政府見解
日本政府は一月二日の一二時に一つの政府見解を発表した。
「日本に存在する全ての分野の研究機関が調査した結果、 我が国は並行世界、パラレルワールドつまり我々が住んでいる世界は一つだけではなく、無数に存在する中の一つに我々は住んでいます。
そして我々はその無数にある中の一つの世界に我々は何らかの原因によりワープしてしまったという結論に至りました」
前代未聞とも言うべき程の異常事態に政府が出した結論がこれだ。
官邸に詰めかけたメディアは呆然とした。
異常事態の原因は大規模な自然災害や北の国からの攻撃ではなくパラレルワールドに存在するもう一つの地球にワープしてしまったから?
当然信じられるものではない。だがそう言ったのは政府の長たる総理だ。
「それは政府の公式見解ですか?」
「はい、いま発言した一字一句が今回起こっている異常事態の政府としての公式見解です」
質問時間でもないのに前列に座っていた記者の一人の質問に総理は律義に答えた。
記者会見室はザワザワ、とどよめきと会見どころではかった。
総理は両手を上げ静まるように促しながら続ける。
「なおこの惑星、形式上「第二地球」と呼称します。
第二地球には我が国以外の大陸どころか島といった陸地の存在を確認できませんでした。これは日本の全調査能力を実施した結果、出した答えです。
この映像は辛うじて被害を免れたISSに乗り込んでいる日本人宇宙飛行士により撮られた現在我が国がいる第二地球の映像です。
これを見ていただければお分かりになるでしょう」
総理の合図で壇上横に八〇インチモニターが設置され、映像が映し出された。
誰もが一度はさまざまな形で見たことのある青い惑星が映し出されていた。
いや、確かに青い惑星ではあるが二つおかしな点がある。
「ご覧の通りユーラシア大陸もアフリカ大陸もアメリカ大陸、オーストラリア大陸、グリーンランドといった大陸、島々の一つすら存在しません。
もちろん南極や北極も存在しません。
さらに日本近海や領海内に新たに大小さまざまな島を複数確認しました。これらは新たに出現したものもあれば既存の島を塗りつぶすように大きくなっています。
原因は不明です」
総理は淡々と説明を続ける。
いつしかマスコミは総理の説明に静かに聞き入っていた。 呆然としていたという方が正しいかもしれない。
「最初にパラレルワールドの中の一つにある地球にワープした、といいましたが、これらを裏づける事実が多数確認出来た上での発言です。
詳しい説明はこれらを立証した博士から説明してもらいます」
総理は壇上横に立っているスーツ姿の女性を手で差し、一旦言葉を切り演台に置かれている水差しからコップに水を注ぎ少し飲ん込んだ。そして今後の政府の対応を発表する。
国どころか島すらない、これがどんなことを意味するか。 それは物流のストップを意味する。石油や天然ガスといったエネルギー資源に食料、衣類、鉱物資源、化学薬品、無数の原材料。
一切が輸入品はたった一夜にして自動的に永遠にストップした。
ダメージは輸入業界だけに止まらない、輸出業界も及ぶのは自然な成り行きだ。これらに連動して外資系の会社や海外に本社を持つ会社などは軒並み、というより全部が倒産し日本、世界史上でも例に見ない大量の失業者が生まれた。
さらに外国人が消える、これはもう一つ意味することがある。日本に滞在する外国人の数は三二〇万人以上。
内訳としては一一〇万人が永住者で次に多いのが留学生で三一万、技能実習(外国人労働者)が一八万人だ。しかもここに観光客や中継地点として一時的に来日していた飛行機や船、不法滞在者が加わるのだ、その数二五〇万以上。
三六〇万人以上もの人間が消えたことも一大事だが、その中でも重大なのは一二八万人もの外国人労働者だ。
政府は移民政策こそ取って来なかったが、外国人労働者は積極的に受け入れていきた。
不法滞在者もその一部で、彼らを使うのは主に中小企だった。
少し前までは下町の工場といった場所で外国人労働者は活躍していたが、今となっては飲食店にコンビニ、介護、医療分野でも外国人労働者は増えている。
特に集中しているのは東京で、外国人労働者の三割が東京に集中している。
店に入れば高確率で会える。二〇一一年では六九万人だったが、六年後には倍近い一二八万人にまで増加している。外国人労働者の存在は年を重ねるごとに日本の死活問題、生産性に関係している。
「全国で発生している外国人の失踪者に関してですが。
調査の結果、全ての外国人が消えたという結論に達しました。今回発生した日本人・外国人失踪者については関係各所が全能力使い引き続き捜索します。
ご家族やご友人の皆様はどうか落ち着いて続報をお待ちいただきたい」
そう、消えたのは外国人だけではなかった。
近年は年明けなどを海外で過ごす人間が年々増加傾向にある、この年は昨年から少し増加し七三万人もの日本人が出国していた。当然のことながら全員と連絡が取れずにいる。
日本人と外国人との間にできた子供たちは何故か分からないが消えなかったのである。
この謎はあらゆる機関が調べたが解らなかった。
そもそも別惑星への移動したこと自体が分からない時点で無理な話である。少し経ってから政府が出した公式見解を出す
「消えたのは日本人の血が入っていない人種だけで、日本人の間にできた子つまりハーフなどは消えなかった。
そのため日本人とハーフだけが消えずに第二地球へ来てしまった」と。
さらには原因不明の電力消失が全国で発生した。
しかも本来なら非常電源といったものもダウンしてたのだから。〇時になった途端にあらゆる場所で電力がダウンし、街灯や信号機は一斉に消えたためそれに要る車や人の事故が多発した。
同時刻、海や空でも起こっていた。
外国人パイロットが操縦していた飛行機は全てが海や陸地・・・中には住宅街に突っ込んだものも多数あった。
これによる二次、三次災害により死者重軽傷者含め三万人以上も出た。
同様なことは海上でも起こった、貨物船同士の接触や幽霊船とかした大型船が周りにいた船と接触し事故するのが全国の港で発生した。規模で言えば飛行機より船舶の方が大きかった。
事故から半年経ってようやく海上の船の残骸や流失した油、積み荷などが片付けられた。
政府発表では殆どのゴミが片付いた、と発表したがあくまで「殆ど」という注意書きが付いた。片付いたのは事故の規模が酷かった場所の片付けが終わり、地方の規模の小さな地域では油などは回収されたが船の残骸はまだ手つかずのままだった。行方不明者の荷物も加わる。
最初の一年の被害損額は推・定・で一〇〇兆円。
一月一日の一日の一日に限っても死者数五万人以上。
怪我人十万人以上。失業者に至っては計測不可能という結果だ。
記者会見の時に総理が言った新たに出現した島々がしばらくして日本生存の要になった。
尖閣諸島とは諸島という名の通り八つの島で構成されている、一番多き島でも三.八二キロメートルしかない。しかもどれも起伏が激しい、資源といえば水産資源ぐらいだった。
そんな小さな島な尖閣諸島の名前はこれまで国民の殆ど知らなかった。だが二〇一〇年に尖閣諸島沖で違法漁業をしていた漁船と、海保の巡視船が衝突するという事故により尖閣諸島は国民の間に知れ渡る。
これを境に尖閣諸島の領有権をめぐり中国と日本が強く対立することになった。
よく親日国として知られる台湾も、この尖閣諸島の領有権を主張しているときた。
日中台が何故この尖閣諸島の要領権を争っているかというと、尖閣諸島の島自体ではなくその下に眠る海底資源が理由だ。
国連が行った資源調査により尖閣諸島海域には石油・天然ガスが大量に眠っている、という報告書を発表したのだ。
中国が尖閣諸島領有権を主張しているのも海底資源名当てとされてきた。
だが近年南シナ海などにサンゴ礁を埋め立てて軍事基地を建設している、これはアジア諸国に経済的圧力だけではなく軍事的圧力をかけるためと太平洋へ出るための航路が欲しいため、という話もある。
海底資源確保もあるだろうが中国は大陸国だ、石油や天然ガスならパイプラインなどで手に入る。
真に中国が欲しいのは太平洋への航路が大きい。
話がそれたが、尖閣諸島は尖閣島へと名称が変わった。
島があった海域にかぶせる形で対馬より大きい島へと変貌したのだ。
混乱が落ち着いた頃に調査したところ、日本で使用する石油の百年分に近い埋蔵量があるという結果が出たのだ。
さらに比較的に浅い部分、地表近くに油田があった。
裏を返せば足った百年分しか眠っていなかった、とも言うべきか。
さらに政府は全国で海底資源調査を行ったところ、尖閣島を入れて大小さまざまの油田が発見された。
総埋蔵量は日本だけで使うなら少なく見積もっても二〇〇年以上の埋蔵量だった。
かつて「石油の一滴は血の一滴」とまで揶揄された石油が今や吐いて捨てるまでにあるのだ。
しかも島の出現は尖閣島に限らなかった。
日本海だけではなく太平洋側でも同様なことが起こった。中でも尖閣島に並ぶ程に有名になるのは沖ノ鳥島である。
沖ノ鳥島というのは東京都の飛び地で、硫黄島に近く太平洋に面している。
沖ノ鳥島は政府の公式見解ではサンゴ礁からなる島としている。だが一度でも沖ノ鳥島の写真を見れば「島」とうのがいかに戯言かが分かるだろう。
島というより岩の方が正しいだろう。
例に漏れず沖ノ鳥島は昔から中国と韓国から異議が唱えられている(唱えられない方がおかしい)。
日本としては沖ノ鳥島をなくした場合は広大な排他的経済水域(EEZ)を失うのだ。EEZ内では水産・資源開発が好き勝手出来るのだ、沖ノ鳥島を岩と認めた暁には日本に大きな打撃になるだろう。
だが尖閣島同様に沖ノ鳥島は名実ともに島と化したのだ。 しかもその大きさは尖閣島の比ではない。
なんと台湾より二回り程も大きい、それに加えて起伏という起伏が存在しない。
農業に適している土壌に加え広大な平らな土地で、この二つは輸入を立たれた日本には石油と同様に輝く希望の光に見えた。
総理が記者会見で言った通り島は上記の二等含め大小さまざまな島が三三も出現した。
一番小さな島でも佐渡島程の大きさを誇るのた。
主に太平洋側に集中している。さらにそのことごとくにエネルギー・鉱物資源が眠っているのだから。
政府はこれら島々の名称を「新島」と命名し、島の出現に関して
「これら新島は土壌を調べる限り日本列島と同様に最初から存在していたものであり、一夜にして火山などで巨大化したのではない」そう発表した。
さらに日本の悲願であった領土問題が全て自動で解決した。
尖閣島や竹島に加え長年ロシアに実効支配されていた北方四島である択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島の北方四島を含む千歳列島の全ての島々を日本領に復帰を政府は宣言した。
この千歳列島の海域には新島はないが、海底ガス田が大量に眠っていた。
政府は日本列島および千歳列島、新島の開発を発表。
日本列島以外の千歳列島、新島の開発に政府は開拓団を募集した結果、わずか一か月で政府の予想をはるかに上回る六〇〇万人以上もの人が募集してきた。
開拓団などで有名なのは満蒙開拓移民やブラジルへの移民だろう。
満蒙開拓移民は近年に旧ソ連による侵略行為に加え侵略時に起こった略奪や強姦といった非人道行為などでその存在が有名になってきた。
ブラジル移民に関してはあまり有名ではないが移民政策事態は一九七三年まで続けられた。
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