2 手術を決めた先生の言葉
どんな主治医に出会えるかって大事だなぁってこの時心底思った。
今日はMRIだけだよ!ということで病院へ。めちゃくちゃ広い病院なので、よく場所が分からない。最初に行った時は連れて行ってもらったし……って案内板見てたら職員の女性の方に案内してもらえた。お忙しいのにすみません……。
受付を済ませると、最初にMRIを撮った部屋ではなく更に奥へ案内される。今日は造影剤を入れて撮影すると聞かされていたのでもう一度注意事項と同意書にサインをして、造影剤を入れるためのカテーテル?を挿すことに。
研修医の先生がめっちゃ真面目に挿すとこ探してくれる。いい先生だ。針を皮膚が薄めのとこに挿すからそりゃ痛いですが、まあ我慢できないほどじゃない。カテーテル挿してMRIへ。
造影剤を入れての撮影になるので、前より時間がかかるらしい。頭固定してもらって早速撮影。
……眠い
……眠い
……めっちゃいい感じに眠い
MRIの中に入るとめちゃくちゃ眠くなる。だけど動いたら撮りなおしになっちゃうから、何とか意識を保ちながら寝落ち回避。何度か意識飛んだけど。
今日はこれで終了。検査自体はさほど疲れなかったけど台風の影響か天気は乱れてるわ暑いわ蒸すわで、そっちのほうがよっぽど疲れた。
さて次は来週、診察と今日のMRIの結果を聞きに行く。私の頭にあるものは果たしてどういうものなのか、もうちょっと詳しく分かるだろうとのこと。怖くないと言ったら嘘だけど、知らないほうがよっぽど怖いわ。
翌週、まず耳鼻科へ。
薬が効いてきてるようで聴力が少し回復してた。ので薬はしばらく続けることに。
そして、脳神経外科へ。わあ…緊張…。と思ってるとあっさり呼ばれて診察室へ。入院中に説明に来てくださったドクターだった。このS先生が私の主治医で、手術の執刀をしてくださることになる。
「先週の木曜に撮ったMRIをまず見ましょう」
「はい」
造影剤入れて撮ったからか、前よりくっきり分かる腫瘍の形や大きさ。そのうち写真もらえるかなぁ。なんて考えてた。
めちゃくちゃ分かりやすいんですよ、あ、明らかに異物だって分かる。で、先生が腫瘍の位置を示しながら説明してくれた。
「この腫瘍の位置に聴覚の神経の管みたいなものがあると思ってください。そこに巻き込むように腫瘍が広がってる状態です」
「私の腫瘍の大きさって具体的にどれくらいなんですか?」
「6・5センチくらいです。小脳全体の1/4くらいですね」
「相当大きいんですか?」
どれくらいの大きさが普通なのか全くわからないからね……。
「はい、大きいです。随分ゆっくりと大きくなってきたものだと思われます」
「どうしてゆっくりだって分かるんですか?」
「これだけ大きい腫瘍で、急激に大きくなったものであれば、脳内出血や、もっと他の症状が出ていてもおかしくありません。しかし、あなたの症状は難聴の症状だけです。ここにきて、腫瘍が聴覚の神経を圧迫してきているんでしょう。脳はとても柔らかいです。だから、ゆっくり大きくなってきた腫瘍を脳がクッションみたいに受け止める形でここまで大きくなるまで症状なしだったのでしょう」
「出血はないんですか?」
「今は大丈夫です。ただこの先は分かりません。おそらく良性の腫瘍だと思いますが、良性でも脳内出血の可能性がないわけではないんです」
「治療方針としては手術と言うことになりますか?」
「もちろん、患者さんが選ぶ方法での治療をします。ただあなたはまだ若く体力もあり、持病もアレルギーもなく、大きな病気もしたことがない。ということで手術を推奨はします。もちろん手術できるかどうかの術前検査や万が一の輸血に備えて、自血採取等、やることは色々あります。後遺症、合併症などの説明もしなくてはいけません」
「じけつってなんですか?」
「脳には血管が無数にあります。手術の際、輸血が必要な事態になった時、使う血液は自分の血液が一番危険がありません。なので、本人の血液の状態も検査することになります」
なるほど。言われてみればそうだわ。万が一必要な輸血の事態になったら、自分の血が一番安全に決まってる。等々、ドクターの慎重かつ、専門用語の分かりやすい説明に一安心ではあったけど、やっぱり手術は怖い。だって頭開けるってことでしょ?
「手術に関しての説明や、リスクのことはまた後日きちんと時間を作ってお話することにしましょう」
「はい、分かりました」
ということで今日はここまで。良性か悪性かは、摘出して病理検査に回してみないと分からないとのことなので、こればかりは手術してみるまで確定できない。
MRIを見る限りでは、脳の他の部位に腫瘍はなく、転移などもないということでこれは一安心。
手術かぁ……と悩みながらも、私はこの時先生に言われた言葉で手術を決断した。
「究極を言うなら、首から下は代替えの治療方法があるんです。でも頭にはそれがない。だから頭は難しいんです」
と。
素人の私にあなたの病気は難しいんです、ととても分かりやすく告げてくれた。あ、この先生は誠実だ、信頼できる、とストン、と私の中に気持ちが落ちた瞬間だった。




