Target:Rina(+Goddess and Genie)/episode08
すいません。今回は1万2000文字を超しました。
時間帯でまとめようとすると相当の時間を使うもんだということを再び痛感しました。
今回の話では、結構な某作品ネタが登場します。そして、まさかのバトル小説化してしまうという、まさしく「超展開すぎてワロタ」といえるようなことになります。
ぶっちゃけ、この話から見ている方、いや最初から見ている方でも理解しづらいかもしれませんが、ご了承願います。
付けていたヘッドホンを首に掛けて、僕は又部屋を出ようとした。
スマホの時計で朝方4時過ぎ。まだまだ夜は続く。少し肌寒い感じもする。まあ、日中があんなに暑いのに夜はなぜこんなに寒いのか疑問にも思え、「気温の変化が大きすぎてワロタ」と2ちゃんねるにスレッドを立てておいた。スマホからそのスレッドの様子を僕は見ていた。
僕は、トイレへと向かった。徹夜をしていると、何故か尿意が湧いてくる。普通なら寝ている時間帯だからなのだろうか。毎時間毎時間行きたくなってくる。何かに夢中になっていれば湧いてこないのだが、夢中になっていないと湧いてきてしまうのだ。
用を足し部屋に戻ろうとした時、僕はリビングに有る大きな窓に何か光っているものを捉えた。それは人だった。その人は、僕の視線を感じたのか、こちらへ近づいてきた。
リビングのテーブルの上にヘッドホンを置いた。僕は近づいてくるその人が怖くてたまらなかった。ここで自分がこの今僕に近づいてきている人に接触するか、隠れるか。一か八かのルート決断だ。
「……接触ルートでいこう。死にはしないさ」
僕は、家の玄関のドアの二重ロックの鍵を解除し、恋と水掛けをした家の庭に出た。「うわ寒っ」という印象を受けるほど外は寒かった。現在の気温がどのぐらいなのか知りたくなってスマホを見た。なんと、神戸市の気温は今-9℃なのだという。
ありえない気温に驚愕しながらも、僕は僕に近づこうとしてきていた人に接触するため庭を駆けていった。寝ている6人には気づかれていないようだ。
「……おはようございます」
「だ、誰……ですか?」
「ボクは、貴方の通う学校の生徒会長。『里奈』と聞けば分かるだろ」
「ああ。……って、会長何でそんな姿で……」
僕の視力が悪かったからだろうか。会長は表から見るとショートの髪型で、後ろのほうで髪を団子みたいに結んでいた。会長は何故か魔法少女姿のコスプレをしていた。へんてこステッキとか、魔法少女モノでよく登場するマスコット的なキャラクター、またそれを逆手に取ったキャラクターとか、そういうのは回りにいなかった。僕の家の屋根とかに居るのか、と思ったりもしたが上がるのが嫌なので確かめること、それを考えることをやめた。
「なんで、と言われても。今日夏みたいに暑かったでしょ。ボクも今日は、生徒に『YシャツでOK』と言ったんだ。ああ、今日君は学校に来ていないか」
「はい。今日はちょっと色々とありまして」
「なるほどね。でも今日は本当に暑かったね。あ、昨日か。でも君。こんな時間から起きているなんてあれか? 徹夜か?」
「なんで分かってるんですか。はい、そうですよ。徹夜です」
「バカだね。もう雨は止んでいるというのに」
「そうですね」
今頃だが、もう雨は止んでいた。しかし寒い。寒いのは本当に困る。
「で、ボクがこんな時間に君に会いに来た理由なんだが……。君、ボクと契約して魔法少女になって欲しいんだ。……いいかい?」
「会長、その台詞の『ボク』って部分、『僕』に直したら大変なことになりますよ」
「ああ。それはありえるね。各方面から色々言われそうだ」
「そうですよ。てか、なんで魔法少女なんですか。僕男ですよ」
「いや、君は実に素晴らしい。女装して魔法少女になっても問題はないよ」
「バカじゃないですか。それ、女物の下着履いて、女物の衣服着て、カツラ被って。パンチラとか起きたら大問題でしょ。男のパンチラとか見たい人いないですから」
「全く。君は自分自身の『素質』を分かっていないだろう」
「てか、会長こそなんで『魔法少女』なんですか」
「ボクは最近勢力を拡大している魔族達を倒しているんだ。結構それがハードでな。是非とも君にも手伝っていただきたいと思ったんだが無理か?」
「無理ですよ! 女物の服なんかたまったもんじゃありません!」
「いやいや。女物の服は別に着なくてもいいぞ。着るのはどっかのオンラインゲームで主人公が着た黒い服とか。それこそ、二刀流使いでもいいと思うが」
「だから所々でアニメネタ入れないでくださいよ……」
「すまないな。で、男物の服も有るということが言いたかったわけなのだがどうだ? それでもなお、魔法少年はしたくないか?」
「……分かりました。部活で言う仮入部的なもので、その作業手伝わせてもらってもいいですか?」
「ああ。全然構わないよ。てか君、高校では3年間帰宅部のくせによく言うよ」
「うるさいっ! で、でも、僕には魔力なんてものは……」
「これからその作業を始める。君は目を閉じて、そこに正座でもしていろ」
「は、はい……」
僕は目を閉じ、一度深呼吸をして気持ちを整える。目を閉じていると、他の四感が活発に働いている気がした。特に、こういう何されるかわからない状況下では、更に活発に働いている気がするものだ。
『アマテラスの神よ。この少年に魔力を授けてくれたまえ……』
「……っ!」
その時、僕の身体じゅうに凍りつくほどの冷気が走った。その後、僕の身体じゅうに熱気が。そして、今度は涼しいくらいで丁度いい風が。
「さあ凛。目を開けて、『魔力開放』と言ってみろ」
「魔力……開放!」
瞬間に全身に黒い何かが現れた。黒煙だろうか。黒いマントを身につけて髪の毛は風に吹かれてなびく。いや、炎使いなどであれば普通は赤い炎が身体のまわりに現れるものだろう。とすれば僕は一体……。
「君は『闇』と『炎』の混合属性だね。よかったな」
「それどういう……」
「混合属性なんて本当に珍しいぞ。ボクの周りでも君が初めてだ」
「ぼ、僕が……」
「ああ。早速だが、魔族攻略のトレーニングも兼ねてこれからチュートリアルを行う。チュートリアル完了で君にも悪魔を授けよう」
「なんですかその、よくあるネトゲやソーシャルゲーであるようなやつ」
「君もボクの仲間か。ネトゲソシャゲは面白いからなあ。ついつい毎日やってしまうんだよな。結果的に視力は落ち、学力は落ち。最悪だよ」
「あはは。で、チュートリアルは何処で……」
「チュートリアルは神戸港で行おうと思う。結界張れば、魔法少女や魔法少年以外から戦っている姿は見えないし。大丈夫」
「そういう問題なんですかね……」
「んじゃ手を握って。今から神戸港にテレポート!」
「は? ちょ、ま……」
少し動揺しながらだが、僕は会長に手を握られ神戸港までテレポートした。それこそ、何処かのライトノベル、それから成り立つ作品群のように、『手で触れるか触れないか』で呼び名が変わるというようなこともあるんじゃないか、つまり会長が使用したこのテレポートともう一つ触れないパターンがあるんじゃないか、と思ったりした。
***
神戸港。朝4時半。まだまだ夜は明けない。秋だしな。いくらあんなに暑い記録を作ったとしても、秋だから夏と比べて夜は長い。
「さて。そこに見えるのは神戸大橋なわけだが……」
「ここってFa●eシリーズで登場していた場所じゃんか! うわあ。すんげえ。神戸在住とはいえ、初めて来たわ……」
「まあそれは仕方ないことなのかもね。ボクらが住んでいるのは神戸って言っても山のほうだし。でも、来たことがないっていうのもどうかと……」
「まあまあそれはおいておけって。で、チュートリアルを始めたいんだが」
「はいはい。普通に飛べると思うけど、一回やってみ。高くジャンプだ」
「よし。じゃあ……」
僕は力をそこまで込めはしなかったが、ジャンプするときに強めに地面を蹴った。
「おおお」
上手いことに僕は上へ上へと昇っていった。見ていた会長は拍手してくれた。空を飛んでいるのにも時間が関わってくるらしく、何もせずに空中でじっとしていた時、僕は地上に戻された。
「上手かったな。じゃあ、次は魔力をどう使うかだ。基本的に魔力(MP)は15分に1ずつ回復する。魔族攻略し、倒した後に出るジュエルというものが有るんだが、それを使うと一気に全回復する」
「成程。その『ジュエル』っていうのは要するに『魔法石』ってことですか」
「うん。そうなんだけど、そこでまた他の作品を持ち上げるかね」
「それが僕ってもんです」
「さいですか。で、ジュエルっていうのには色々と種類がある。効果はすべて同じなんだが、属性の名前が頭につく。闇属性の魔族を倒して出たジュエルの名前は『ダークネスジュエル』というし、闇属性の魔族を倒して出たジュエルの名前は『ライトジュエル』という」
「ということは、炎属性なら『フレイムジュエル』?」
「残念。ルビージュエルだ。水属性は『サファイアジュエル』」
「へえ。他に属性とかって有るんですか?」
「ああ。あるある。ボクは『光』属性だ。君は『炎』、『闇』属性だろ。他には『水』、『草』、『鋼』、『毒』がある。計7属性だな」
「なんかそこまで多くなってくると『ポ●モン』みたいですよね」
「だからそうやってネタを持ってくんじゃない! ……さて。じゃあ、チュートリアルを始めよう。まずは、自分自身の悪魔を呼び出して共に戦うのが一般的だが……。まあ今の君では悪魔を持っていないし、使いこなせないだろうからボクがお手本を見せる」
「お願いします!」
「承知したぞ!」
そういうと、会長は左手に右手で丸い円を書いた。
「利き手とは逆の手に利き手で丸を書いて次に五芒星を書く。五芒星の5つのそれぞれの頂点は、円の外にはみ出ないように描くんだ。そうすると……」
会長の左手から白色で書かれた魔法陣が浮かび上がった。そして、その魔法陣から色々な悪魔達が飛び出してきた。
「これが、列記とした魔法少年魔法少女が悪魔を呼び出す時の方法」
「へえ。今会長が出した悪魔はそれぞれなんて言うんですか?」
「ああこいつらか。こいつらは、右から『光沢幻龍ライトドラゴン』、『超魔神メガワルキューレ』、『魔界獣バハムート』、『聖女神バルバラ』。他にも色々と悪魔は持っているが、基本的にボクはこの4体をメインに使う。あともう一匹は『神竜帝メガ・ライトドラゴンポイズン』を使うことが多いが、ボクは基本的に回復や防御をメインに使って、ドラゴン(攻撃系)はあまり使わない人間だからあんまり用がないんだ」
「全く意味がわからない……」
僕が頭を悩ませると、「まあいつかわかる日が来るよ」と会長は一言言って、もう一匹『神竜帝メガ・ライトドラゴンバズーカ』を召喚した。
「さあ。君にこの中から一体あげることにする。……訳ではない。君は闇と炎の属性の使い手だ。ボクは光属性の使い手。攻略法も属性によって異なる」
「じゃ、じゃあ闇とか炎の属性の悪魔を僕にくれれば……」
「ああ。そうする。じゃあ今から3体悪魔を出す。どれもレベルは1だ」
「1……。ということは進化とかも?」
「ああ。進化とかはあるな。とはいえ、究極進化のみだ。通常進化的なものはない。というか1回しか進化はないしな」
「成程……。ということはレベル1の悪魔どれ選んでも、最終的には一度しか進化しないから別に関係がないということですか?」
「ああ。そういう風に捉えてもらうこともできるな。じゃあ、召喚する」
魔法陣を描き、白色の魔法陣が左手に浮かび上がった後、会長は悪魔の名前を言っていた。そして、その言った名前なのだろうか。悪魔たちが召喚された。しかし、その悪魔たちは皆、会長が持っているような『神竜帝』等のドラゴン系統の悪魔たちではなく、『メガワルキューレ』や『バルハラ』のような、人型の悪魔たちだった。しかも、初見で僕が思ったことを述べていいのだとすれば一言で言う。皆可愛い。そして巨乳という。
左から、黒髪、銀髪、青髪、赤色と黒色がある髪。計4体の悪魔が召喚された。
「さあ、君はこの中から1体の悪魔を選べ。ボクは君に1体以上『あげる』ような真似はしない。『交換』ならあり得るが」
「ということは、僕がいい悪魔を貯めればこの4体は最終的に揃えられるというわけですか?」
「ああ。別にゲームではないし、図鑑だとかを揃える必要はない。大切なのは、今ボクが召喚した悪魔のうちの1体と、これから出会うであろう悪魔達としっかりとコミュニケーションを交わすこと。君だけが一方的に悪魔を支配していてはいけない。ボクらと悪魔は『同等』の権利を持つ『主従関係の有る』立場なのだ」
「よくわからないです。でも、今から僕がこの中の悪魔のどれか一つを選んでお持ち帰りしていいんですよね?」
「言い方が気に入らないが、ボクが君に悪魔を渡した時点で交渉は成立しているから、そこから先に渡しが関与することはないと思うぞ、例外を除いて」
「じゃあ、赤髪と黒髪のこの悪魔をお願いします」
「分かった。じゃあ、使ってみろ。こいつはお前と同じ属性だ。闇と炎。技だとかはレベルが上がるに連れて覚えていく。上がれば上がるほど愛情度、つまりお前とこの悪魔との関係も深くなっていく。そしてボクから一言言わせてもらう。
絶対に、この悪魔を悲しませるような真似、貶すような真似はしないで欲しい」
「分かりました、会長。この悪魔を会長だと思って育てます」
「やめい! ボクは悪魔ではないし、この悪魔もボクではないぞ!」
「いいんですよ。じゃあ、バトルについて教えて下さい」
「わかった」
僕は再び空中へ飛び立った。会長も僕の後に続いて空中へ飛び立つ。『悪魔を下さい』と会長に入ったが、まだ僕の方に受け渡されてはいない。
「じゃあ『ニュクスヘスティア』。これまで、ありがとう」
その悪魔は『ニュクスヘスティア』というそうだ。そして、会長は再び魔法陣を描き、その悪魔を白色の魔法陣の上にのせ僕に転送した。
「悪魔転送!」
僕の前に、魔法陣の上に現れた、ニュクスヘスティアと呼ばれたその悪魔は、黒い髪に月の模様のヘアピンをつけていた。そして、前髪の一部と後ろ髪の一部を赤色にしていた。右目には黒色の眼帯を付けている。
後ろに生えた黒い羽根をパタパタとしながら、左目の眼球は赤くなっていた。
「私の名前は『夜炉の女神ニュクスヘスティア』。貴方は私のご主人様ですか?」
「え、えと……」
会長はニヒヒ、と笑みを浮かばせている。そして口パクながらも「素直に『そうだよ』と答えろ」と僕にメッセージをくれた。僕は、何故か会長には言い返すことも出来ず、会長のくれたメッセージをそのままニュクスヘスティアに伝えた。
「そ、そうだよ……」
今までの反応とは全然違う反応でニュクスヘスティアは、会話のキャッチボールを返してきた。
「えへへー♪ ご主人様あ♪ 大好きですう♪ ぎゅうううっ♪」
「ちょ、お、おいニュクスヘスティア!」
「私のことは『ニュクス』とでもお呼びください! ご主人様あ♪」
今まで黒色の羽根をパタパタして、クール系のキャラか、と思われたが蓋を開ければ一瞬にしてそのキャラクター設定は崩壊。甘えん坊キャラだった。
「あの、会長これは……」
「ああ。その娘の名前には『ニュクス』と入っているでしょ? ニュクスというのはギリシア神話で『夜の女神』という意味。だから、そっち系の事に強い。でも、普段は落ち着いているよ。しかし、きっと強い味方になると思う。神話で描かれている『ニュクス』はそういう女神。ボクがニュクスを仲間にしていた時も、彼女はボクの為にガンガン戦ってくれた。時には共に泣いたことも有ったけど。とてもいい相談相手でも有った」
「そ、そうですか……。『ニュクス』ってそういう意味だったんですね……。それと、会長のエピソード結構感動モノですね」
「ありがとな。Googleで調べてこいよ、とでも言いたかったんだけど、今は時間がないからね。相手の魔族を放置しておくのも、相手の魔族が可哀想になってくるし、凛はそのニュクスと共に一度戦ってみるといいと思うよ」
「じゃあ、会長の言うとおり、戦ってみたいと思います。じゃあニュクス」
「ご主人様♪ なんですか?」
「これから魔族討伐をしようと思う。ニュクス、大丈夫か?」
「大丈夫です♪ でも強すぎて相手を怖がらせちゃうかもしれません♪」
「そんな笑顔で言われても……。なんかニュクスからはドSの感じがする」
「ドS!? 私サディストじゃありませんよ♪ まあ、ご主人様がそういう風にしてほしいのであれば、私はどんなことにでも従いますよ♪」
「いや、別に今はサディストマゾヒストとかいう問題じゃなくて、戦うとかどうこうの問題なんだ。で、大丈夫か?」
「『心配御無用、おまいらかかってこいやあ』状態です♪」
「なんだそれ。じゃあ、とにかく魔族が現れたらそいつを討伐するぞ」
「はい、ご主人様♪」
ニッコリ、と笑顔を見せた後、今度はまたクールキャラに戻り、パタパタと静かな羽根の音を聞かせてくれた。
「さあ凛君。ここからが君達の真の力をみせるところだ。もうすぐ朝型限定イベントが発生する。これから水属性の怪物魔族が神戸港に出現する。さあ、炎属性を持った君達に、水属性の悪魔は討伐できるかな?」
「会長も意外とSな考え方しますね……。まあニュクスならやってくれるでしょう」
「まあ頑張りたまえ。もうすぐ4時半だ」
神戸の海は月夜に照らされていた。波の打ち付ける音が耳の中を通る。神戸大橋の近くには若干の水溜りができていた。上空にいるから、下ではもっと大きかったんだろう。此処に来て上空に昇るまで、僕はその水溜りを見ていなかったため、その光景は新鮮だった。
4時半を回って数分した頃、神戸の港に巨大な怪物魔族が姿を表した。大きな大きなうめき声は、こちらの方まで届いてきている。そのうめき声を打ち消すかのように、会長は神戸港周辺に結界を張った。
「さあ、運命の時間だ。あの怪物は『海蛇怪獣ドラゴレヴィアタン』。あの種のオスは絶滅した。何を示すか分かるか?」
「男には目がない……と?」
「そういうわけだ。取り敢えず、お前も気をつけろ」
「あの会長。朝方に僕のうちで『魔法少女にならないか』って言ったのは……」
「うん。この為。私にも魔法少女の『妹』が欲しいなと思ったんだけれど、中々該当する妹候補が居なくて。女装して一番妹っぽくなる凛君を選んだのさ。名前も男っぽくないしね。一人称も『僕』だし」
「あの会長。それは僕を見下したりしているんですか?」
「だって男の子っぽくないもん。顔が。一人称が」
「僕を全否定されたああああああっ!」
「ドンマイっ! じゃあニュクスと一緒に頑張って討伐してね」
「そんな笑顔で言わないでくださいよ。僕のメンタルぶち壊しておいてそれはないですって……」
一方のニュクスは、未だ冷静に羽根をパタパタと震わせていた。レヴィアタンは口から炎をまき散らしている。その様はまるで、マリオシリーズのボス戦で登場するクッパのようだ。
「ニュクス。戦いの幕は切って落とされた。僕らは何としてもこの戦いに勝たなくてはならない。僕らの絆を……試そう」
「ご主人様、いいこといいますね。分かりました。一発この怪獣に食らわせますね♪ 技とかは本当に私が勝手に決めるんで、もうやめてもいい具合になったら教えて下さい」
「ああ、分かった」
「それじゃあ、私のご主人様のためにいざ一発。……サンダーブレイクッ!」
その瞬間、ピカッと雷が天空を切り裂いて、その雷が丁度神戸の港に現れた怪獣、レヴィアタンの頭にヒットし、レヴィアタンは麻痺状態に陥った。
「ナイトフィーバーッ!」
今まで炎をまき散らしていたレヴィアタンが変な踊りを始めた。あれはヲタ芸だろうか。しかし、変な踊りは神戸の港に巨大な波を立たせた。レヴィアタンの顔には自然と笑みが浮かんでいる。本当にヲタ芸みたいだ。
「最後に……物理攻撃ッ!」
ニュクスは剣を取り出し、レヴィアタンの元へ赤い炎を身にまとって向かっていった。そして、レヴィアタンの丁度腹の部分にその剣を突き刺すと、グリグリとそれを腹の奥へ奥へと差しこむようにした。しかし、レヴィアタンは討伐できなかった。
「ニュクス、こちらへ帰って来い!」
「はい、ご主人様!」
行くときよりも高速でニュクスは僕のいる方向へ飛んできて、僕に衝突した。結構速いスピードだった。だから、六甲山まで飛んでいって衝突してしまうんじゃないかと思った。が、会長が張っていた結界のお陰で、その外へは出なくてすんだ。しかし、僕は結界に衝突した影響で、背中を強く痛めてしまった。
「ご主人様、申し訳ございません!」
「いやいや大丈夫。皆最初から完璧じゃないし。じっくり身につけていけばいいさ。時間はたっぷり有る」
「ご主人様……本当にいい人……」
ニュクスが少々涙ぐんできていたので、僕はニュクスに胸を貸して、ニュクスの頭をなでてあげた。ニュクスからもいい匂いがした。悪魔といえどニュクスも『女神』。つまり女なのだと、僕は改めて実感した。
「さて。もう一発サンダーブレイク食らわせれば、レヴィアタンは討伐できそうだが、大丈夫か?」
「む、無理です……。ナイトフィーバー使っちゃったので、もう一回サンダーブレイク使うためには少々時間が必要です……」
「そうか……」
そして僕の後ろのほうから声がして向くと、会長が居た。会長は、今の一連の会話について会話に割り込んできて、MP、AP、BP、HP、ランク、レベル、超魔法、合体について教えてくれた。
MPについては、最初のほうで触れたが、魔法を使うときに消費するエネルギー。これが今の『時間が必要』ということに関わるらしい。
APは『アタックポイント』の略称だという。これがないと、アタックができなくなり、攻撃おあずけ状態になるそうで、「BPだけで耐えれない相手と戦う時は注意が必要だ」とか会長は言っていた。
そしてBP。これは『ブロックポイント』。これがないと、ブロックできないという。AP同様、バトルの重要な鍵を握るとか。ちなみに、BPがあることで、相手の攻撃をかわしたり、相手の攻撃で減らされるHPを少しでも減らしたり、防御系の技などを使うときにこれが減るそうだ。
HPは言わずと知れた『ヒットポイント』の略称。自分の残りHP、最大HPなどを表し、ダメージなどもここで数となって表される。
ちなみに、AP、BP、HPの3つは、パーセント表示もされるらしい。それを確認するには悪魔にそれぞれ聞く必要があるそうだ。
ランクは『バトルランク』の略称で、その魔法少女、魔法少年がどれくらい強いのかを順位などで表す。
レベルは悪魔版『バトルランク』。その悪魔がどれだけ強いか順位などで表す。
そして、超魔法は先ほどの『サンダーブレイク』が相当するそうで、相当なMP、APを消費するものの、相当な力で相手に攻撃できるそうだ。
合体は、一心同体となって複数の悪魔、又は魔法少女、魔法少年と力を合わせるらしい。一つでも違う行動をとれば、瞬間合体は解除され、もとに戻されてしまうそうだ。だから、合体には相当の絆が居るんだとか。会長もやったことはあるそうだが、成長にこぎつけた当てがないそう。
そして、ニュクスが困っているのを見て、会長は見ているのが辛くなったらしく、「……ったく。手伝ってやんよ」と、ある意味ツンデレ的なことをした上で、その目は戦おうとする目だった。
「一発食らわせてやりましょうかね、メガワルキューレ!」
魔法陣を描き、メガワルキューレを呼び出す。白色の光りに包まれて召喚されたメガワルキューレは、ニュクスとは又異なる悪魔の感じがした。
「さあメガワルキューレ。あのレヴィアタンという悪魔に一発食らわせるんだな。じゃあ最強の技を一発食らわせろ。メガワルキューレ!」
「はい、マスター。『ゴッドデスライトブレイク』……ッ!」
膨大な光がレヴィアタンを包み込む。そして、その光はチカチカと目を攻撃する。視力を落としそうなくらいだ。しかし、この攻撃は相当なもので、レヴィアタンは一気に破壊され、討伐は成功となった。
結局、僕とニュクス『だけ』ではまだまだ倒せる相手じゃないということがわかった。まあ、どんなソーシャルゲーでもネトゲでも、人と協力して戦っていくのがデフォというか、なんというか。やっぱり人は一人では生きていけない生き物なんだと、つくづく僕は思うものだ。
「さあ。レヴィアタンは討伐できた。これが、サファイアジュエルだ。そしてこっちがルビージュエル。わかったと思うけど、複合属性は二つジュエルが貰える。だから、もし凛君が魔族で討伐されたら、ダークネスジュエルと、ルビージュエルだね。ボクの場合は『ブライトネスジュエル』だね」
「へえ。光属性のジュエルは『ブライトネス』なんだ」
「『輝き』だからね。光属性は美しいからその名前がついたっていう噂」
「へえ。じゃあ、他の『毒』とか『鋼』とか『草』とかのジュエル名聞いてないんですが、一体それはそれぞれどういう呼び名になるんですか?」
「草属性は『エメラルドジュエル』。鋼属性は『メタリックジュエル』。『メタルジュエル』とも呼ばれるね。毒属性は『ポイズンジュエル』だね。そして、もう一つが『オールジュエル』。別名『レインボージュエル』。凛君が今日レヴィアタン討伐に『初めて』成功したから、このジュエルが与えられた。HP回復、MP回復とかは、『メタリックジュエル』などを使用した時、どれか一つしか回復しない。しかし、オールジュエルはMP、HP、AP、BPの全てを回復してくれる。そして、オールジュエルを使うと、1つ1回でガチャも出来る。もちろん、ガチャをし終わればMPとかは全部回復する。凄いよね、本当」
「それパズドラで言う『魔法石』より価値高いじゃないですか!」
「ここでもまたそのネタを使うのか!」
「じゃあ、そのジュエル下さい!」
「はいよ」
会長は、自身の左手の中にそのオールジュエルを出して、そのオールジュエルを僕に見せた。そして、そのオールジュエルの輝きに僕は驚嘆した。
「輝きはブライトネスの方が最高だけど、オールにも素晴らしい魅力があるよね。それは私も感じている。でも、個人的にはやっぱりブライトネスっしょ」
「いや、個人的には一番響きのいい『メタリックジュエル』がいいと思う」
「そうか。じゃ、ほらよ。これやんよ」
僕は会長からオールジュエルを貰った。相当な効果を持つジュエル。このジュエルは、今みたいに初めて現れた魔族を倒した時だけ。このことが一体どれほど入手困難なのか、僕はまだ知らない。
受け取ったオールジュエルを、会長から指示を受けたとおりにガチャに使った。すると、悪魔が現れた。青髪の悪魔。さっき会長が出した4体のうちの一体と同じの悪魔だ。水を身にまとったその悪魔は、僕の方に近づいてきて、僕の首の近くに剣を近づかせた。
「ちょ……」
「殺します」
「待ちなさい! 貴方は誰ですか? そして、私のご主人様に手を出さないで下さい。これ以上手を出した場合、容赦しません」
「私の名前は『生命精霊ライフウンディーネ』。水の精霊悪魔」
「そう。私は『夜炉の女神ニュクスヘスティア』。夜の女神であり炉の女神」
「女神ごときに精霊の力が止められるとでも?」
「精霊ごときが何調子のってんですかねえ? 私は女神です。負けるはずが有りません」
「まあまあ。ニュクスもウンディーネも、そこら辺で……」
「殺すというのは少々キツかったでしょうか。私は元々貴方の主人である凛様を殺すつもりは有りません。それこそ、彼が私を引き当てましたからね」
「そ、そうだ。無駄な争いはやめろ。せっかく仲間が増えたんだから」
「しかし、私はマスターである凛様が怒られたので、反省するため水に還ります」
「ちょ……。おいバカやめろ!」
会長は、アハハ、と笑っていた。他人事かよ、と思えるのだが、これもこれで愛情なのだろうか。そこが気になるものだ。
溜息をつく僕を見て、会長は僕に近づいてきた。
「うん。ウンディーネは、ドイツ出身でね。噂では、『叱ると水に還る』といわれているのさ。まあ、それが発動するのは彼女との結婚後らしいけど」
「は、はあ……。ガチャして折角当てた悪魔が自ら水に還るなんて……」
「そうでしょう。だから、ウンディーネとは結構コミュニケーション取るの大変だよ? ボクもコミュニケーションはボクの持っているウンディーネと通わせているつもりさ。けれど、そうするまでにも時間は掛かったね」
「へえ」
「ニュクスとコミュニケーションを交わすのは簡単だ。しかし、ウンディーネに関しては本当に難しい。それこそ、悪魔達はボクらを上手く使うこともあるからね」
「そうなんですか」
「そうだよ。でも、本当に信頼していればそんなこと気にする必要もないけどね。さ、君は魔法陣にその悪魔たちを戻してやれ」
「ど、どうやって……」
「こうするんだよ」
会長は、僕に手本を見せてくれた。
『戻れ、お前等!』
魔法陣を描き、そこに会長の悪魔たちが集まってきて、徐々に光に飲み込まれていった。それを見て僕も真似する。
『戻れ、ニュクス、ウンディーネ!』
魔法陣の上に二人共戻った。僕の場合は、黒色の魔法陣で、黒色のまるで煙のようなものの中に包まれていった。
「どうよ、魔法少年は」
「意外と楽しいかもしれませんね」
「そうかそうか。別にこれは課金とかする必要もないしな。ゲームじゃないし。魔族討伐を一緒にやっていきたいんだが、これからも『仮』か?」
「いえ。今度、レヴィアタンのような怪獣に出会った時、自分一人、自分の悪魔だけで倒せるのだったら、正式に『魔法少年』になりたいと思います」
「そうか。なら、ボクは君が魔法少年になってくれるのを心から歓迎する準備をしなくてはな。先輩として、後輩君には頑張ってもらいたいしね」
「会長ってたまにそういう先輩キャラ演じますよね。学年同じなのに」
「まあね」
「会長、本当は僕より生まれたの遅いくせに」
「そ、それは禁句だーっ!」
「あはは。会長が僕が一生懸命やってるのを笑っていたから仕返しだーっ!」
「こらああっ! ったく、これでも生徒会メンバーっていうのがねえ……」
「それは会長もでしょう……」
「あ?」
会長は、僕の首をつねる。つねる。そしてまたつねる。三回目のつねりはとてつもなく痛かった。痛みがビリビリして、これが痛みなのか、と問いたくなるような痛みだった。
「すいません。で、結界は……」
「ああ。結界解除!」
結界が消えた。僕は、首の痛みを多少残しながらも、会長に連れられテレポートで、自分の家に戻った。
***
現在時刻は朝5時すぎ。まだ朝陽は見えない。
すっかり眠気もなくなった。コーヒーを飲んで眠気を覚まそうとした。何時もと同じ朝が来ると思った。しかし、何時もと違う朝が訪れた。
「なぜ、会長は僕の家にまで……」
「朝飯を作ってあげようと思いまして」
「停電って直ったの?」
「ああ。直った直った。朝飯何作ろうか」
「パンでいいと思います。ご飯今無いし」
「そっか。じゃあパン作ろうかね。てか、本当凛君の家は家電多いね」
「そうなんですよ。だから、停電は大の敵なんです」
「そりゃそうなるわなあ……」
会長は、棚に入っていたパンを出して、トースターの電源を入れた後、パンを焼き始めた。まだ薄暗かった5時過ぎ。僕の家の台所では、少し早い朝の音が聞こえていた。
急展開です。この小説は、学園モノですが、悪魔が登場します。悪魔といえど、何故か『女神』とかもいます。ちなみに『天使』はこの世界軸では登場しません。では、今回出た悪魔を紹介します。
まず、凛君が手に入れた悪魔2体です。
・夜炉の女神ニュクスヘスティア[炎/闇]
ギリシア神話で登場する夜の女神『ニュクス(Nyx)』と、炉の女神『ヘスティアー(Hestia)』が合体した女神となったものです。
夜の女神であるニュクスは、冷静で、物静かだが、本当に大切に思う人は、強い力で助ける女神です。『夜の女神』ですから、繁殖性は高いです。
一方、炉の女神であるヘスティアーは、一生処女を貫く女神です。ですから、恋物語も、子孫繁栄、子孫の物語も無いのです。
ちなみに、何故正反対の彼女たちが一緒の悪魔になったのかは、物語を進展していくうちにわかってくるだろうと思います。
・生命精霊ライフウンディーネ [水]
四精霊のうちの一人で水を司る精霊です。作中でも紹介されていますが、彼女は結婚した男性に怒られると水に還る、なんてことも言われているようです。そして、水は生命の命の源。だから『生命精霊』です。
***
続いては里奈の持っている悪魔達です。彼女はこれ以外にも悪魔を所持していますが、書いていると膨大すぎて一日過ぎてしまいそうなので、メインで使用している悪魔のみを彼女は紹介していました。
・光沢幻龍ライトドラゴン[光/鋼]
メタルの美しさが、光の輝きと合わさってできた、究極の光を操る竜。その姿に人々は何かを感じるらしいが、里奈は何も感じていないそう。
・超魔神メガワルキューレ[光]
魔神ワルキューレが、究極進化を果たした形。この悪魔が使用する超魔法、『ゴッドデスライトブレイク』という技は、究極技と言われ、とてつもない威力で相手を攻撃する。そして、高確率(90%)で相手を麻痺状態に陥らせるという恐ろしい技。闇属性の場合、相当な防御力がない限り勝ち目はない。
・魔界獣バハムート [水]
ドラゴンのような姿をしている。この進化系は『超魔界獣バハムート・ドラゴン』である。『バハムートドラゴン』は、今後登場するキャラクターの相棒であるという真実。それだけ強い力を持っています。中でも、『ハイウォーターブロー』は、とてつもない威力を発揮する。『ゴッドデスライトブレイク』の水属性版。大抵の炎属性悪魔は一発KO。90%の確率で、相手を凍らせ、数ターンの間行動不能にする。
・聖女神バルバラ[光]
この悪魔もキリスト系悪魔。また、こちらも究極進化系が存在する。究極進化すると、『大聖女ゴッドバルバラ』となる。中でも、この悪魔と『聖女神バルバラ』しか使えない究極技『サイントバルバラブランチ』は、光属性悪魔一体につき、威力が5倍になるというチート技。闇属性は確実にKO。
・神竜帝メガ・ライトドラゴポイズン[光/毒]
神竜帝ファミリーの中の1体。毒でジワジワ相手にダメージを与えるのも、光で相手を一発KOするのも好きなようにできる悪魔。ただ、光と毒なので、防御は全然向かない。神竜帝ファミリーの中では防御力は最低順位。
しかし、攻撃力はファミリー中2位。
・火炎精霊フレイム・サラマンダー[炎]
炎属性の中でも圧倒的な回復力と攻撃力を兼ね備えた悪魔。普通は黒い髪をしている(凛が見たのはその時)だが、HPが減ってくると、黒い髪に黄色い斑点が浮かび上がってくる。
回復力は相当高めなので、使い道を謝らなければ不死の悪魔としても活用できる、結構強い悪魔です。もちろん究極進化系統も存在します。
・風森妖精シルフ・エアリエル[草]
シルフエアリエルは、とても素早く、超魔法の技は『必ず先制攻撃できる』という効果が付属している。森林などの大自然を見せることで、体力(HP)が回復する。結構味方になる悪魔。しかし、人間のことが好きすぎる。ぶっちゃけ、ニュクスよりも人間のことが好きである。
戦闘で使うことは滅多にないかもしれないが、縁の下の力持ち。特に大自然の中での戦闘では、もはや無敵。
これ以外にもこの世界軸での悪魔は存在します。今後ブログに載せていきますので少々お待ちを。
そして、魔法少女、魔法少年にも属性は有ります。
凛は闇と炎の混合属性。
里奈は光の単体属性。
―――さあ貴方はどの悪魔を選んで魔法少年/魔法少女になりますか?