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VRMMOで憧れてた鍛冶職を取ったけど思ってたんと違う....  作者: ヤミラミ


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因縁の再会

太陽の眩い光がどこまでも煌めく海辺の境界を抜け、深緑の樹々が鬱蒼と生い茂る樹海へとやってきた。

その樹海の奥地の『太陽石の群生地』の入り口へ足を踏み入れた瞬間、俺とコウタは眼前に広がる異様な惨状に言葉を失い、その場に棒立ちとなった。


「うわぁ……マジかよ。前回のアイツの爆発から、全然修復されてねえじゃん……」


コウタが引きつった表情のまま、呆然と呟く。


本来であれば、この場所は地面の至る所に『太陽石』と呼ばれる希少な鉱石がある鉱床であった。

だが、今俺たちの目の前に広がっているのは、まるで巨大な隕石群が落下の嵐を降らせたかのような凄惨な死の荒野だった。


大地は激しく削り取られて原型を留めておらず、広大な敷地のあちこちに黒く焦げ付いた巨大なクレーターが何重にも重なり合って口を開けている。生い茂っていたはずの樹木や熱帯植物は一根残らず焼き払われて灰と化し、かつてこの場所を彩っていた太陽石の輝きは失われ、粉々になった結晶の惨めな破片が焦土の表面に僅かに散らばっているだけだった。


そして——その群生地の中央、一際大きく、まるで大穴のように深く抉れ返ったクレーターの底から、ズズズ……と大地を揺らす不吉な振動が巻き起こった。


ドクン、ドクン……と、大地そのものの脈動のような重低音が響き渡る。

穴の底から溢れ出してきたのは、普通の溶岩とは明らかに一線を画す、黒炎を混じえた禍々しい黄金の熱気だった。


周囲に転がる太陽石の破片が熱気に引き寄せられるように大穴へと吸い込まれていき、それらを肉体として組み上げながら、巨大な岩石の巨神がその巨体をゆっくりと持ち上げた。


『変異種・レアモンスター:マグマ・ゴーレム(Lv.44)』


「出やがった……ッ!!」


コウタが長槍を構え直し、息をのむ。


かつて、未熟だった俺たちを完膚なきまでに叩きのめし、この群生地の全マップごと俺たちを吹き飛ばした圧倒的な広域即死攻撃を解き放った宿敵。


しかも、画面に表示されたLv44の文字。

ただでさえ手の付けられないボスだったというのに、前回解き放った広範囲攻撃の熱量が周囲の太陽石のエネルギーと異常反応を起こし、そのままボス自体が強化されているようだ。周囲の壊滅的な地形が修復されていないのはシステム上のバグなどではなく、この個体が絶え間なく周囲の環境エネルギーを喰らい尽くし、地形破壊を維持し続けているからに他ならなかった。


「レベル44だと……!? 前回の爆発の跡が残ってるのも、コイツが太陽石の残渣を喰らって変異し続けてたからか……! 相変わらず無茶苦茶な威圧感してやがる!」


コウタが汗を滲ませながら、柄を強く握りしめる。


「ああ。本来なら適正レベルのフルパーティで挑むような化け物だ。……だがな、コウタ」


俺は背中に背負った『深海鋼の重圧大剣』の柄に手をかけ、一気に引き抜いた。

黒銀色の刀身が、荒れ果てた焦土の光を反射して重厚に鈍く輝く。


「俺たちは、あの時とは何もかもが違う」


かつての俺なら、この身の丈を超える重圧大剣を構えるだけで足腰が震え、一回振り回すだけでスタミナの半分以上を失い、ボスの猛攻を前に鈍重な木偶の坊と化していた。


だが——今の俺には、レベル35で蓄積した全ステータスポイントを愚直に注ぎ込んだSTR「195」という圧倒的な筋力がある。そして、その異常な数値を起点にして解放された隠し固有ツリー【剛腕の鍛造術師】のパッシブスキル群が、俺の肉体を完全に作り変えていた。


『剛体変換』の補正によって、かつては紙装甲だった俺の最大HPは「500」へと激増。

『強靭なる息吹』が膨大なスタミナと回復力を与え、『怪力俊敏・精密』が規格外の腕力をそのまま身体のしなやかさと素早さ(AGI/DEX)へ変換させている。


今の俺にとって、この大剣は羽毛のように軽く、かつ体の一部のように精緻に扱える至高の相棒だった。


「グルォォォオオオッ!!」


変異種のマグマ・ゴーレムが、割れんばかりの咆哮を轟かせた。

黄金と黒炎の粒子を撒き散らしながら、砕けた岩肌を丸ごと押し潰すような巨大な溶岩の拳が、上空から俺めがけて一直線に振り下ろされる!


通常個体を遥かに凌駕する攻撃スピードと範囲。逃げ場などどこにもない。


「遅い!」


俺は地面を力強く蹴った。

『怪力俊敏・精密』によるAGI補正が炸裂し、重装の身体とは思えないの高速ステップで横跳び回避。寸前まで俺が立っていた地面が、ズガァン!と爆音を立てて砕け散り、マグマの波が周囲へ飛散する。


俺は飛び散る岩片を足場にしてさらに地蹴りし、空中へと躍り出た。


「『重力脈同調』——喰らえッ!」


大剣を頭上高くに掲げ、全身の筋力を一点に収束させて振り下ろす。

重圧大剣の重量とSTR195が融合し、不可視の重力波を纏った刃が、マグマ・ゴーレムの右脚の関節へ一直線に突き刺さった。


バゴォォォンッ!!!!


洞窟全体……いや、樹海全体を揺らすような衝撃音が響き渡る。

衝撃波がボスの巨体を内部から破壊し、硬質な岩石の装甲が派手な音を立てて弾け飛んだ。


かつては少しずつでしか削れなかったボスのHPゲージが、一撃で二割近くも一気に吹き飛ぶ!


「絶大なダメージ……! 脚部クラッシュ成功!」


「す、すっげえ……! あいつの攻撃を余裕で交わして部位破壊までするなんて、マジで動きが別次元だぞレイ!!」


後方で援護のタイミングを窺っていたコウタが、目を見開いて感嘆の声を上げた。


「感心してる暇はないぞコウタ! ターゲットが落ちた、畳み掛けろ!」


「おうよ! なら俺も遅れは取らねえ! 新スキルの試運転といこうぜ——『瞬影跳躍フラッシュ・ステップ』!」


右脚を砕かれて体勢を崩したマグマ・ゴーレムが、逆上して背後へ巨大な腕を薙ぎ払った。広範囲を薙ぎ払う不可避の反撃。

だが、コウタはその攻撃が届く直前、スキルの詠唱とともに身を翻した。


シュンッ!


コウタの身体が残像を残して一瞬で消え去り、次の瞬間にはボスの攻撃範囲の外側、数メートル後方の空中へと瞬間跳躍していた。発動時に付与される0.5秒の完全無敵判定が、ボスの薙ぎ払い攻撃を完全に無効化し、すり抜けたのだ。


「うおおおマジで無敵時間ある! 地形がどれだけ崩れてようが、間合いの仕切り直しが完璧にできるぞ!」


空中で体勢を整えたコウタは、崩れた岩場に着地すると同時に前傾姿勢をとった。長槍の穂先に眩い風のバフが巻き付く。


「行くぜぇぇッ! 『ハイパー・スパイラル』!」


疾風と化したコウタが焦土を滑るように急接近し、正確無比な突きをマグマ・ゴーレムの胸部——露出したコアへ穿ち入れた。


ドスゥッ! ガギンッ!


「グオッ……!?」


俺が叩き込んだ重力ダメージと、コウタの精密な弱点特化攻撃。

二人の完璧な連携の前に、レア変異種という凶悪な個体でありながら、マグマ・ゴーレムのHPはみるみるうちに削り取られ、あっという間に半分近くまで追い詰められた。


だが、追い込まれたボスの胸部コアが、ドクンと激しく脈打ち始める。


ドクン……! ドクゥゥゥン……!!


「ッ!? コウタ、離れろ!! 来るぞ……広範囲攻撃だ!!」


「マジかよ、もう撃ってきやがるのかッ!?」


変異種マグマ・ゴーレムの全身の亀裂から、狂ったような黄金の熱風と黒炎が吹き出した。全域を焼き尽くす、あのトラウマの広域即死攻撃!


「『瞬影跳躍』——ッ!!」


コウタは迫り来る爆風の波に対し、コンマ数秒の正確さでスキルを発動。無敵時間ですり抜けて後方へ脱出する。

一方の俺は、高められた素早さを活かして大剣を盾のように構え、衝撃波をギリギリのステップと防御姿勢で受け流す。


ドゴォォォォォンッ!!!!


爆発が焦土を吹き飛ばし、凄まじい爆風が収まった。


「ハァ……ハァ……! なんとか凌いだぞ! 今のうちに攻めるぞ——」


コウタがそう叫び、反撃に出ようとしたその時だった。


——次の瞬間、ボスの巨体が禍々しい黄金の光を放ち始めた。


ゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!


「な、なんだ!? 急に周囲の岩石が光り出したぞ!?」


コウタが叫ぶ。

クレーターの周囲や土中に埋もれていた大量の『太陽石』の破片が、磁石に吸い寄せられるようにマグマ・ゴーレムの全身へと集束し始めたのだ。


修復アブゾーブ……!


脈動する黄金の粒子がボスの亀裂に流れ込むと同時に、俺たちの猛攻で削り取ったはずのHPゲージが、ぐんぐんと一気に回復していく!


【 マグマ・ゴーレム HP : 40% ➔ 60% RECOVERED ! 】


「嘘だろ!? 周囲の太陽石のエネルギーを吸い上げて体力を回復してやがる……!」


コウタが絶望的な声を上げる。

削っても削っても、このフィールドに散らばる太陽石がある限り無制限に自己再生を繰り返す。まさに『環境と同化した巨神』としての凶悪な特殊アビリティだった。


「チッ……! 削り合いじゃ埒が明かないってワケか!」


俺は大剣を構え直し、前を見据える。

体力を回復し、満ち満ちた太陽石のエネルギーを全身に充填させたマグマ・ゴーレムは、狂暴な威圧感をさらに跳ね上げていた。


ドクン……! ドクゥゥゥン……!!


突如、回復を終えたボスの動きがピタリと止まった。

それと同時に、太陽石を吸収し尽くした全身のひび割れから、これまでの熱気とは比べものにならない漆黒の炎と、眩いばかりの黄金光が溢れ出し始める。


周囲の空間そのものが歪み、空気が焦げ付くような異臭が立ち込めた。


「ッ!? この予備動作……来るぞコウタ!! 吸収した全エネルギーをまとめて撃ち出してきやがる! 二度目の広範囲攻撃だ!」


「嘘だろ……!? 一度目より明らかにヤバいぞ……地形ごと俺たちを吹き飛ばしたあの全滅技の、限界突破版かよ!!」


コウタの顔から血の気が引く。


「コウタ! 慌てるな! 『瞬影跳躍』の無敵時間を、爆発が到達する瞬間のフレームに合わせろ!」


「くっ……やってやる! だけどレイ、お前はどうするんだ!? 今からだともう逃げられねえぞ!?」


コウタの叫びに対し、俺は逃げるどころか、足元を踏みしめて大剣を両手で深く握り直した。

逃げるつもりなど毛頭ない。最初からあいつの破壊力を受け止め、正面から打ち破るために俺はこの場所へ戻ってきたのだ。


「俺は逃げない——正面から受け止めて、そのままトドメを刺す!」


「正気かよレイ!?」


「俺を信じろ!」


「グオォォォォォオオオッ!!!!」


太陽石のエネルギーを極限まで溜め込んだマグマ・ゴーレムのコアが臨界点に達し、眩鋭な光が世界を塗り潰した。


カァァァァァッ!!


二度目の太陽が、焦土と化した樹海の中で破裂した。


ドゴォォォォォォォォンッ!!!!


天を突くような爆発音が轟き、破壊のエネルギーが怒涛の波となって焦土を舐め尽くした。地面はさらに数メートル深掘りされ、衝撃波によって樹海の木々が何十本もなぎ倒されていく。


爆炎と黒煙が猛烈な勢いで巻き上がり、やがてゆっくりと風に流されて晴れていく。


「ハァ……ハァ……! 死ぬかと思った……! タイミング、マジでコンマ数秒のギリギリだったぞ……!」


爆心地から遠く離れた瓦礫の陰で、コウタが膝をついていた。スキルの無敵時間を完璧に合わせ込むことで、なんとか即死を免れたのだ。


「レイ……ッ! レイ! 生きてんのか!?」


コウタが煙の充満する爆心地へ向かって叫ぶ。


爆破の直撃を真っ正面から、至近距離で浴びた中心地。

そこには、悠然と立ち続けている男の姿があった。


【 PLAYER : レイ 】


【 HP : 1 / 500 】


「な……ッ!?」


コウタが目を見開く。


HPは文字通り「1」。

どれほど絶大な威力を誇る即死攻撃であろうと、『古樹の守護指輪』に秘められた絶対食いしばり効果が発動し、俺の命を確実に繋ぎ止めていた。


「——指輪の『致死ダメージ無効・90%軽減』、および『20%即時再生』発動……!」


シュゥゥゥ……!


胸元の指輪から溢れ出た青緑色の聖なる光が俺の全身を包み込み、1まで落ち込んだHPゲージが、即座に「101」まで急回復して緑色の安全水域へと復帰する。


太陽石のエネルギーを二度目の爆発として全て放出し尽くし、自己再生の糧すら失ったマグマ・ゴーレムは、深刻なオーバーヒートを起こして身動き一つ取れずにコアを露出し、呆然と立ち尽くしていた。


「二度も爆発を起こせば、再生するエネルギーも限界に近いはずだ……! だが油断すんな、まだ微かに自己修復しようとしてる!」


「マジかよ!? しぶとすぎだろコイツ……!」


「コウタ、合わせろ! この一撃で再生ごと叩き潰すッ!」


「おうよッ!!」


俺たちは同時に大地を蹴り、無防備となったボスの胸部コアへ肉迫する。


コウタが長槍を限界まで突き出し、貫通スキルでコアの表面に残る黄金の修復膜を力任せに打ち破る。


「行けぇぇぇ、レイッ!!」


「借りは、これで完済だ……マグマ・ゴーレムッ!」


俺は地に脚をつけ、STR195の全筋力を大剣の刀身へと集約させた。

剥き出しになったコアへ向けて、下段からの斬り上げを一閃。


ズガァァァァンッ!!!!


コウタの穿ちと俺の剛腕が完璧に連動し、大剣の刃がコアを真っ二つに捉え、そのまま巨体を天高くへと切り裂いた。


「グル……オォ……ッ……!?」


マグマ・ゴーレムの巨体が内側から崩壊を始める。

黄金と黒炎の熱気が霧散し、次の瞬間、レアモンスター特有の眩く豪華な光の粒子となって、その巨体は大気中へと溶けるように霧散していった。

「グル……オォ……ッ……!?」


マグマ・ゴーレムの巨体が内側から崩壊を始める。

黄金と黒炎の熱気が霧散し、次の瞬間、レアモンスター特有の眩く豪華な光の粒子となって、その巨体は大気中へと溶けるように霧散していった。


静寂が、荒れ果てた太陽石の群生地を包み込む。

直後、二人の頭上に勝利を祝福する高らかなファンファーレが響き渡った。


【 変異種・レアモンスター:マグマ・ゴーレムを討伐しました 】

・大量の経験値を獲得!

・レア素材:『溶熱の変異コア』×1 獲得!

・限定称号:『不屈の巨神殺し』 獲得!


「か……勝った……! 勝ったぞぉぉぉッ!!」


静寂を突き破り、コウタが長槍を地面に投げ出して、歓喜の声を上げながら駆け寄ってきた。


「見たか今の!? 一度目の爆発を耐えて、自己再生からの二度目の超絶爆発まで真正面から受け切ってトドメ刺しやがった! レア変異種だぞ!? フルパーティでも全滅するような巨神を、二人で……俺たち二人でリベンジ達成だぁぁぁッ!」


「ああ……勝てたな。お前が『瞬影跳躍』で完璧に立ち回ってくれたおかげだ」


駆け寄ってきたコウタと、バチンッ!と力強いハイタッチを交わす。

手のひらに伝わる熱い感触と、画面に躍る『不屈の巨神殺し』という称号の威厳ある文字が輝いて見えた。


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