44聖女が望んだからと実力とかけ離れたクラスにいれるなど権力を履き違えている
想像しただけで面白い。きっと泡を吹いているのだろうなぁ。クスッと笑った。うっかり笑ってしまった。
でも、面白かったのだから仕方ない。王なのにうさぎの跡を額に残しているのである。見る機会があったら見に行こう。
パフェを作り終えた面々は、パフェを作った後は互いに交換し合う。交換し合うのが好きらしい。彼女たちは常に仲がいいなぁ、と常々思う。
「アルクレイ様、王たちの話し合いはどうなりまして」
「ああ。皇帝の怒りに終始、頭を下げっぱなしだ。何もする気がない奴の態度なだけはあるな」
少しの感想で済むくらい圧倒的な対談だったらしい。対談なんて言葉ではなかったのは簡単にありありと、想像できる。
「学園生活どうなるの?」
「残念ながら……帰ることになりそうね」
残念そうに見えない笑顔で応える人たち。すでにそうなる予感がしていたとのこと。ペコラは続くのかなと思っていたけれど、意外な結末かも。
通い続ける人もいるだろうという理由だ。せっかく入学したのに、こんなことでやめていいのだろうかとなるわけで。彼女たちに合わせなくても構わないと何度も言うのに、通うと言う人が居ないなんて。
足並みを揃えることがないペコラは、正直聖女たちにとって頭の痛い存在なんだろうなと薄く考えていた。そうじゃなければ変だ。だって、好き勝手する人を好きな人なんている方がおかしい。
ペコラなら関わり合いになりたくない。しかも、一番強いので止めようがないし。厄介な少女。
「通いたい人がいたらこの空気じゃ言えないんじゃない?」
「それはございません。聖女に優劣はありませんから。意見を言えない者もいませんよ」
そんなのわからないではないか、と言うが意見を言えるように時々集まるのだと笑う聖女。
「世界を動かすことができるから、流れに身を任せていてはいけないのです。皆、一人ひとりに自負がありますからね」
こちらを見て安心させるように紡ぐ。
「本当にいいの?」
「ふふ!心配してくださるなんて、嬉しいですね。ご安心を帝国にも学園がたくさんありますからね。そこへ編入すれば問題ありません」
「あ……そうだった」
この国にしか学園がないわけではないから、ちょっと気持ちが急いでしまって肝心なところが抜け落ちていた。
「この国の学園に通う利益って」
「ございませんね」
すごく簡潔に言われた。ないんだと驚く。スカウトとか、魔法大国なので魔法が普通のものよりいいものを使えるようになるとか、ありそうなものだが。
「それに、質が悪すぎます。いくら聖女が望んだからと実力とかけ離れたクラスにいれるなど、権力を履き違えております」
静かに授業を受けるのならまだしも、ワガママや諍いを引き起こしている。上位クラスに居ていい精神年齢ではないと、バッサリ切った女たち。
「恨まれて生きていけるほど、聖女は万能ではないです」
「そうだね」
「おや、愛し子だから万能なのは決まっているのですが、なにか知っていたりしますか?」
「知っていると言えば知ってる。でも、相手に教えても信じないし嘘つき呼ばわりされるかもしれないし。言うつもりはない。最後まで好きに振る舞ったらいいと思う」
「寛容ですのね」
聖女の一人も何が起こるのか、わかっているのか薄ら笑うだけでこちらを見てなら言う。妖精の愛し子はとある理由で、取り扱い注意。
「妖精の愛し子には極力近づかないで」
心得ています、と皆はゆっくり応える。
それからボイコットは続く。彼女たちは横暴な聖女を許しはしないと行動で示すのだ。そうなると、学園でも土台が緩み始める。元々あんな聖女のことを尊敬もしてないのだから反発などたくさんあるだろう。
「そこがグスグスに崩れているみたい」
「そうだな。学級崩壊よりも学園崩壊、いや国の崩壊が起こっても可笑しくない。今回はお前が起点だと思われるぞ。少し距離を置くなりなんなりはした方がいい」
「今頃は離れても手遅れでしょ」
もうすでに、自分に嫌がらせをして他の聖女が来なくなったことを皆知っているのだから、無意味だ。全ての国民が知っているわけではないが、調べたらわかるってもんだし。
帝国の聖女をボイコットさせた、魔法大国の歴史的にも最悪な事件として議会も荒れているらしい。帝国の方は沈黙だ。皇帝が王に怒った以外の行動はない。
基本的に帝国の方針は聖女の自由意志に委ねられていて、聖女がボイコットしただけで影響力は計り知れない。なので、なにもしなくてもいいと判断されたと思われる。
「そろそろ帰ると話していたぞ」
「短期入学もなくなったから、そうなるか」
「お前も、今回はなにかするのか」
「うーん。どれにしようか迷ってる最中」
なんの報復をしようかなと、色々画面を出してみたりしたけど。なんかこうしっくりこない。
「なにか、案はある?」
「前は雨だった。その次は映像のループ。今回も映像と……それを足したものをするのはどうだ。聖女が聖女の勉強机を無くすインパクトはあまりなさそうだ。言葉だけ聞くと非難を浴びさせるにはいいんだがな。映像にしてもされたことがないやつからすると、そんなことでと思われる」
確かに字面にするととんでもないことをした感じがするけど、映像にすると誰もいない机を動かして聖女が戻ったら、教室内が騒然としているだけだし。
お腹が空いたのでなにか摘みながら、映像を見直す。やはり机を動かす絵面は地味。そして、机を動かした人たちを見てみるとガッツリ家族に叱られていた。
いや、叱られていたなんてものじゃない。涙をダクダク流してなんてことしたの!と実行犯を殴っていた。
「なぜ、あんな真似をした!?」
「ぐっ、うっ!す、すみま、ごめん、なさいっ」
「ごめんで済むわけがないっ!」
「聖女様に謝ったのよね?当然っ、当然、もう謝ったのよね!?」
「あ、そ、それは」
吃って口をパクパクさせる。
「はっ!?謝ってないの?」
「謝って、ない」
また一撃、二撃を撃ち込まれてよろめく子ども。子どもと言っても最上クラスの者だ。本来ならば学校の生徒から敬意と憧れを一身に受ける身。
なのに、聖女の机を隠せと言われて他の者と隠して以来、クラスメイトたちや家族から始まる街の人たちの視線が冷たく刺す。
家族から言われたのは、頭の上に聖女の勉強机を隠した過去を持つことがツラツラと書かれているらしい。本人にはわからないし読めないようになっている。




