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月の王子さま  作者: 三重野 創


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人相・手相・打相

「インテリぶった人が大否定するけど、人相とか手相とかバカに出来ないと思うんだよね」

 美形だから良相だとか、醜男《しこお》だから悪相という見方だけでは無い。


「わたしも同感だけど、手相見せてと言われたらグーにしたくなるわ」

 こんな紅もいかがか。


「手相ってどんどん変わっていくものだけど、紅さんのは見るからに天下取りの相だよね」

 甘い囁き『sweet talk』 で、おだてるの意味になる。


「あまり詳しくないけど、自分から手相を誇るようにはなりたくないわね」

 動画は自慢しいだらけだ。ブランドの紹介を見たいのであって、あなたなんかに興味はないという悲しい結末にならないように。


「手相はその人の履歴書だからね。閻魔帳みたいなものだよ」

 たとえ無念の死を遂げても、地獄の底まで追いやっていく。


「手を使わないと、手相は悪くなるみたいね」

 週末にわざわざ不便を体感するレジャーが人気だが、こうでもしないと現代人はどんどんハードラックに見舞われる。


「便利な物が手放しで喜べないのはこういうとこだよね。相補性で何かを得たら大事な何かを失う関係ってのはあると思うよ」

 自転車で手放し運転が出来るようになった時は、大いに喜んだものだ。

 ※禁止されています


「人相に関してはほとんど語り尽くされてるけど、生まれつきの顔のことを言っているのでは無いのよね」

 「いい笑顔だね」「さっきひどい顔してたよ」は、同じ人に対しても間々《まま》向けられる言葉である。


「そうだねえ。歴史上の人物なんて顔の変化がありありと分かって興味深いよ」

 メスより意志の力が大きい。


「月の住民も地球人と大差ないのね」

 紅は男の顔にあれこれ言わないが、年往は王族だけに気品が漂う。


「ま、はるか太古に地球から移り住んだらしいからね」

 年往の生家には、蜂の巣をつついたような騒ぎになる文献がてんこ盛りだ。


「また戻れるといいわね」

 別にいつでも帰れるのだが、紅を射止めないことには戻るに戻れない。


「ドラゴンズの日本一を見るまで帰れないよ」

 おどけてみせる年往。


「こんな言葉は無いけど、打相というのもあると思うのよねえ」

「打相?」

 打つ構えのことも言うが、打順の並びのことを紅は指している。


「打順を組むセオリーっていくつかあるけど、プロ野球の場合漢字もポイントになってくるのよ」

 文字列の並びがひと目見て美しいものと、散らかった印象を受けるものとがある。子の命名で珍しい読み方や漢字だからと言ってキラキラさせてしまいがちだが、こうした精神を忘れてはいけない。


「そういうのってあるよね。実力に関係なく、五島さんが一番バッターだったりすると違和感あるかな」

 背番号と打順、守備位置などは、無理に合わそうとしなくてよい。


「わたしが神経質なのかもしれないけど、同じ漢字が名前に入ってる人は、続けて並べた方がなぜか具合がいいのよ」

 漢字の魔方陣みたいなものである。


「それってさ、本棚の並びとかにも通じる考えだよね」

 紅の財布の中身は、スリもびびって投げ返すほどに整頓されている。


「そうよ。並べるって基本中の基本だもの。それをはみ出さないように、そしてどの順序に並べるかってところに、無数の戦術が生まれるのよ」


「紅さんの絵を見てたら、すごく性格が表れてるよ。僕のとはアプローチが違うかな」

 年往は見たまま感じたままに描くスタイルだが、紅は絵も計算づくである。


「だからどちらかと言うと、紅さんは家や車のスケッチがより適性があるんじゃないかなあ」

 紅が描けば、家相も車相も良くなる。


(世相もね)











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