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Future  作者: 浅咲夏茶
2nd Chapter;Student council and childhood friend.
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8/127

Target:Ren_part03/episode07

 時刻にして午前2時。

 部屋は暗いまま。電気はつかない。停電は未だ復旧していないようだ。姉ちゃんたちが寝た頃に降っていた雨は更に強くなり、雷の音も聞こえないほど大きな音になっていた。

 そんな中。僕は、寝ることもなく、Bluetoothのヘッドホンを両耳に付け、布団の中で自分のスマホの照明度を最低に設定した上で弄っていた。まあ、ラジオを聞いていただけだ。幸い、携帯回線は通じるらしく、それなりに僕は快適にラジオを聞けていた。モバイルバッテリーもあるし、電池残量には困らない。しかし、僕にはしなくてはいけないことがあった。

 それを果たすため、僕はヘッドホンを付けたまま恋を起こしに向かった。といっても、直線で2メートルもない距離だ。もしかしたら、1メートルもないかもしれない。それくらいしか距離はない。まあ、一部屋に7人が寝ているのだから、そうなるのも仕方ないと考えるのが普通だ。

「おい。ちょっと、話があるから起きろ」

 隣で寝ているエリザを起こさぬよう、僕は布団を巧みに使って恋に近づき、トントンと恋の肩をたたいた。その時、エリザが凄い大きな鼾を立てていて、僕は少しひいてしまった。まさか、こんなに大きな鼾をエリザが立てるなんて。そんなの本当に意外すぎてひいてしまった。

 視線を恋の方に戻すと、恋は「何?」と小さな声で言い、そして僕のズボンの布を引っ張る。「わかってる」ということを知らせたいのだろうか。

「ああ。おはよう……。じゃない。お前、起きていたのか?」

「いや。起きていなかったよ。ちょっぴり寝てた。でも、ついさっき起きた時にエリザがとてつもない鼾立てていてひいた」

「もうそれには触れないでおいてあげろよ」

「そうだね。で、話って何?」

「いや、ここで話をするのもなんだ。取り敢えず、電気も今は使えないから、顔を見て話すこともできん。リビング行って二人きりで話すぞ」

「ちょ……。い、いきなり何を言うかといえば二人きりとか……」

「いや、『告白』とかじゃなくて、普通にお前に言わなければいけないことがあるから。いや、今後の僕らの関係にも関わることだし」

「え……」

「そういうことだから、早くしろ。布団から出ろ」

「う、うん。わかったよ」

 そう言うと、恋は布団から素早く出て、僕と恋は、周りで寝ている5人を起こさぬよう、身長に身長に、足音を立てないように廊下まで「抜き足差し足忍び足」みたいに進んでいった。


 ***


 僕はスマホを取り出し、辺りを光で照らす。怖いのか、いつの間にか僕に恋は抱きついていた。誂おうとしたが、今誂うと大きな声出されて怒られて、寝ている5人が起きて、修羅場的な感じになったら悲惨だ。それに外は大雨で、出れるもんじゃない。

「あ、そうだ。話の前に、お前にも情報を分けてやる。僕のスマホを貸す訳にはいかないが、僕の父さんの部屋に、父の使い古しのスマホが有る。数年前の白ロムだが、テザリングで色々と行けるはずだ。ちょっと持ってこい」

「う、うん。……でも一人じゃ怖い」

 真っ暗なリビング。多少のスマホの明かりがあるとはいえ、恋の姿は見えない。しかし、恋は後ろにいる。甘い吐息が耳に鼻に伝わり、「私はここに居るんだ」という証拠を、恋が僕に教えている。


 また恐る恐る足を忍べていたのだが、この作戦では、たまったもんじゃないということで、結局は少しは気をつけるものの、そこまで気にしないで進んでいくことにした。

 今はスマホのライトだけが頼りだ。バッテリー残量は残り74パーセント。相当使い倒してきている。これからテザリングを使えば更に残量は減っていくことだろう。

 しかし、今まで携帯回線を出来る限り使わないできた成果が有った。学校など、外へ出かける時は電話のみ、家にいる時は家のWifiを使用。外でネットがしたい時は、コンビニに駆け込んだ。そういう成果が今、現れている。


 ***


 もう、パケットに関しては何も口出ししないことにした。これ以上深く考えてもどうにもならないし、いっそ考えないほうがマシだと思ったのだ。

 テザリングをして、恋にも情報が行き渡るようにしてあげた。そして、父さんの部屋からイヤホンも拾ってきた。全然使えるイヤホンだ。人のもの、そして僕の父のものなので、恋は使うのを嫌がるかと思ったのだが、そういう訳でもなく、嫌がることもなくイヤホンを耳に入れていた。それはスマホの明かりが教えてくれた。

「さて。話に移る。なぜ、お前が呼び出されたか分かっているなら三行で」

「さ、三行!? それって結構難しいよね……。要は、なんでもいいから思ったことを三つ話せばいいってことでしょ? じゃあ……

『凛を怒らせてしまったから』

『これから凛に、私の弱みを握られ何かをされるから』

『私した罪について、私が謝るまで凛は私を束縛しようとしているから』

 こんな感じ?」

「二行目は違う。ただ、束縛とまではいけないけど、お前は僕を怒らせたし、お前が心から謝罪しない限り許す気はないぞ」

「ゲームデータとか、パソコンのパスワードを教えたことを言ってる?」

「ああ。それで正解だ。で、謝れ」

「ご、ごめん……」

「よし、許すぞ。てか、本当にこれからはパスコード人に教えたりするんじゃないぞ。それに、USBとかに入ったデータとかも消したりするな。名前書くような機械じゃないんだぞ」

「まあそれもそうだよね。うん、今度から慎むね」

「おう。で、僕からの話は以上なんだけど、恋は話とかって有る?」

「な、ない……」

「そうか。じゃあ、これから朝まで徹夜しないか?」

「な、なんだよ、そ、その企画」

「どうした、そんなにプルプル震えて。さっきまでそんなことなかったのに」

「な、何にもないからっ! は、早く徹夜するならするなりに何か考えろ」

「え、ええ……。普通、徹夜ってノープランで行くだろ。つか、別に徹夜しよう、っていってもこの雨じゃ明日は学校ないだろうし別に遅く寝てもいいだろ」

「私は、そ、そんなの受け付けないぞ!」

「いや、本当さっきからお前おかしいぞ? どうかしたか?」

 僕は、熱がないか、冷えていないかを確認した。もしかしたら、咳が出ない類の風かもしれないということで、背中の方をさすった。

「ひゃ、ひゃうっ! ……っ!」

「今凄いビクってしたけど、何か有ったか?」

「何にもないっ!」

「嘘だな。一応トイレに行って用でも足してくれば? 腹が痛いとかならそうすればいいだけなんだし」

「違うっての! お腹は痛くないよ!」

「そうなのか。じゃあ、雑談始めるか」

「え、えとそれは……」

「お前、おかしいってこと以上に、なんで今はそんなに乗り気じゃないんだ?」

「う、うるさいな!」

「いや、本当に何か不安なところとか不満なところとか、何かがしたいってことがあれば僕に言えよ。つか、勝手にいなくなられるとこっちも困るんだから」

「そ、そうなのか……。じゃあ、ト、トイレ行きたい……怖いから……凛も一緒に……あ、中には入るなよ!」

「お、おう。入るわけ無いだろ。僕そういう高度なプレイ知らんし。でも、今停電中だから一旦風呂場行くぞ。僕の家は洗濯でお湯の風呂を使っているからそれが今、役に立ったな」

「ということは、お湯を貯めているのか?」

「おう。そうだ。貯めている。一応、トイレのタンクに水を投入すれば流れてくれる。まあ、風呂の水だから飲むのはちょっと勇気がいるが。トイレに使うくらいなら、結構な回数行けると思うが」

「本当か? なら、是非とも!」

「是非ともって、お前そりゃあトイレ行きたいという事は強く伝わってくるけどさ、少しくらい羞恥心をもて。僕だったからよかったもの。愁や梨人、他の男達はそんなことを聞いたら変な方向に持っていくかもしれんぞ」

「友達を例に上げるって結構凛も酷い人間だな」

「いや。事実だし」

「じ、事じ……っ!」

「嘘だけどね。アハハ。騙されてやんの! バーカバーカ」

「ううう……。ほ、ほらえと……ト、トイレに案内、して?」

「はいはい。おぶってあげようか?」

「そんな事されても今はいい気分にならねえよ!」

「それもそうか。じゃあ、そういうことをしてあげよう……とはしない。というより僕が恋をおぶっても、恋は力が僕よりは強いだろうから簡単に僕のおんぶしている背中の上から離れること出来るだろ」

「確かにそうかもね。て、てか、本当に我慢してるんだから早く……」

「自分で行けばいいじゃないか! ほら、万事解決だぞ!」

「解決方法になってないから! ……というかさ、なんで凛は私をからかうのさ! 今もそうだし、いつももそう」

「いや、お前イジってると面白い。ただそれだけ」

「それって私がいじめられて入れしがってるド変態ドMさん、って思われそうだから止めて……」

「いや、恋は『ドM』だと思うよ。自分の力が強いからそれを上手く使って、自分がいじめられて嬉しくなっちゃうというのを隠しているんだな」

「隠してないよっ! それに本当に私はマゾじゃないから……」

「いや、『マゾ』って自分で言ってる時点で負けだろ」

「うう……」

「ほらどうよ。ツッコミを入れてると、トイレに行きたいことなんか忘れるだろ」

「忘れないよ! 本当、誂わないで……」

 もう、涙声になってきていた。流石に、涙声になられては僕も困る。それこそ、貯めておいたお湯をトイレに持って行く事こそさえ時間がかかるというのに、なぜ僕はここで恋を誂ってばかりいたのだろうか。

「じゃあ風呂場行くぞ」

「う、うん……」

 

 ***

 

 風呂場で貯めておいたお湯を15リットルのバケツに3分の1程入れて、トイレへと向かう。僕の家のトイレは、特に変わったところもない。場所は台所の近くにある。風呂からは遠くもなく、近くもない距離にある。

 急いでトイレへ向かっていく僕と恋だったが、その姿を想像すると、何故か笑いが僕はこみ上げてきてしまった。何か申し訳ない気もするのだが、笑ってしまう感情が沸き上げてきたのである。

「はあ……。取り敢えずトイレだ。僕はトイレから出て……いや、何か凄い事になってるぞ、トイレの壁とかが……。うわ、窓開いてる」

 風向きの影響だろうか。何時もは雨でも入らないはずの窓から水が入ってきていた。壁には水滴が付いていた。近くにあったタオルで壁を拭いていった。窓から風でまた雨の雫が飛んでくる。しかし、それにめげずに僕は壁についた水滴を拭いていった。

 

 吹き終わった。窓を閉め、僕はトイレから出る。

「終わったら、出てこいよ」

「……うん」

 僕は無心でゲームをしようと、恋を意識しないでいようと、ヘッドホンを耳に当て、愁に遊ばれてしまった僕が大好きなエロゲを始めた。

 そして、無心でゲームをプレイしていく。スマホのアプリ版はエロゲというわけではなく、際どいシーンはあるものの、そういった明らかな行為の描写は無い。それに、アプリ版は容量が少なくても大丈夫なように、課金ゲーになっている。しかし、課金しなくても大丈夫だ。課金すると、特別コースが解禁され、自分の使用した体力などを全回復出来る。パズドラでいう魔法石的な存在を買っているのと同じなわけだ。

 丁度、バトルが始まった頃、恋が僕の肩を軽くトントンと叩いた。

「お、終わったぞ……。へ、変なコト考えてなかっただろうな……?」

「ああ。僕はゲームをしていたよ。無心でな」

「それ有る意味すごいと思う。……で、終わったのはいいんだけど、水流したい……。ど、どうすればいい?」

「あ! 恋、すまない! バケツの水入れ忘れた!」

「ば、ばか! 私がどんだけ恥ずかしい思いしてるか分かってるのか!」

「な、なんで恥ずかしいんだよ。何か見られたくないものでもあるのか?」

「私も力が強いとはいえ女だ。女には見られたくないものは多くあるよ」

「男にも見られたくないものは有るぞ。例えば、自分の性癖が書かれているエロゲの箱、データ、エロ本だとか。……そういう意味で考えると、結構悲しいよね。僕今、お前にエロ本の所有権奪われてるんだし」

「おまけに作戦失敗でエリザちゃんに見られる始末だもんね、エロゲを」

「そうそう。エリザ以外に梨人も愁も。幸い姉ちゃんと美来に見られなかっただけマシ。つか、お前もエリザもなんでエロゲとかに耐久あるんだよ」

「耐久、というか本当は『こんなの持ってるなんて……。三次元と二次元どっちがいいの!?』的なことを言いたいだろけど、言えないんじゃないかな」

「お前もそうなのか? 僕がアダルティな物持っていると、そういう風に考えてしまうのか?」

「いや、私は別に凛が持っていてもいなくても構わないよ。自分が嫌々言ってる中で「身体に手を出されたら私だって対処しなくちゃいけない」と思うけど、そういう事が一切起こっていないんだし、別に大丈夫。てか、凛が中学校の時に告白してくる前から、凛がエロ本持ってるの知ってたし、何処にあるかも知ってた」

「マ、マジですかいな……。初耳だわ。姉ちゃんにも美来にも見られなかったあの場所だぞ……。も、もしかしてあの頃お前が僕の部屋を綺麗にしていたのか?」

「そうそう。正解。私は昔から『無駄に過保護』な女でね。空手してる時の自分と、なんつうか『母性』があるときの自分じゃ大きく変わるんだ。あ、それは知ってるか」

「だからか。お前が掃除していたから、僕の部屋のエロ本の隠し場所を知ることが出来たのか。……てか、手紙に『私は君のエロ本の隠し場所を知っている』って書いたの、お前?」

「正解です。焦ったか?」

「焦ったも何も、自分が隠していたところがバレた時本当にビビったんだからな? もしかしたら、姉ちゃんとか美来とかが僕のを見ちゃったんじゃないかって」

「なんで凛はそんなに妹ちゃんとお姉さんの二人を大切にするの?」

「深くは聞かないで欲しいんだが、僕もあまり正確に覚えてはいないんだけど、姉ちゃんと美来は僕を救ってくれたんだよ。というか、今僕はこうやって平然としていられる。でも、昔は雨って聞くだけで怖かった」

「答えたくなければ答えなくていいんだけど……なんで?」

「答えるよ。それはな、僕のすぐ近くに雷が落ちたんだよ。7歳の時に。その時、僕を守ってくれたのは姉ちゃんだった。僕だけじゃない。まだ幼稚園児だった美来も守ってくれた。あの時の姉ちゃんは、本当お母さんみたいだった」

「じゃあ、妹ちゃんとも何かエピソードが?」

「ああ。美来は今、剣道しているだろ?」

「うん」

「あれ、僕のことを美来が守れなかったから習ってるんだよ」

「どういうことよ?」

「あれも今日みたいな雨の日。僕は8歳。美来は7歳。親におつかい頼まれて、頼まれたものをすべて買って家に向かっていた時、美来は誘拐されそうに鳴った。だから僕が助けてやった。それ以来、『いつかお兄ちゃんに恩返しする』って言ってばっかで。結果的に、美来は今なお剣道を続けてる」

「……私が柔道を始めた理由と同じなんだな」

「お、そのエピソードも聞かせてくれよ」

「んなっ! 聞いていたのか! てっきりラノベの主人公なら『え? なんだって?』って聞き返してくるかと思ったよ!」

「残念だけど、今の僕は耳が冴えているんだ」

「くっ……。でも、後々お前にも話すから今は話さなくてもいいだろ?」

「そうか」

 僕は、少しクールにそう言う。ただ、恋から見ると「あんまりいい話の印象を与えなかったんじゃないか?」というのを思ったらしく、僕に「おい話し聞いたか」とちょっとツン気味。いや、これはキレ気味なのだろうか。そんな風な印象を受ける声で話した。

「聞いた」

「も、もう……。は、早く水流さないと!」

「そうだな。てか、なんでこんなにくっだらねえ話で時間つぶしてるんだろうな」

「そうだよ! ドMとかいう話とか絶対意味なかっただろ!」

「まあ、そういうのが日常ってもんさ」

「そうなのかなあ」

「そうだよ」

「そうか」

「うん。じゃあ、水をタンクに入れるからトイレ入るわ」

 僕はそう言って、トイレの中に入っていった。そして、タンクの中に風呂から持ってきた水を入れて、便座の後ろのレバーを操作して水を流した。停電でも、水さえあれば流せるわけだ。とはいえ、電気が来ていないので便座は冷たい。

 トイレから戻る。人のような感覚がしたので、触ると、それは恋の体だったらしい。それも二の腕。僕は、肩でも触ってるんだろうと思ったのだがそういう訳でもなく。胸とかそういう部位ではなく、それといって「こらっ!」と怒られはしなかったが、髪の毛を引っ張られた。

「ったく。人の二の腕を」

「ごめんごめん。てか、本当に雨やまないよね」

「どうしようか。まだ深夜2時30分だし。これから寝ようにもなあ……」

「いや、仕方無いよ。寝ようよ。明日晴れたら、起きれなかったら大変でしょ?」

「そうか。流石過保護な母ちゃんは違ったな」

「何が過保護な母ちゃんだこら! 私はまだ子供も身ごもってないわ!」

「ねえねえ。恋って、誰の赤ちゃん身ごもりたいの?」

「そういうことを聞くなあっ! ね、寝るぞ!」

「聞かせてくれてもいいのに。まあ、寝ようか、じゃあ」

 結局、僕も恋も、そういったくだらない雑談が楽しくなって、起きてから30分もくだらないことをしていた。僕の予定では、リビングにでも呼び出して3分で終わらせてやるつもりだったんだ。しかし、予定というものはすぐに書き換えられるものだ。一番最初に決めた予定が最後まで貫けることが多いんだろうが、結構な確率で何かが付け足されたりする事がある。勿論、減らされることもあるけれど。


 僕は中々寝れず、やっぱりゲームをした。ネット通信をオフにした状態でゲームをすることにした。オンラインゲームは、電池を使いすぎるからだ。

「さて。朝までゲームするかな」


 恋は、布団にもぐってすぐに寝た。顔は布団の中に入っていなかったけど、首の根元辺りまで布団をかぶせて寝ていた。

 一方の僕は、結局朝までぶっ通しでゲームをプレイすることで決まった。


 くだらない深夜の二人だけの会話だった。

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