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34ホマロという少女の能力は他者からわかりにくすぎて本人に還元されない

 痛々しいので、他の聖女に頼みたくなった。ここまでになったケアが必要な子どもは自分には荷が重い。重すぎる。


「いや、わかってるから言わなくていい」


「うん……」


 頷いた割には顔が暗い。早く誰かにバトンタッチさせたい。とにかく、なにか食べさせないと。栄養豊富なシリアルをふやかせて与えた。


「え、甘いっ!甘いっ!」


 ご飯として提供すると、甘みにすぐ食べた。栄養豊富な野菜ジュースを渡すとそれもごくごく飲む。落ち着いた女の子を前にして、理解してもらえるところまで話すことにした。聖女ということを。


「え、違います。私は聖女じゃありません」


 何度も首を振るが、確実に聖女なのだと否定を否定する時間が来てしまう。


「私が見たところ、恩恵という聖女の中の代表的な能力。人数制限があるのかもしれないけど、恩恵はある程度の願いを叶える他者に与える系統の力」


「与える?」


 この能力のデメリットは、本人に還元されない可能性があること。この子が適用されていたのなら、栄養の行き渡っていない生活をすることなんてなかった。毎日笑って紅茶を飲むこともできていたと思う。


「私が、聖女なんて」


 あと、距離も関係あるかもしれないしないかもしれない。いくらなんでも聖女の父親が好き勝手できる範囲を、常識的に超えている気がする。

 これもまたまた、ペコラには人のことを言えない。真の聖女を捨てた両親を持つので、もう何が起こってもおかしくない世の中。


 日々の食べ物に困っている聖女が実際いるわけだしな。内心頷き、やがてロイヤルな馬車がドドドッとこの家に来る音が聞こえた。

 家はパフェ農園と隣接しており、敷地は広大な場所を広く買ってある。例え、皇帝が多人数で来ようと対応できるまである広さだ。


「ペコラ様、ご在宅ですか?」


 ロイヤルガード、別名近衞がドアを叩く。魔法で対応すると映像が投影されて、互いに姿がそこにいるように見える。


「いる。保護した子も起きたから連れて行ける」


 簡易的になにを言われるのか最適解を心得ているので、彼に無駄なく伝えられる。近衞は頭を下げて、皇帝が外で待っているからそちらの都合でよければ話を聞かせて欲しい、と頼まれた。

 聖女は至高の存在という世界からの位置付けなので、対応するしないも個人の自由だという。なので、無視しても許されるし、対応してもよし。


 ペコラは寝てもいいし、ホマロも来なくていい。保護されていいし保護されたくないならどこでも、好きに過ごせる。

 皇帝が呼んでいるからといって、行かなくていい。自由権が強い立場。でも、今回は後ろ盾の聖女を募るつもりなので説明しに行きたい。


 行くと伝えて、不安げに見ている子どもに少しだけ出てくると伝えて外にいく。


「お菓子好きなだけ食べて。残しても怒らないし、食べなくてもいいし。どこか行きたかったから好きに出歩いてもいい。どこにいても怒る場所もない。わかった?」


 ゆっくり問いかけるとホマロはこくんと頷く。菓子を色々出しておいて、待ち時間を退屈させないようにしてみた。

 外にアルクレイと出る。やっと声が出せると言わんばかりに口を開放するウサギ型のなにか。種族は不明扱いなんだよ。


「聖女と言われても、あの能力じゃ気付きようがないな」


「私もその立場なら、気付かない。気付く方法がないし、本人は聖女と証明しようがないし」


 ステータスを見れる、といった自己にかけられる魔法ができたならば別なのだが。


「奇跡的に他の聖女に会えたなら、覚醒済みだから気付いてもらえたんだろうけど、見に来た聖女は覚醒前と思われている方しか会ってなさそう」


 あの暑い国は片割れしか聖女がいなさそうだし、いたとしても会える機会がない。都合よく連れて行ってくれるはずの父親は不在。仮に女の子が聖女でも能力不明で再び捨てられる可能性も高い。恩恵は他者に行くので。


 そうなると、聖女とみなされはするがもう一人の方も覚醒前の聖女ではあるから。片割れが、能力を持つものとしていつまでも本人が覚醒しているのに、なにももたらさないとして無能扱いを受けるような、アンバランスな厄介な力だ。


 森に放置案件が再び巻き起こる。天才でもなさそうなので、普通に死に至るケースに陥るだろうな。ゾッとする。


「ああ、ペコラ様」


 皇帝が立ち上がるので面倒だ。必要ないと手で示す。そういうのは時間の無駄。


「詳しいことを書いたけど、なにか聞きたいことあるんなら答えるから」


「大変助かります」


 相手はホッとした顔でこちらを見て、送った文章に色の違う線を引いており聞きたいことに線引きしたのだなとわかる。

 付箋がないから、そうやっているみたいだ。付箋を売ったら、意外と売れるのかもしれない。本件と関係ないことをツラツラと考えていると、質問をされる。


「保護した聖女は起きたのですか」


「起きた。聖女と説明したけど、能力が実感を感じるものじゃないから信じられないみたい。他の聖女に会ったらすぐに皆わかるから、機会を設けて欲しい。後ろ盾も」


「そうですか。能力を聞いても?」


「利用されてしまうから言えない。欲がない人も、つい魔が指すからね」


 首を振って強く断る。ホマロにも口止めしているが、能力や関連のある言葉を言わないように禁止ワードとして口にできないように、魔法で栓をしている。

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