31公務を婚約者に丸投げ?公務をなんだと思っている!
他国も切り捨てた行動を批判するだろうから、この国は悪い手ばかりを選びとっている最中だ。
「部屋に……いや、地下牢へ」
「え、え、地下牢!?嫌!」
暴れる少女を兵士たちが連れていく。やれやれとホッとする大人たちにペコラはイラッとした。責任を被せる存在を切り捨てることで、国としてもう安心だなと彼らは安堵したのだ。聖女たちだって、納得しないというのに。
「はあ、全く、王子の女性の趣味には困りましたね」
「いやいや、王子を諭して菓子を食べさせるなど最近の女は進んでるのですねえ」
「兄上」
「やり方が古すぎる。この方法ではあちらの方々をさらに怒らせることになる」
今回も過去のように片付けていたが、今のままでは燃料を投下するだけだとわかっている若い世代の王家の子どもたちが、青白い顔で悔しげに歯噛みしていた。
危機感を抱くのは先王もだろうが、子どもの世代ほどではなさそうだ。
「保険としてもう一人、罪人を裁くのはいかがでしょうか」
調子に乗り出す者たち。王子たちが不味いと声を張り上げる。
「軽率に罰を下すのは待ってください。聖女様は我々全員に怒っていました。特定の誰かではありません!」
核心を突いたセリフだ。ペコラの胸の内なので、正解。なかなかにわかっているな。それとこれとは話が別なので、今回の件で加点されることは一切ない、内申点だけど。
内申点と聞くと少し胃が痛くなる。あれは目に見えるものではなく、人の匙加減に委ねられた他者による己の評価という見方を今もしている。辛いものであろう。
「我々に怒っているのではなく、あなたたち、王家のものに集中して怒っているのでは?それと、聖女様を学園に案内するのは王家主導の案件のはず。それなのに、公務を第二王子が放棄したのが今回の騒動の始まりなのでは?」
「そ、れは……兄上がやりたいと手をあげたので」
「聞いた話の時期を照らし合わせると男爵令嬢と懇意にしていた時期にかぶってますが、そんな第二王子に任せて安心なされたと受け取ってよろしいか?」
「倫理観を失った学生が、蔑ろにしている婚約者を蹴落とすために一人で案内させたのか?今回のことは令嬢である未成年の婚約者がお一人でやった、と聞いておりますけれど?」
「はぁ?公務を婚約者に丸投げ?公務をなんだと思っている!?」
聞いてない人たちがきつい目を、王家たちに向け始めた。今それを言い合うって、遅すぎる事案だと思う。聖女が来る前に済ませておくべきことだったのだけど。
遅いというより、話題に触れる気がなかったのに問題が悪化して責任を今になって押し付ける思惑。
誰一人だって第二王子が真面目である、評判のいい人柄と思ってなかったのに。学生の年齢になってから浮上し続けていたことを突き始めるのは、いまさらとしかいえない。
わかっていたのに責めるなんて矛盾している。だが、責めないと自分たちが甘い蜜を吸えなくなるのでここぞとばかりに付け入っていた。
「皆には申し訳ないと」
「謝るべきは聖女様だ。この映像が流れている限り怒りは解けていないという指標にはなるが」
高位貴族が意見を言い、苦い顔で映像を見る。そんな顔をしてもやめないよ。男爵令嬢は地下室で、他の人たちを部屋にと別れさせる国の倫理行動には、愛想も尽きる。元々ゼロより下のマイナスしかないのに。
流石は今の今まで問題児の王族を放置しただけはある。残りの王子がマシだからと思っていたに違いない。そうはならなかった。狸の皮算用。
最悪の連鎖により、頑張っていた方の兄弟たちは三連単のつながりのせいで、国自体が瀬戸際になっているのだ。最低な兄弟をなんとかするべきだった。
親の王妃たちが、先になんとかするべく動くべきだった。動く気はないのはわかっていたので、この運命は変えられないだろう。
性格が危うい子どもをあの歳まで、コントロールしようとしてなかった頭で打開策なんて捻り出せるとは、到底思えないし。放置はまだいい方で、王族として同等にいい子と揃えて与えている時点で失点。
「わ、わたしたちが聖女様に謝りに行きます」
全員で頭を下げて、出てくる聖女に謝罪の意思を見せることを提案する王妃。息子のことなので親が謝ろうという意識からくるものなのか?
それとも、残りの子どものためかな?
「謝罪もいらないと先に言われております」
この国の聖女担当官が項垂れて、首を振る。そんな、と声に出す人たち。手紙がいらないのなら言葉も必要ないよ。
「どうすれば」
「頭を下げ続けるのだ」
帝国に向けてなにか送ることも話し合われていく。いつもなら、お菓子を送るところだが今回は殊更やめておくように皆に釘を刺す王。
お菓子を壊した詫びに菓子を渡したら終わるよね?とペコラは少し笑いそうになる。今後お菓子を軽率に送れなくなる。となれば、報酬の他に渡せるものが非常に少なくなる。
聖女たちは宝石なんて自分で買えるくらい稼いでいて、必要ないことも有名だ。
「今日はここまでかな……寝るね」
「ああ」
首脳陣らの話の中身がスケールダウンしてきたので、映像を見るのをやめて寝ることにした。アルクレイを脇に抱えてベッドに入る。誰も入って来れないのでぐっすり安眠して寝落ちた。




