再会と決意
『私の所に来い』とアリラは言ったが、夫婦になる前に住んでいた場所が今も変わらずか不確定で、ダンは野宿をしようと腰をあげる。
何とも情けない掛け声が聴こえてきて、ダンはその方向を見た。
複数のランスの兵士に向かって、ボロい布を纏った一人の男が殴りかかっていた。ダンには喧嘩というより、遊びか戯れ合いだ。
「ヒッ痛いんっ」
暴力が振るわれた先は仮にも兵士だ。だが、もやしみたいなヒョロヒョロした皮と骨ではパンチを食らわせた所で、ちょっとばかりついた筋肉に叶うはずもなく、間抜けな声があがる。
「お前に何が出来るんだよ? 何もできやしねぇよッ国民も大好きな女も、何も守れやしないんだよ」
眉間のシワがさらに深まる。
いつもなら無視をする。いつもなら――。だが、今日は何故か身体が勝手に動いてしまった。
ダンはもう一度殴ろうと振り下ろす腕を片手で受け止め、そのまま腕を捻り悲鳴をあげる男の背中を正面に向けた。
「……訓練はどうした。他人を貶めてばかりではいつまでも底だぞ。己を磨き強くならねば戦場で痛い目を見る」
ダンは藻掻く男の手を離した。
「誰か知らねぇが、覚えとけよ。お前もだ、ダン。パーカー騎士団長はお前には似合わない。一生……な」
ダンは耳を疑った。軽々しく名前を呼ばれることはとんがり帽子の男の他いなかったからだ。さらに、ある旧姓と同一の名前にも驚いた。
「ダンー…ダン・アーノルドか。ならば、パーカー騎士団長とはー………アリラ・パーカーか」
己の顔を鏡以外で見るのは不思議な気がするが。ダンは頬骨が浮き出た顔を見つめる。
「お前は騎士団長ではないー…のだな」
「そっそんな……滅相もない。僕が騎士団長だなんて。僕はただの見習い兵で……」
人差し指を突き合わせながら目線をそよそよさせる姿は自信のなさを感じさせる。
(………………こ奴が俺か…………)
ダンは呆れまではしないが、ちゃんと飯を食べているのか心配になった。
「貴方は? 何だか僕とアリラちゃんの事を知ってるみたいだけど」
「…………いるのか」
「……え?」
「ちゃんと呼んでいるのか」
「え? あ、はい」
それが何かと不思議そうに頭を傾げる。
「そうか」
何とも言えない仏頂面で次の事を考え出す。
問題はどうやって言い訳をすれば事を荒立てず済ませれるか。
「……俺たちはー…生き別れの兄弟なんだ」
流石にこんなふざけた事を受け入れられても困るが、上手い言い訳など出てこずに言い述べると。
「僕が兄ですか」
「…………」
「否、俺のほうが年層を重ねていると思うのだが」
「僕にこんな年上の強い兄さんがいたなんてー…」
あっさり受け入れられた。加えて、仔犬のような瞳を輝かせ顔を覗いてくる。
(疑うという余地を知らないのか……)




