新武器制作①
スイカ割りのあと、レイは一人でレベリングをしていた。
夕暮れ時、潮風が吹き抜ける港街のベンチに腰掛け、狩りのドロップアイテムを整理していると、視界の隅でピコンと電子音が鳴った。確認してみるとコウタからチャットが来ていた。
『コウタ:レイ、 ちょっと相談したいことがあるんだけど、今大丈夫?』
『レイ:大丈夫だよー。急にチャット送ってきてどうしたの?』
『コウタ:実はさ、ダンジョン潜ってたらいい素材が落ちたから武器を新調しようと思って、せっかくだったらレイに槍を作ってほしいんだよな!』
『レイ:俺に鍛冶の依頼ってこと?いいよ!』
『コウタ:ありがとう! もちろん素材は全部俺が用意するし、武器に見合った代金もちゃんと払う! レイの鍛冶スキルなら絶対すげえ武器が作れると思うんだよ。オーダーとしては今の俺の武器はボスドロップで汎用性が高いやつなんだけど、火力特化の槍がほしいんだよな。レイは一撃特化の武器を作るのが得意そうだから頼んだってわけ。』
『レイ:OK! 高火力の槍か。バルド師匠の工房に素材持ってきて!』
『コウタ: サンキュー、レイ! すぐ向かうわ!』
チャットをしたあとレイは転移門へと向かった。
そして工房で待っているとすぐにコウタがやってきた。
「やっほーレイ、素材持ってきたぞ。これで作ってほしいんだ。」
コウタがインベントリから取り出し、作業台の上に広げたのは、『青鉄鋼』と、『迅竜の角』、『変異溶岩の塊』、『エルダートレントの枝』という素材だった。
「おお……! 『青鉄鋼』に『迅竜の角』に『変異溶岩の塊』『エルダートレントの枝』か! どれもすごい素材だね!変異溶岩の塊って二人で倒したマグマゴーレムのドロップ?」
「そうだぜ!それに加えて、残り3つの素材はダンジョンのレアドロップだ。 迅竜の角は落とした敵がとにかく速くて一撃も重かったからいい武器ができそうと思ったんだ!これでとにかく火力特化した槍を作ってくれ!」
「わかった。期待に答えられるように頑張ってみるよ。結構時間かかるからイベント楽しんできて。仕上がったら連絡するから。」
「OK!ダンジョンもう一回潜ってくるわ。」
さて、イベント始まって初の鍛冶だ。レベルも上がったし前よりも更に洗練された武器を作るぞ。
レイは炉の風箱を操作し、炭の配置を微調整しながら炉内の温度を極限まで引き上げていく。ゴォォォと激しい火の粉が舞い上がり、炎の色が赤から黄金色、そして眩い白黄色へと変化していく。
レイは『青鉄鋼』を巨大なやっとこで掴み、灼熱の炉の深部へと静かに投入した。
(コウタが求めているのは、圧倒的な【高火力】か……。とりあえず思いっきり圧縮してみるか?素材は結構用意してもらえたからな。)
炉の中の青鉄鋼が透明感すら帯びる朱色に染まったのを見極め、レイはやっとこでそれを引き抜いた。ズッシリとした金属塊を金床の上に据える。熱気で周囲の空気すら揺らめいていた。
レイが手に取ったのは、自身の手になじんだ超重量の鍛冶ハンマーだ。
「……ふぅーっ」
長く深い呼吸。集中力が極限まで高まり、レイの視界から周囲の風景が消え、金床の上に鎮座する赤く輝く青鉄鋼だけが拡大されていく。
(いくぞ……!)
両腕に力を込め、ハンマーを頭上高くに掲げた。
レイの全身の筋肉が滑らかに連動し、極振りのSTRから生み出される規格外の運動エネルギーが、一点へと集約されていく。
ドガァァァァァンッ!!!
工房内に、およそ金属を叩く音とは思えない、砲撃のような破裂音が轟いた。
しかし、レイの鍛造はここからが本番だった。
一叩きごとに、金床の上から「パンッ! パンッ!」と空気の爆裂音が連続して弾ける。
レイが叩きつけるハンマーの一撃は、ただ振られているだけでなく、呼吸をするように特殊技法の剛腕圧縮を交えた、まさに職人そのものの一撃であった。
カンッ! ドゴォォン! カンッ! ドゴォォン!
レイはその人外の腕力と精密な力加減によって、一打ごとに恐ろしい精度とスピードで推し進めていく。叩くたびに青鉄鋼は硬度を増し、不純物を削ぎ落とされた金属塊は、小さく、そして恐ろしいほどの重量感と圧力を放ち始めた。




