12.初めての休日:王都に行こう! (2)
2話連続投稿二つ目です。
内容としてはいい区切り方だったと思いたいけれど、今回、すごく短いです。
「えと......兄様?」
「なんで、疑問形なの?」
「だって......」
王宮の門の内側の手前。
外出手続きをしつつ、私は兄様を見上げた。
兄様の格好は、シンプルな深緑のシャツにベスト、スラックスというシンプルな出で立ちだが、少し、おかしいところがあった。
髪がこげ茶色、瞳が緑になっているのだ。
「あ、これ......?
まあ、秘密、かな......」
「......そうですか」
ひょっとすると、兄様の“固有魔法”に関わることなのだろう。
だとしたら、あんまり深く突っ込まない方がいいな、話したくなさそうだったし。
手続きが完了したので、門を潜る。
なんていうか、ここまでハプニングだらけだったから、王都に行くのやっとって感じがするな......!
どんな感じなんだろう......?
集合時間押してきてるのもあるし、もう意味の分からないトラブルに巻き込まれないといいんだけど。
そう考えていると、もう、王都へと出るところだった。
「うわあぁ......!」
王都は、活気に満ち溢れた、ザ・中世ヨーロッパな街並みの場所だった。
道が広く、たくさんの人や馬車が行きかっている。
......え、でもあれ、生きた馬じゃない? 馬なしで動いてる馬車もあるのは、気のせいにしたい。
そうきょろきょろとしていると、そっと兄様に左手を取られた。
突然のことに、どくん、と心臓が跳ねた。
「ほら、行こう。
カバンは、反対の手でしっかり持っててね。
いないとは思うけど、スリ対策に」
「えっ、あ、はい......?」
あの、何で腕を......。あ、迷子防止ね、はい。
私ってそこまで信用ないの......?
とりあえず頭の中で、「心ぴょんぴょん」と歌いつつ、兄様にアシストされて進むしかなかった。
『月の船』へ着くまでに、大体10分はかかっただろうか。
そこは、本屋や文具店が並ぶエリアの、広い道から少し逸れた場所だった。
まあ、無事に目的地付近に到着はしたものの。
「......だいじょ......ばないよね」
「......」
もみくちゃにされ、私は疲れ切っていた。
人酔いって、本当にするんだ......。
「えっと......、はい、これ」
兄様が氷でコップを作り、そこに水を出してくれた。
「ありがとうございます......」
素直に受け取り、一気飲みする。
ぷはぁ、生き返るぅ!
「ありがとうございました。
じゃあ、行ってきますね」
「うん、気を付けてね」
私は、大きく息を吸い込んで、『月の船』の中に、入った。
店内は、年数を感じさせるものの、汚さは全く感じられない、どこかほっとする空間だった。
私はどこにカウンターがあるかを確かめつつ、ゆっくりと店内を一周する。
今から行うことは、他のお客さんがいてない方が良いからだ。
滅多に遭遇しないよ、と別の意味で心配になることを聞いていたが、その言葉に反し、奥に、一人だけ、居た。
赤いくるくるとした髪で、どこか惹きつけられる、不思議な雰囲気の女の人だった。
最初、彼女は手元の本に目を落としていたが、私に気付くと、すっと本を棚に戻した。
それは、あたかも、私を待っていたようで。
「そう」
彼女は、きゅっと目を細め、笑ってみせた。
その仕草は、人懐っこいネコのようだ。
「怖がらないで~。
私は、アルト先輩との約束、果たしに来ただけだから」
「先輩? 約束?」
「そっ。
彼は、学校の先輩。
あの時、すごく助けられちゃったから、約束、したんだ~」
彼女は、混乱する私をそのままに、どこかから、何かを出してきた。
それは、シンプルで小さなデザインの、二つの耳飾りだった。
それぞれ黒もしくは青の小さな石が嵌め込まれており、彼女はそのうち、黒い方を手に取り、もう片方は片付けてしまった。
「そう、これは、わたし特製の『お守り』カフ。
さっ、右耳貸してね~」
「えっ、ちょっ」
止める間も音もなく近寄った彼女は、優しい手つきでそれを私に装着した。
ちょっと離れて私を見て、ふんふんと一人頷いている。
「あのー」
「あ、今度は、先輩に渡しに行かなきゃ。
対になってるから、これ」
そう言って、彼女はにっこり笑った。
「何か言われたら、『赤きカルセドニー』に貰ったって言ってね。
あとそれは、魔法界でしか見えないから、安心してね、科学界では存在ごと忘れちゃっても支障はないよ」
「えっ?」
私は、目を見開いた。
その台詞は、まるで......。
私の正体を、知っている?
「いろいろあって大変だろうけど、応援してるよ!
頑張ってね!」
そして、次の瞬間には、居なくなっていた。
まるで、どこにも存在していなかったかのように。
私はあまりのことにぽかんとして、そっと、右耳に触れた。
間違いなく、耳飾りの感触が伝わってくる。
本当に......何だったんだろう......?
私はしばらくその場に立ち尽くしていたのだった。
下水道管理は現代日本とそう変わらないので、街はきれいです。時代が現代だからね。
色々とファンタジー的に発展しています。これは、魔法塔の住人たちのおかげです。
ちなみに、“馬がいない馬車”は、見間違いではないでしょう。たぶん。
それでは、紺海碧でした。次回は、筆者の体力面の問題から一日飛ぶ可能性があります。皆勤賞を続けたい気持ちはあります。もしできなかったら、ごめんなさい。




