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第168話 ありふれた職業は大体世界最強

『おぉおおっと!! すごい爆発だ!! でも観戦中の皆さん安心してください! モヨモト様、ツェペシュ様、ファフニール様のお三方が三重に結界を張っていますので、万が一にも皆さんに余波が到達し、怪我をするなんて心配はありません! そして一体リンク上では何が起きたのでしょう!? 四人の選手は無事なのでしょうか!? というか辺りを闇の謎空間に変えられたり、大爆発を起こされたりして、メイア選手とレーベ選手は無事なのでしょうか!?』



『ふむ、流石はウェンディだね。あの空間の中で魔法陣を描いて発動させるのは初見数分では普通まず無理さね。あたしでもビビっちまうよ。そして発動させたのは中級魔法、わずか十五センチの陣で作った氷の防殻さね。それとテュールの放った黒炎がぶつかって水蒸気爆発を起こしたんだろうさ。ま、爆発の規模がこれだけになるってことは、ウェンディのヤツ相当圧縮された高密度の氷で作ったね。あぁ、あとメイアとレーベは開始から今の今までインファイトで殴り合いを続けているさ』



 もうもうとした水蒸気が晴れ、ようやく視界に光が戻ると観戦者たちの目に映るのはリンクが全て吹き飛び、クレーターの中で()り合うテュールとウェンディネヴァ、そしてメイアとレーベだ。



『おっと、リンクから落とされたら場外となり負けとなるのですが、この場合──』



「ガハハハ、もちろん場外なんていうルールはこの試合には適応されないぞ! 俺が審判だからな!! ガハハハハッ!!」



『……とのことです!! そして、よく見えるようになった会場では、ウェンディネヴァ選手と刀を持ったテュール選手。そして金色の武装で殴りかかっているレーベ選手とそれに無手で対応しているメイア選手です!! 全員ピンピンしており、激戦を繰り広げております!! 正直こんな展開は予想できませんでした!! 流石は五輝星の弟子と言うだけあります!!』



 そんな実況を聞いて、耳をピクピクさせ、メイアが愉快そうに殴っている相手に話しかける。



「フフ、だって? レーベ、この先いくら強くなっても五輝星の弟子、孫っていうレッテルはついてまわるよ? キミほど強さに真摯な子はいないのにね」



「……関係ない。私は周りに認めて欲しいから強くなるんじゃない。生まれたときから自然にある欲求」



「ップ。そうだったね。ボクら獣人族は四大欲求に従順だ。ましてボクやキミくらいになるとも寝ても覚めてもその抗えない欲求が身を焦がす。誰よりも強くなりたい、と。キミがこの試合、ボクを越せたらいいだろう。SSSランク──獣人族最強の座につくといいさ」



「……もちろん、そうする。そうなったら二度と返さないよ?」



「……フフ、ありがたい話しだね。自分と同類がいるって言うのはとても安心できる。さぁレーベ? ボクも本気を出すから覚悟してね。そういえば、何度も戦ったけど本気を出すのは初めてだね。本当にキミは強くなったよ。さて、ツチウサギと呼ばれる由来を教えよう」



「……」



 レーベは逡巡する。メイアは白兎族。そもそも土色ではないし、かと言って土に関する魔法を使うとも聞いたことがない。何故土兎と呼ばれているのか改めて思い返すが、答えは出ない。



「……教えてもらう」



「フフ、じゃあ驚いてもらおうかな。これを引っ張り出すと反則級だから覚悟してね。召喚(サモン)始祖の大槌(ハジメのオオヅチ)



 メイアはもったいぶってそう言うと、上空に百メートル級の魔法陣を描く。すぐさま魔法陣は発動し、その中心部分が暗く暗く口を開く。そこから召喚されたのは巨大な槌。そして、それはゆっくりと降りてきてメイアの手に収まった。



「これはボクたちの先祖であるハジメのウサギと呼ばれる始祖の白兎が使っていた神代級アーティファクトだよ」



「……槌兎」



「そゆこと。んじゃ──」



 メイアが右手一本で大鎚を構える。その大槌は神代級アーティファクトと言うだけあって、存在するだけで大気をチリチリと焦がすように威圧感を放っていた。レーベはジッとその槌を見つめ、再び拳を強く握りしめる。そして──。



「ちょっと待てぇええええ!! おま、ハジメのウサギの大槌って!! その始祖の兎の職業はありふれていたか!? ありふれてなかったのか!?」



 そんなメイアとレーベの周りをウェンディネヴァとの激闘に踊り狂いながらもテュールが慌ててツッコミをいれる。



「え? 割とありふれてたんじゃないかなぁ。確か言い伝えでは占術──」



 それに対し、キョトンとなったメイアは反射的に素で答えてしまう。



「いやそれ以上は言うな!! 各方面から怒られ──チッ!! 燃やせ骸焔!! 龍咆!!」



 慌てて、そう言うテュールだが、この間もウェンディネヴァの攻撃の手が緩むことはない。自身の凍った左半身を黒炎で溶かしながら、口から二十メートル級魔法陣のブレスを一息で吐く。



「フン、私を相手によそ見とは随分余裕があるじゃないか。浮気症の男はロクな死に方をしないぞ?」



 だが、二十メートル級のブレス程度はウェンディネヴァの白鱗覆う右腕によって簡単に逸らされてしまう。



「ぐっ……。余計なお世話です」



 そして二人はまたも激闘のダンスタイムへと身を投じていく。



「なんだったんだろうね?」



「……さぁ?」



「まぁいっか。さ、ボクたちも踊ろうか」



 そして仕切り直したメイアは不敵に笑うと、遂にその大槌を構え駆け出す──。





えるしってるか?このリサポンをよんでいる読者の実に6割がありふれをブクマしているんだぜ?

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