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58生徒会で平民しか真面目にやってない問題

 アルクレイたちは鬱憤を晴らすように食べて食べて食べまくる。パクパク食べてお腹いっぱいになる二人。カランとフォークとナイフを空の皿に置いてお茶でさっぱりさせた。


「ご馳走様」


「うまかった」


 二人は満足して映像を映す。何をかと言うと、王太子たちや婚約者の女たちだ。なにを企んでいるのか聞いておく必要がある。耳汚しになるから聞きたくないんだけどね?


 ペコラはあくびをしつつ、画面に耳を澄ませる。今は夕刻なので生徒会専用の部屋で話し合っている。

 私物化させ過ぎてる気がするんだけど、誰も指摘しないのだろうか。というか、貴族だから誰も言わないかな。

 どうでもいっか。なんせ、行く予定も入る予定もなにかをしに行く予定もないから。何かされる可能性がどっちかと言えば高いんだよね〜。

 本当に災難に遭う。アルクレイはもぐもぐとメロンパフェを食べている。


 白磁のテーブルに置かれていたのは、天高くそびえ立つクリスタルのグラス。

 頂には網目模様も美しい、瑞々しい薄緑色のメロンがごろごろと贅沢に積み上げられている。

 スプーンを差し込めば完熟した果肉がすっ……と吸い込まれるように柔かく沈んだ。


「太るよ?」


「人外だから問題ない」


 口に運べば舌の上でとろぉりと果肉がほどけ、じゅわりと高貴な甘みの果汁が口いっぱいに弾け飛ぶ。下で待ち構えているのは冷たいバニラのアイスクリーム。

 ひんやりとした冷たさが舌をなで、メロンの香りとまったりと溶け合っていく。食べ進めると、自分グラスの底には黄金色のクッキー。


「聞いてるだけで食べたくなる」


 スプーンが触れるたびにさくっ、ざくっと小気味よい音を立て、とろけるようなクリームの中に、香ばしいアクセントをぱちっと弾けさせた。最後の一つは透明なジュレ。

 アルクレイはぷるぷる!と震えるそれが喉をつるんと通り抜けるたび、全身の疲れがふぁぁ……と溶け出していくような至福の感覚に包まれていく。


「映像に変化があるみたいだぞ」


「うん。見てるから」


 つい、サクサク音に気を取られた。


 部屋を支配しているのは規則正しく繰り返されるさらり、さらりという紙の重なり合う音。指先が書類の山をぴしっと整え、一番上の端をすっと掬い上げる。


 あの女生徒はどうでした?から始まる会話。


「普通の女の子に見えましたよ」


 ぱらり。


「ですが、なにか嫌な予感がします。皆さん」


 捲られた羊皮紙が空気を切り、かさっと音を立てて左側へ積まれる。


「あなたのことですから、妄想ではないとは思いますが」


「平民ですよね?帝国の」


「迂闊になにか言えるわけもないしな?」


 羽根ペンがインク瓶の縁に触れ、ちんと微かな音を立てた。直後、紙の上をペン先がしゃっしゃしゃっと鋭く走り、サインが刻まれていく。


「でも、不安なんです。なんとかあの子に監視をつけて欲しいです」


 私語が多いなぁ。凄く喋ってる。話しているのは王太子の婚約者であり、転生者だ。何に警戒しているのもさっぱりで、転生者とバレることもしてないのに。


「態度はそっけなかったが、それでなにかするってのも理由がないんだ」


「でも、やはり何かありそうなのでお願いします」


「……わかった。父上に、いや、お前たちの誰かに見張らせてみる」


「え、僕たち?」


 しゅぱっ。澱みのない動作で次のページが弾かれると、すぅー……指先が一行一行をなぞり、時折紙の束をトントンと机に打ち付けて揃える硬い音が響く。

 ぱらっ、しゅぱっ、かさりと乾いた音のリズムだけが加速していく。指先の腹が紙の表面をさっと滑り、インクが乾くのを待つ間もなく次の束がどさっと机に置かれた。


 話しながらも澱みなく慣れた動きで仕事を裁く生徒たちの面々。特に平民の人は会話に混ざれないから無心に手を動かしている。いや、平民の彼一人しか手を動かしてない。ずっと見てるけど、貴族の生徒の五倍の動きをしてる。


 彼らが普通よりもノロノロしてるせいで、余計に早く見える。さっきからまともに仕事しているのが彼一人。遠い目をしながら、何も聞いてませんと言いたげに作業をし続けているので画面の中で目立つ目立つ。


 いや、仕事しろとペコラはマリナサらに突っ込む。なんのためにここにいるんだ?むしろ邪魔してるまで言えるくらい、私的な話を続けてる。こんな感じの会話をとうに二十分堂々巡りさせているので、この会話が初めてではないことがわかった。

 よく私語があるから、慣れてるんだろうなって目で仕事をやる一人。この生徒会はおそらく彼によって回ってるのでは?


 カワイソー過ぎる。さっきからする、ペンと紙の音の発生源は彼から。澱みない様子で機械みたいに働いている。ペコラとアルクレイは二人して貴族たちの尻拭いじゃないのかと引いていた。

 これでもうわかった。ペコラたちを無闇に何の理由もないのに、監視しようとしているということが。最低だ。倫理観が終わってるんだけど?


 腹が立つので王に速達で手紙を送る。送ると返事はすぐ来るのだろうが、まだ来ない。

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