【続編 第17話】長屋の狂気と囚われのきよぴこ
【続編・第17話】長屋の狂気と、囚われのきよぴこ
場面は変わり、帝都の片隅。
どんよりとした空気が淀む、古びた長屋の前に三人の影があった。
「……ここが、僕たちの拠点だよ。きよぴこ」
サクサクが自慢げに指差した先を見て、きよぴこは顔をしかめた。
「……なんだよ、この汚ねぇボロ長屋は。これじゃあ、ただの吹き溜まりじゃねえか」
「少し汚いですが、この周辺の住人はみんな僕たちの信者ばかりですから。とてもいい環境ですよ。きよぴこはスペシャルゲストなんだ。
おい、待てよ。サク。俺の布教活動も手伝ってくれるんだろ?」
兄のはるが、不服そうに唇を尖らせた。
「何言ってるんですか、兄さん。きよぴこは僕の親友です! 大事なアシスタントなんだから!」
「……そういう意地悪を言うなら、もう『リクエスト』してあげないからね」
はるの言葉に、サクサクの顔が引きつる。
「……わかったよ、お兄さん。三人で頑張ろう。三人で、リクエストし合おう?」
「おいおい! 俺はそんな趣味はねぇからな!」
きよぴこが全力で拒絶していると、長屋の陰から一人の男がフラフラと現れ、膝をついた。
「……はる様。やっと戻られましたか……」
「みんなに紹介するよ」はるが男の肩を叩く。「港町で勧誘してきた、オナラガ・スゲーデル君だ」
「…………」
きよぴこは絶句した。
「……また、すごい名前やな。どんな人生歩んだら、そんな名前になるんや……」
「とりあえず今日は一日休んで、明日から駅前で布教活動だ。……いいかい、きよぴこ。逃げようとしても無駄だよ。「ここの長屋の住人はみんな信者だからね」
サクサクの冷たい目が光る。
きよぴこはボロ長屋の天井を見上げ、一人唇を噛んだ。
(……いつか隙を見て逃げ出したいが、元の世界に帰る術がない。あいつらが来てくれるのを待つしかねぇのか……)
遠くで蒸気機関車の汽笛が、まるで仲間たちの呼び声のように虚しく響いていた。




