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59王子、ボーっと見ているんなら書類仕事しなよ

 他の王なら五分もしないでくるんだけどなぁ。遅過ぎる。


「何で書いたんだ?」


 アルクレイに聞かれてなんてことないように述べる。


「王太子たちが話しかけてきたから帝国の生徒に迷惑をかけないように話せとか、生徒会の仕事を平民に押し付けて仕事をしてないとか、事実を書いておいた」


「動くのか謎だな。甘々そうだ。そもそもこの規模の国の王太子なんてまともに育てられている感じがしないんだよなぁ。なんせ、小さい国だからな。帝国の友好国というわけでもないから、緊張感もなさそうだしな」


「あんまり権力に怯えないって言うか、危機感なさげだってのは思った」


 王と対面した時も聖女と対面した割には扱いが軽かった。アイドルにあったミーハーな人のような雑感がある。別に敬えとは言わないけど、フワッと全体的に今まで危機に晒されたことがないお花が咲いてそうな危機意識皆無な思考が、とても透けて見える。これは悪く捉えた場合の話だ。


 何だかなぁ、と思う。いや、一般人とかならそれでいいんだろうけど、彼は王族で王太子たちも王族である。しゃんとしてくれと思うことは悪いことではないし、当たり前の基準。必要最低限。


 望むのは黙っててほしいと言うだけのシンプルすぎる望み。それさえも、些細な願いさえも叶えてもらえないなんて。真底緩いを通り越した怠惰。

 己よりも怠惰だ。ペコラほど人間不信は珍しいからそこは比較対象が極端であるとアルクレイは胸の内で思っている。しかし、王族は人を安く見過ぎであった。


 だから転生者の令嬢にホイホイ耳を傾けて、なんの関係もない平民に扮した聖女に話しかけてしまうのだろう。迂闊な

 んてレベルじゃない。王族なら調査してから行動するのが主流だろうに。


 映像の続きを見ると誰がペコラを見るか、見張るかを押し付け合っていた。皆王太子の婚約者のマリナサの近くに居たいらしく、離れたがらない。

 まあ、王太子はそれを他人事みたいに眺めているけど。側近らに向けて争いの種を持ち込んだのに、他人事な態度なのやめよ?


 呆れて息を吐く。どう見てもマリナサに全員恋心を抱いているっぽくて。多分心の闇を払うなりなんなりしたんだろうさ。乙女ゲームのイベントみたいに。想像するだけで吐き気がする。リストにあるから消化したように、流れで解決されるほど軽いものに人生を棒に振り過ぎだ。


「君は暇だろう」


 まだ彼らは自分は無理、お前がやれと押し付け合いをしている


「君こそ喋ってるだけだろう!」


「マリナサ様の護衛をしているので忙しいのだ」


 王子、ボーっと見ているんなら書類仕事しなよ。せめて。誰のせいでこうなってるんだ。あなたのせいですが?

 具体的にいうと、あなたの婚約者の無知無駄無茶なお願いのせいですが?

 すごく無関心だ。あまりにも余りあるくらいのことを皆やらかしている。仕事をしてないのは確定。淀みのない動きが見てわかる。手慣れているのだ。日常茶飯事なのだろう。


 困ったことになったと腕を大仰に組む。こんな自己中な輩に目をつけられるなんて最悪だ。最悪を通り越してこの世の地獄、不運を嘆いた方がまだまだ圧倒的であり正当な反応かも。

 ペコラたちは鑑賞しながら、もぐもぐ適当になにかしら食べた。ストレス発散によく効く、かも。考えても解決策ってあるのだろうか。試しにアルクレイに聞いてみた。横を向き口を開く。


「めんどくさいな。サボるか」


 ペコラたちは美味しいものを食べに行こうとぶらぶらすることにした。適当なところに行くときは、単一の国ごと適当に選ぶ。地図を広げて目を閉じつつ転移する。


 聖女として動くわけでもなく、何をするわけでもない。ずらずらと二人で聖女という肩書きなしで旅をするのが趣味になりかけている。


 これが面白いのだ色々。旅番組が面白そうなのは何となく知っていたが、体験するのはやはり別次元。しかし、だ。

 夫婦に泊めてもらったりなんて出会いだってあるからこそ、悪いことはそこまでない。旅は出会いもあるから、まあまあアリかな。いい記憶もあることだし。


 なので、国々を超えて転移することにした。学園にはしばらく休むと伝えて、王太子たちになぜか話しかけられて怖くてとうっすら言っておく。

 あらかじめ状況を言うことにより教師から何か、働きかけてもらえないかなぁってね。だめならば、教師と学園に落第点をつけるだけで終わるのみ。


 ざかざかと足音を立てる。国の国境を行くために並び、国の中に入った。横断する時はこうするのが決まりなのである。姿はどこにでもいる少女なので普通に入れた。


 思っていたよりすんなり入れてよかった。ブラブラ歩いていると「ずる〜い〜!」という声が聞こえ何事か、と見に行く。


 遠目でよくよく見ていると、女の子二人が揉めている。揉めている内容を聞いていると、アクセサリーを買ったけど一点しかないものを買ったら妹が気に入ってしまい、欲しい欲しいと我儘を言っているところだった。


 ああいうのを見ると不意に過去のことを思い出す。年齢が離れているとかならわかるけど、二人の年の差はあまりなさそうだ。特に離れてなさそう。

 なんだか他人事じゃない。それに、姉の方はまたかと言わんばかりの顔をしている。慣れているな。女の子の嫌なのに否定できないといった表情に顔を深く暗くさせた。

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