14.作戦開始!
気合で間に合わせました。2話連続投稿二つ目です。
この章も短い。これで何話目だったっけ、ねぇ?
私たちは、『砦』から直接、古城へと飛んだ。
実は、バッチには限定的だが転送機能があるのだ。今回はそれを利用して、位置を全員で指定場所に合わせて飛んでいた。
いよいよ、作戦開始だ。
正直、今、心臓が口から飛び出してもおかしくないくらい、緊張している。
だけど私は、ひとりじゃない。
だから、大丈夫。
私はぎゅっと、ペンダントを握り締め、咲良お姉ちゃんとストラさんの後ろについた。
うん、作戦通り、大丈夫。
「では、いきます!」
クリスさんとヤートさんは、離れたところに移動し、壁に向かって、光の玉をぶつけた。
二人が行うのは、陽動だ。
その間に、私たち潜入班が中に入り、赤堀さんたちを救出。
後は各自、バッジの機能を使って『砦』に帰還。
赤堀さんたちの場所が咲良お姉ちゃんたちに把握できるからこその、シンプルな作戦である。
なるべく足音を立てないように、でも急いで中に入る。
「じゃ、邪魔するものは跳ね飛ばして行くわよ」
「えっ」
私は忘れていた。
咲良お姉ちゃんも、魔力持ちであることを。
恐らく風の力で吹っ飛ばされていく、名も知らぬ犯人たちに手を合わせたくなるくらい、それは凄まじい光景だった。
あれは......怖いわ......。
しかも、再起不能になるようきっちり痺れさせているようで、なんかぴくぴくしている。気のせいにしたかったけど、あれは間違いないと思う。
......ご愁傷様です、なむ。
さて、一階の奥。
邪魔するものは文字通り一人残らず吹っ飛ばされた先に、赤堀さんたちが、いた。
二人とも制服で、特に目立った怪我はなさそうだ。
ただ、急に現れた私たちに、警戒心たっぷりである。
いや、私、ちょうど陰になって二人からは見えてなさそう。
「あなたたちが、赤堀 博美さんと、宮沢 章君で、間違いない?」
と、咲良お姉ちゃんが問いかける。
すると、赤堀さんは、宮沢君を守るよう前へ出て、咲良お姉ちゃんを睨み付けた。
「誰ですか、あなた」
うん、そうなるよねぇ......。
ストラさんのことは知っていても、あの二人にとって咲良おねえちゃんは警戒すべき人だろう。
私は、ストラさんの後ろに隠れていることをもう一度確認して、そっと「解除」と呟いた。
これは、ナイトへの合図で、私の変化を解いてもらうためだ。
“ラピス”から“芹奈”に戻る合図。
あと、こう言った方が「何らかの道具使ったんだな」と認識してもらえる、というのもある。
私が精霊と一緒にいることは、できる限り今は、多くの人には知られたくないからね。
あ、ちなみに、ストラさん、そしてヤートさんはナイトのことを知らないよ、念のため。
黒髪に戻ったことを確かめて、私は、ストラさんの影から出る。
「「橘さん?!」」
「うん」
驚いた様子を見せる二人に、私は苦笑いを浮かべた。
「えっと......、ストラさんのことは知ってると思うけど、こっちは、私の従姉、咲良お姉ちゃん。
混乱してるとは思うし、聞きたいこともあるとは思うけど、とりあえず今は、一緒にここから出て欲しいかな......」
そう、私は二人を説得する。
私の言葉なら、二人はついてきてくれるんじゃないか、という予想で動いている。けれど、これでもダメなら積みだ。
『砦』でお留守番してる二人を、最悪の事態になれば呼び出さざるを得ないが、それは色々と危険すぎるので避けたいのだ。
二人は顔を見合わせたあと、頷いてくれた。
よ、良かった......。
これで、きっと帰れる。五人で。
この時、私はこのことに気を取られ、自分に迫る危機を察知できないでいた。
それは、ストラさんも、咲良お姉ちゃんも、......ナイトも。
「よし、じゃ、行きましょうか」
ここに向こうの仲間が戻ってきて、危険になる前に。
そう咲良お姉ちゃんが言って、一歩踏み出した時だった。
私の視界が、ぐるんと回った。
比喩じゃあない、物理的にだ。
「?!」
「芹奈!」
「セリナさん!」
「「橘さん!」」
何かによって自分が攫われたらしい、というのだけ把握して、私の意識は暗転した。
ああ、約束、果たせなかったなぁ。
そう、意識が消える間際に、思った。
一気に物語が動きます。芹奈が“向き合う”時が近い。
ちなみに、この後はアルト視点が挟まります。時系列がちょっと戻ってのスタートです。
それでは、紺海碧でした。次回は、19日に投稿します!