督は2学年の学年委員長。……本気だ。本気すぎる。本気すぎて3年が『バカやってる』としか思えなくなっちゃう。

 そう思った時、ステージの方から英洙の声が聞こえてきた。

「以上、如何だったでしょうか。この作品は、美術部員と漫画研究同好会、パソコン部員等、様々な方々の協力の下、制作されています。また、この作品に登場する声の出演者は、1学年、2学年共に、それぞれオーディションを行って決めています。製作期間はおよそ2ヶ月程度ですが、この30分程度の作品に、これほどまでに色々と協力してくれた皆さんに、どうぞ拍手を」

 そりゃ拍手するしかねえだろ、そんな30分なんて言う、普通のアニメ一本程度の長さのやつを2ヶ月で作り上げたんだからな。

「また、本作品の監修を務めてくださった、アニメーション制作会社の方に、来て頂いているので、ご登場いただきましょう」

 いやいや、超展開すぎじゃね? ……まあ、それはいいとして、なんで学校にアニメーション制作会社の人が来てるんだ……。ま、まさか会長のマネー的な意味でなのか? ……いや、英洙は会長の秘密を知っているのか?

 当然、この時拍手喝采の言葉の通り、体育館全体に拍手が巻き起こった。

「ええ、では、このアニメーション制作に協力してくださった、石塚様からお言葉を頂きたいと思います。……では、お願いします」

「ええ、私は某アニメーション制作会社の動画検査担当のものです。最初、今そこにいる英洙君に『アニメーション制作会社の方から一言頂きたいので』という話を持ちかけられた時、非常に嬉しい以外に言葉が浮かびませんでした。

 さて、前置きは以上にしておきまして、私が彼らの制作したアニメーションを見て思ったことを一言で言いますと、『無限の可能性を秘めているので、是非とも当会社に就職して欲しい』というものであります。是非とも、アニメーターを目指している方がこの中におりましたら、是非とも後ででいいですので、働きに来てください。あと3ヶ月後、新社員の就職を待っています」

 そう言うと、石塚さんは一礼をし、左の方向に向かって歩いて行った。

「因みに、このアニメーション作品は、古典部の協力で小説化され、美術部の協力で漫画化され、ゲーム研究同好会の協力でゲーム化され、スイーツ同好会の協力で、作中のスイーツを本日限り、販売しています」

 英洙が右の方向を向くと、すぐさまスタンバイしていたと思われる零奈が、車のついたテーブルを出してきた。そこには、右から小説版、ゲーム版、漫画版、そして作中に登場したスイーツがあった。

「それでは、気になるお値段を発表いたします。右から税別580円、税別400円、税別1200円、税込み530円となります。また、それぞれ販売個数には限りが有りますので、お求めの方はお早めにお願いします」

 英洙がそう言い、質問へと移った。

「作品への質問等有りましたらここでお願いします。あと、販売売上全額は、被災地支援、及び障害者の方への寄付金に変えさせていただきます」

 あれ。なんて真面目な話なんだろ……。マジで今年の3年何してんだろ。

 僕がそう思っていた時、会長から質問の声が上がった。

「小説版には絵は入っていますか?」

「……そうですね、ラノベレーベル風には入っていますし、一般文庫風には入っていません。ああ勿論、萌え絵だ。男子諸君。アニメ版よりラノベ版のほうが可愛くなってる……」

 英洙がそう言った途端、会場のキモオタたちから、『買う!』『買わせていただきます!』『●●たんかあいくなるの!?』等の声が上がった。

「是非皆さん、お買い求めください。販売は、この後の休憩時間よりとさせて頂きます。販売箇所は、玄関前と体育館通路、食堂前廊下となります」

 英洙がそう言葉を付け加えた後、キモオタ達は忽ち声を上げ、

「おっし、お前ら行くっぞおおおおっ!」

「おっす!」

 という声をあげていた。

 まあ、こちら司会側の会長も、「これは買わないとダメだな」と、コクリコクリと首を何度も上下に振っており、「駄目だこいつ早く何とかしないと」と思えるような感じになってしまっていた。

「では、僕からは以上です。ご視聴ありがとうございました。……あと、このアニメは本校のホームページ、及び動画サイトに投稿されますので、見たくなった方は是非、動画サイト等をご利用ください」

 さり気なくそうやってサイトの宣伝をする英洙さんマジパネエっす、って思っちゃうわ、ホント。……おっと、いけないいけない。会長がちゃんと仕事してくれないので、僕が原稿読まないと行けないじゃないか。

「ええ、それでは、1、2年生の発表は以上となります。3年生の出し物は殆ど『執事喫茶』とか『メイド喫茶』、またお化け屋敷等となります。この後、10時より休憩を1時間半程度取ることになりましたので、是非その間に立ち寄ってください。また、のど自慢大会は11時半頃よりとしますが、その時間になりましたら放送を入れますので、それまで自由に、出し物を見たりするなりしていただければと思います。それでは、休憩とします」

 会長が仕事をしてくれないのにはちょっと腹がたったけど、まあいいか。のど自慢大会の原稿を全部会長に任せてやればいいんだからな。

「ふっ、残念だったな」

「え?」

「私はのど自慢大会の『審査委員長』なんだ。音楽の先生と同じくな」

「マジっすか」

「ああ。あともう一人は恋だ。だから、その間エリザが恋の席に座ることになるし、私の席には亡霊が座ることになる」

「変なこと言わないでください、会長」

「悪かったな。まあ、そういうことだ。取り敢えず、私と恋はこれから仕事があるから、凛君はエリザと一緒に色々回ってくるんだな。はは」

 結局押し付けかよ。……全く。まあでも、今更公開してなんだって話だよな、正直。何しろ、放送部、放送委員会から原稿依頼を受けた時点で断っておけばこんな事にはならなかっただろうし。……って、零奈と英洙って、司会しないのか? ――凄い今更だけどさ。

「ダーリンっ!」

「ちょっ……」

 背後からエリザに抱きつかれた。唐突すぎるだろ、全く。

「ねえねえ」

「ん? ……って、その格好」

「どう? 似合ってるかな?」

「にに、似合ってんじゃねえの……」

 前に見たこと有るだろ、エリザのメイド服なんて。……しかし、何か前より可愛くなってね? 何でだろ。……もしかして、露出度が高いからか?

「どうしたの、そんなジロジロ……」

「な、何でもねえよ。……で、恋と会長は審査委員長するらしいから『回れない』とか言ってるんだけど、僕らだけ回ってていいのかな?」

「いいんじゃないの?」

「そっか。……んじゃ、回るかエリザ」

「おうっ!」

「……んで、何処行く気なんだ?」

「そーだねー……。ここは無難にお化け屋敷に行こう!」

「それ無難って言えるのかよ……」

「言える言える!」

 結構テンション高いな、こいつ。……まあ、それがエリザか。最も、一番積極的に近づいて来てるのはエリザだし、積極的じゃないエリザのほうが僕は嫌いかもしれない。……ただ、それはそれでギャップ萌えとして好きになるかもしれない可能性を秘めているっていうのは事実だけどな。

「……で、ダーリン」

「ん?」

「デートの最中だけ、『凛』って呼んでいい?」

「いや、そりゃお前の自由だけどさ、『凛』っていうのより『ダーリン』って言ってるほうが恥ずかしいんじゃないの?」

「私は逆かな~」

「マジかよ」

「マジです」

「んじゃ……まあ、お前の好きにしてくれ」

「じゃあ、り、凛っ! ……あ、やっぱダーリンで」

「恥ずかしかったんだな」

「うっさい」

 そう言いつつも、エリザは僕に抱きついてきた。昨日の恋が抱きついてきた右腕の方とは逆のほう、左腕の方にな。

「むぅ、女の子のニオイがするんですけど……」

「まあ、昨日半日恋とデートしたし……」

「そうだよね。……むう、私のほうが恋よりデートの時間短いじゃん……」

「まあ、ドンマイ」

 僕は前にエリザとデートしたと思うんだけどな、今回以外にも。……って、これデートなの? ……まあ、広義にはデートって捉えてもいいかも知れないか。エリザは僕の腕に抱きついているし、めっちゃ笑顔だし、メイド服着てるし、何故かいい匂いするし……まあ、そんなことを考えちゃアウトなんだけどね。色々と。

 そんなことを考えつつ、僕はエリザに抱きつかれながらお化け屋敷に向かった。


 ***


 まあ、僕に向けられている視線は非常に痛かった。中にはESSが販売していると思われるエリザのファイルだとかを持っている生徒も居た。また、僕がエリザに抱きつかれているのを見て「ちっ」だとか、「リア充氏ね」だとか、そういう事を言っている奴らも居た。

「ねえ」

「ん?」

「私とダーリンって、リア充に見えるのかな?」

「見えるんじゃねえの?」

「……リア充って、恋人って意味だよね?」

「『恋人がいるやつ』って感じかな、補足すると」

「じゃ、じゃあその、今のダーリンと私は『恋人』……?」

「ではないんじゃないかな。……前にも言ったけど、お前はワンランク上の幼馴染、みたいな感じだから。……でも、嫌いじゃねえよ。嫌いだったらこんなことしてないし」

「そっか」

「ああ。……つうわけで、行くぞ」

「ひゃっ!」

「あんまり変な声出すなよ。ESSに目をつけられてんだから」

「むう。ダーリンを困らせるなんて酷いやつだなあ」

 エリザがそう言うと、ESSのメンバーであると見られた近くの女がこちらをギロッと見たのだが、すぐにふいっと目線を違う方向に向けた。

「……なあ、エリザ」

「ん?」

「エリザは、ESSにファイル作ってもらうの……嫌か?」

「嫌じゃないよ。というか、私が怒れない事ダーリン知ってるくせに」

「まあそうだけど……」

「つまり、そういうことなんだよ。……なんて言うか、嫌だったしても、私は強く言えないかなっていうか。……だから、強く言えるダーリンは好き」

「なるほど」

「軽くさらっと受け流すな」

「はいはい。……じゃ、お化け屋敷入るぞ」

 僕はエリザの手を強く引く。

「ひゃあっ!」

 途端にエリザが僕の身体にくっついてくる。と言っても、昨日の恋とのデートのような、ああいう照れ照れした心情の変化は僕にはなかった。でも、エリザを嫌っているわけでもないと思うし、僕はエリザが一番接しやすい異性だと思う。まあ、エリザ自身が過度なアプローチをしてきたりするおかげで、嫌々ながらしているからだろ、と思われるかもしれないが現実はそういうわけでもなく、嫌じゃないのが現状だ。僕はエリザに迫られることは嫌いじゃない。

 だってさ、あんなとでかい胸を押し付けられて、胸が高鳴らない男なんていないだろ? Gカップだぞ? 恋の上を行く、Gカップだぞ?

「いやらしい目で見るな」

「えっ」

「まあダーリンからならいいけどね。へへ」

 少しエリザはニヤけていたが、それもそれで可愛いしいっか。


 ***


「ひゃあっ!」

「やあっ!」

「らめっ、そこ、やらっ……あっ……」

「ひゃうっ!」

 あの、お化けの役をしている人、何してんですかね、うちの幼馴染に。エリザが悲鳴を上げる度に僕の腕に爆乳のおっぱいが当たるんですけど……。鼻血でそうなくらい嬉しいんですけど、やめてもらえますかね……。

「どうだった?」

 僕はコンニャクが上から落ちてきただけで、それ以外は特に何もなかったので、冷静になってエリザにそう聞いた。エリザは、太ももだとか、脇腹だとか、上から落ちてきたコンニャクが谷間の間に入ったままになるなど、色々とやばい状況になっていた。

「……コンニャクがそんなところに落ちるなんて凄いな、おい」

「――食べる?」

「意味深なこと言うなバカ。……取るぞ」

「……えっち」

「いっつも僕と寝てる時点で……」

 忘れていた。こいつはエリザ、そしてエリザ親衛隊の人数は軽く100を超えていたはずだ。……となれば、僕がそういう事を言えば、後々呼び出しを食らって軽くリンチされかねない。……そんな民度低い高校じゃないけどな、この高校は。

「ああもう、コンニャク取るぞっ!」

「ひゃあんっ!」

 またエロい声出しやがって。……けしからん。実にけしからん。

「ああもう、何でお前はそんな声ばっか出すんだ全く! ……ほら、次はメイド喫茶行くぞ。お前メイド服着てるんだし、お似合いじゃないのか」

「わ、私とダーリンのカップリングのほうが、お、お似合い……」

「ばっ……」

 僕も照れてしまった。エリザは今まで見たこと無いくらい顔を紅潮させ、顔を俯かせたままにしていた。そして、更に恥ずかしくなったようで、その顔を僕の腕に押し付け、それと同時に爆乳Gカップの胸も押し付けられ、変な感情との戦いが始まった。さっきは変な感情無かったのに、意識しだしたせいでもう……!

「い、行くぞ!」

 ふと僕は近くの教室の時計を見て、現在時刻を確かめた。こちとら司会の仕事があるわけで、遅れちゃマズイわけだ。だから、時間にルーズで居るのはダメなのである。

 午前10時25分。体育館に戻らなくちゃいけない時刻まで、あと65分。限られた時間の中で、僕はエリザを連れてお化け屋敷を出て、次の目的地であるメイド喫茶に向かった。


 ***


「お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様」

 アキバ系のメイドさんがいっぱいいる。ワンサカワンサカいる。選り取り見取り、こんな一杯の女を抱けたなら、さぞかし満足していられるだろう。

「……エロい目で見てる」

「えっ」

「メイド喫茶だからって調子のりすぎだバカダーリン」

「そうか?」

「そうだよ!」

「……で、お前は何を頼むの?」

「えと、私達って、お昼ご飯摂る時間……」

「ああ、確か日程では、この後11時半まで午前の大休憩だろ。んで、午後の大休憩っつうか昼休みが13時から13時半まである。んで、そっからミスコンがあって、15時から僕らの演奏で休憩を挟み、16時40分までミスターコンテスト、その後閉式、そして片付けだ。……まあ、後夜祭有るらしいけど、お前は誰かと出るのか?」

「出ないよ」

「そうか」

「うん。……だって、ダーリンは後夜祭出ないんでしょ?」

「相手居ないし、片付けで忙しいし。……あんなリア充どもの祭りに付き合ってられっかって話だ」

「私達リア充じゃないの?」

「……面倒くさい話にしないでもらえるかな、エリザ」

「わ、ご、ごめ……」

「別に謝らなくてもいいよ。……さてと。取り敢えず注文……」

 僕は上手く(?)会話を逸し、テーブルに置かれていたメニュー一覧が書かれた紙を見て、何を注文するか選んだ。

 丁度僕が座っている席にメイドさんが水を置きにきてくれた……って、この人咲希さんじゃ……。

「あの、もしかして咲希さ……」

「ああ、私は咲希だ。まあその、嬢に頼まれた結果だ」

「マジっすか」

「ああ。……それじゃ、注文はお決まりでしょうか?」

「ああ、んじゃあ……オムライスを」

「定番ですね。分かりました。……呪文サービスは如何なさいますか?」

「ケチャップ系のアレか」

「そうですね。まあ、凛様が一体何を想像なさっているのか分からないので『そう』としかいえないのですが」

「まあ、その、サービス有りでオムライスを、エリザの分も含めて二つお願いします」

「かしこまりました、ご主人様。……また、カップルサービスとして、ワンコップ・ツーストローズキャンペーンを実施中なんですが……」

「なにそれ?」

「言葉が指しているのと同じ意味です。一つのコップと二つのストローを提供させているキャンペーンで……」

 僕が「お、おう……」と、頷きながら聞いていたのだが、エリザはすぐに「お、お願いしますっ!」と、言った。故に、このキャンペーンが適用されることになった。


 

 それから数分経って、オムライスが提供された。何気にふわとろオムライスなんですけが、これは……。いや、ちょっと、何かエリザさんの目がマジになってませんか? ……あの、何でそんなにオムライスにギロリって漢字の視線向けてんですか?

「ねえ、ダーリン」

「ん?」

「私がケチャッ……」

 エリザが言いたそうにしていたが、店員のメイドはそれを断ち、自分のやりたいようにしてくれた。といっても、別に僕に害を与えるようなことではなかった。

「……では、ふわとろオムライスを崩させていただきますね」

 メイドは、僕のスプーンで僕のオムライスのふわとろ卵を崩した。続けてエリザの方もしようとしたが、エリザはそれを拒み、「じ、自分でやるからケチャップだけ……」と言い、自分でオムライスの上に乗っかっているふわとろ卵を崩した。

「全くもう、妬くなって」

「やっ、妬いてねえし……」

「そう言っても無駄だぞ。……んじゃ、メイドさん、お願いします」

「か、かしこまりました。……因みに、何の文字がいいですか?」

「『大好き』とかでも書いてください」

 僕がそうメイドに告げた瞬間、エリザが更にムスッとしてしまった。まあ、僕もエリザのそういう反応を狙ったんだけどね。……恋だと、こういう時どうしてもツンとした反応を示すし、会長なら恐らく何のお構いも無しに話を切り出したり、もしくはしょんぼりしてしまうかもしれない。……まあ、表情豊かなエリザにできることをもっとして欲しかったのである。

「えと、お嬢様はどうなされますか?」

「ダーリンと、お、同じで……」

「分かりました。では、書かせて頂きます」

 メイドはまず、最初にエリザの方からケチャップで文字を書いた後、僕のにも書いてくれた。

「それでは、させて頂きます……。

 おっ、美味しくなーれっ、もっ、萌え萌え~っ!」

 メイドさんが顔をめちゃくちゃ紅潮させながらそういった。……おい、このクラスの学級委員長は何をしているんだ。素晴らしいじゃないか。恥ずかしがっている女の子の顔なんて、なんて素晴らしい……って、また妬いてるし。

「ど、どうぞお召し上がりください」

「はーい」

 僕は結構機嫌が良かったんだが、エリザは全然機嫌が良くないらしい。それもそうか。妬いてるもんな。……でも、これだけムスッとしてる時点で、怒れるじゃないか。……あ、もしかして、エリザが言っているのは『感情』じゃなくて、口で言えないとかそういうことなのかな?

 そんなことを始めは考えたのだが、食べ進めるに連れてオムライスの虜になってしまい、そんなこと考える暇もなくなってしまった。


 ***


「……美味しかったか?」

「うん」

 まあ、少なくともエリザの料理よりは美味しいのは確かなんだけど、これ以上言うとエリザが傷ついてしまうから言及は避けるとして……。

「エリザも怒れるじゃん」

 忘れていた僕の考えていたことをふと思い出し、とっさにエリザに聞く。

「怒れるけど、口に出せないんだよ」

「ああ」

「……ごめんね、説明不足で」

「全然大丈夫。少し早いけど、体育館に戻ろうか、エリザ」

「う、うん……」

 エリザはまた俯いた。でも、今度は照れているわけではなかった。


 そして、僕はエリザを連れて体育館まで戻っていった。

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