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第163話 氷雪系最強(笑)

「……メイア。ん、久しぶり」



 土兎、獣人族SSSクラスのメイアと面識のあるレーベは、挨拶を返す。



「ふふん。レーベが一回戦の相手なんて楽しみだなぁ。そっちのは彼氏?」



「あ、どうもテュールです。いえ、彼氏ではなく──「ししょー」



 テュールが自己紹介をしようとしたところで、レーベがテュールとの関係性を明言する。



「ふーん。まだ若そうだけど、キミすごいんだねー。レーベって強さに対してすごく厳しいからその師匠だなんて期待しちゃうよ。クック」



 獣人族でSSSランク、当然戦闘が嫌いということはないだろう。目を細めてテュールを眺めると、戦うのが楽しみだとばかりに笑いながら肩を揺らす。



「いえ、そういうメイアさんこそ、その若さ、いえ歳は知りませんが、でSSSクラスなんだから──」



「あ、ボク三十四歳♪」



「……大変失礼しました」



 背が低く、可愛らしい童顔のメイアをてっきり十代だと思っていたが、遥かに年上であった。



(やはり、日本でも異世界でも女性の年齢は分からん。……もう迂闊に歳の話を振るのは止めよう……)



 そして、テュールは猛省するのであった。



 一方、メイアの相方である竜族SSSランクのウェンディネヴァと言えば──。



「おい、愚弟久しいな」



「あぁ、アネキ久し──」



「お姉様と呼べ」



「……ッチ。いい歳こい──ぶるっふぁくてぃくっ!!」



 弟であるアンフィスとの再会を楽しんでいた。そんな、かなり遠くまでふっ飛ばされたアンフィスをヴァナルが笑顔で追いかけていき、ツンツンと指でつつく。動かない、どうやらただのノックアウトのようだ。あのアンフィスを一撃ノックアウトする。流石は竜族SSSランク、アルカディア一の身体能力を持つと言われるだけのことはある。



 ウェンディはそんな弟のことなど既に興味がないようで見向きもしない。そして、姪っ子であるレフィーの方へと視線を向ける。



「お、お姉様、お久しぶりですっ」



 レフィーはウーミアを抱え、ウェンディに挨拶をする。怖いもの知らずでいつも堂々としているレフィーだが、極度に緊張しているのが見てとれる。



「あぁ、レフィー久しいな。聞いたぞ、子供ができたらしいな。ふむ、その子か。レフィーに似て美人になるな。どれ、おいで」



 そんなレフィーにウェンディは微笑みを返し、ウーミアを抱かせて欲しいと申し出る。



「えぇ、そうです。この子が私の子でウーミアと言います。ミア、この人はウェンディネヴァお姉様だ。挨拶できるな?」



「うんー! うーはうーみあです! うぇんでぃーよろしくね?」



「はぅっ!?」



 まさかの呼び捨て&タメ口にレフィーから聞いたことのない声が漏れる。そしてカタカタと震え、次の行動は何が正解か分からないようで身動きがとれないでいる。



「フフ、あぁ私はウェンディネヴァだ。親しい者からはウェンディと呼ばれている。ウーミアもそう呼んでくれ」



 だが、ウェンディはウーミアを抱きかかえ微笑んだ。これにはレフィーもホッと一息をつく。



(……つーか、そんな怖いのか? ウェンディネヴァって人は……。いや、まぁ竜族SSSランクだからなぁ。世界最強の身体能力だろ? うーむ)



 ウェンディに対して大袈裟すぎるレフィーの態度を見て、首を傾げるテュール。テュールからすれば、美人でカッコイイお姉さん風というイメージである。アンフィスを殴り飛ばした時の躊躇のなさは、確かに恐ろしいが割とこの世界では当たり前に女性も躊躇なく暴力を振るうという認識があるため、別段驚くほどでもない。



「それでウーミア? パパはどこにいるんだ?」



「んー? パパはあそこー」



 そう言って、ウーミアが指をさす先には、当然テュールがいる。



「どうも、テュー、ヒェッッッ!?」



 軽く会釈し、挨拶をしようとしたテュールはウェンディに視線を向けられた途端、全身のウブ毛が逆立ち、鳥肌が立つ。カタカタカタと歯が噛み合わず、頭痛、悪寒、めまい、吐き気、動悸、息切れに襲われる。テュールは慌てて周りを見渡した。どうやらこの症状は自分だけのようだ。



 ウェンディはテュールを見つめたまま、一歩ずつゆっくりと近づき、そのすぐ目の前で止まる。そして、スッと耳元に唇を寄せ──。



「そうか、お前か。うちの可愛い姪と子供を成しておきながら責任も取らないクズは。だが、丁度良かった。一回戦がとても楽しみになった。なに心配するな。私にとってレフィーもウーミアも大切な家族だ。それを悲しませたくない。……殺しはしないさ」



 小さく小さく、冷たい言葉を吐く。テュールはまるで耳から脳まで凍らされたようなヒドイ痛みを感じる。だが、それも一瞬。ウェンディがくるりと振り返り、ウーミアをあやしながら去っていくと症状が消える。



「ハッ!?」



 テュールの肩がポンッと叩かれた。ビクッと大袈裟に反応してしまう。そこには先程吹き飛ばされたアンフィスがいた。



「テュール……、厄介なのに目をつけられちまったな。いいか、あいつの二つ名は絶氷。……氷雪系最強だ。ヤツが本気になれば時すらも凍らせられる。対処法は──」



「た、対処法は──?」



 テュールはゴクリと生唾を飲み、その先に続く言葉をワラをも縋る思いで待つ。



「──ない」



 テュールは目の前が暗くなっていくのであった。



書籍が無事発売されました!

おかげさまでご好評いただいております!

まだ購入されていない方も是非パワーアップした書籍版を手にとってもらえると嬉しいです!

どうか今後とも「とある英雄達の最終兵器」をよろしくお願いいたしますm(_ _)m

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