46聖女ツィツィ。数々のラダツィ国が定める法律違反により逮捕する
国民もストレス過多だったし、この国の王はやはりダメダメだ。そんなんだから聖女たちも嫌味を投げかけるのだ。
本来の聖女は心の余裕があるから心が荒まないのに、嫌味を言うくらい言いたいことを我慢させていたのは普通に怠慢だ。
「ま、待ってくれ」
王が追い縋ろうとしたが、無視して大国の聖女たちは去っていく。彼女たちに軽んじられると国として厳しいことになる。
「帝国の聖女に……打診しよう」
手をぶらりとさせて、王はうつろな瞳で言う。ツィツィが大変なことになっている、という事実は隠された。混乱に陥るからだ。
それと、満遍なく恨みを買っているツィツィの失落は貴族たちにも影響はある。ツィツィを放置している王を置いておけない派閥があり、だからといってツィツィをどうにかもできないからと何もできなかった者たちが動き始めた。
「ああっ、どうなっているのだ」
「王、嘆いている間にも爪は」
「わかっている!わかって……いる」
爪は爪なので剣を使えば簡単に切れる。そうして、兵士たちは爪を除去していき聖女を苦心しつつも外へ出す。
「うう!うえっ、うう!うううう〜。うー、ううう」
泣きすぎて言葉が言えなくなっている。聖女を外に出して庭で聖女の世話をするが、やはり妖精の愛し子の権能が発動しない。
「ツィツィ様、妖精に願ってもなにも起こらないのですね」
聞き取りをするとひたすら首を振る。他の願いはどうかと聞くと、他の願いはいつも通り聞き届けてくれるらしいと聞けた。
当然、それはペコラによる魔法を無効化するバフ付き。ゆえに、妖精は手出しできない。
「切って!早く」
モタモタするなと言うツィツィに死んだ顔で爪を切っていく兵たち。やがてクーデターでも起きるんじゃないかって顔でやっている。王も悪化させてることに気付かない。
「やだあー!髪があああ!!」
爪を切らせていると髪が伸びてきた。兵士たちは困惑した顔で髪も切るのかと聞くと、怒りに満ちた顔で睨みつけながら「言わなくても切りなさいよ!」と八つ当たりしてくる聖女はいつか、体も切られそう。
こうなったら、全ての魔法を無効化してしまおうかな。関係ない人に罪を犯させるわけにはいくまいし、と寝るためにあくびが出る。
「なんでなんでなんで!?」
「聖女様?」
唐突に発狂し始めたツィツィを、周りが苛立ちの瞳を向ける。もう終わりそう。
聖女が妖精がなにも叶えてくれなくなったと言い始めた頃、さらに周りの思惑は一つの収束に向かって足並みが揃えられていく。
彼らは聖女をもう自由にさせたくないと動き始めていることを把握しておく。止めたい人たちがいたし、下手にこちらが手を出すよりも今回の終わりにはいいのかもしれない。
やられたことを思えば最適かもね。怪我させられたわけでもないし、させるのならばやりたい人がやるべきか。こういったことは、恨みを買った人の行く末を決めるのは自分よりも自国でしてもらう方が、楽。
ツィツィが長年貯めてきた負の感情の貯金は多かっただけ。所詮机を隠されて学園生活を送れなくなっただけなので、損らしい損はしてない。
「アルクレイは?どう?もう怒ってない?わたしはなーんか飽きた」
「お前がいいならいい。どうやらあいつらがなにかするんだろうしな」
「国自体にも責任は果たしてもらうけど、それは賠償金でいいかな?ツィツィをどうするかによるけど」
「そうだな。お前はこの国の者たちにツィツィを裁く権利をやった。たっぷり取っていけ」
アルクレイはニッとウサギらしく笑って、同意を得られたのでおのれも何も言うことはない。好きにやればいいと向こうに譲渡しよう。
「借りだから」
画面に向かって呟く。
後日、爪と髪が伸びなくなり、それでも妖精の力が使えなくなった愛し子は叫んで暴れて泣いたが戻ることはない。それを縫ってやって来たのは貴族たち。
「な、なによ、あなたたち!?来ないで!」
「聖女ツィツィ。数々のラダツィ国が定める法律違反により逮捕する」
「は!?逮捕!?」
ズカズカと部屋にやってくるなんて、聖女は王より上の存在なので絶対にあり得ないことだった。
「ふざけんな!誰の許可を得てそんなことを?私は聖女よ?」
「仮にも聖女だったものの話し方ではない。それに、もうお前は聖女ではない。力が消えたことは知っている」
先頭に立つ男が鋭い目で見ている。男の娘は、数年前に母の形見をこの聖女に取られて酷く落ち込み、今でもなんとか飲み込み生きている。形見と言ったのに、気に入ったせいで返さなかった。代わりに同じ型のものを渡してきたことにより、火に油を注ぐ真似をしてくる。
最悪で性悪なところが昔から有名で、皆は妖精の力があるために我慢してきた。大きいものから小さいものからの罪を積み重ねて、今、大きな波となりツィツィを飲み込もうとしている。
「な、ほ、他の聖女たちがわたしが本物とわかってるわ」
「語ることを拒否しているから、聞くことはできない」
呼んでと叫ぶが、参上することも拒否しているから無理だと言われる。
「私が呼んでと言っているのよ!聖女ツィツィがっ」
ようやく元に戻った髪を振り乱して、正常な爪の付いた手を振り回す。




