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ようこそ、明日へ  作者: 川上 然


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1/3

1…この星の片隅で


 ガチャコン、ガチャコン、と捻るごとに、小さい箱の中でカプセルがころころ混ざって移動した。

 ぽこっと出てきたその赤い玉を取ると、プラコは「ああ…」と残念そうな声を出した。


 お目当ての、ものではない。


 ぽりぽり、と頬を引っ掻くその長い爪には、カラフルな色味と装飾が施されている。

 

 長くてまるで武器みたいにも見えるその爪は「ネイル」と呼ばれているらしいことを、プラコは最近知った。もっぱらこのネイルとやらを随分と気に入ってしまい、こまめにネイルサロンに通っては、いろんな色で彩ってもらい、プラコなりの個性を表現して、とても楽しんでいる。

 

 鎌のようにも見えるそれは、もしもの危機的状況が来たら「ザシュ!」っといけなくもないのかもしれない。なんてことも、プラコは思ったりした。


 「それで?」

 頭上から突如声をかけられ「へっ」プラコは素っ頓狂な声を出した。


 「お目当ては出たわけ?」

 「…出ない。 ぜーんぜん、これっぽっちも、出ない」

 「運ないね、プラコ」


 ナヒアの無慈悲な投げかけに、プラコは「うあーん」と泣き真似をした。


 プラコのしゃがんだ足元には、空になったカプセルがごろごろ転がっている。

 一番お目当てのシークレットがなかなか、どうしたって、出ない。


 「何が出るのか分からないものにお金を使うなんて、私にはどうしても理解できない」

 「あたしも最初はそうだったけど〜」


 そう言いながら、プラコは財布から小銭を出した。

 お気に入りの「カエルのぴょん子ちゃん」財布。がま口タイプで、閉じる時の「ぱちっ」となる音が、たまらなくて、プラコの大のお気に入りだ。


 「でもさ〜ナヒア? このカプセルの中には、詰まってるんだよ?」

 「何が?」

 「そりゃもちろん」


 夢と、希望。


 「…なんじゃそら」


 1回400円の夢と希望。それに人間は運を賭け、夢を見る。

 その気持ちも、分からなくもないんだ、とプラコは深く共感していた。


 すると突然、ナヒアのピンヒールがカツカツ、と床を踏んだ。プラコにはそれが自分の名前を呼んだ音に聞こえ て、ガチャガチャをしながら、そのつま先に目を見やる。


 「あんたさ、どうすんの?」

 「え、何が?」

 「この後行くっつってたじゃん」

 「………あ」

 「フラペチーノ代、残ってますか〜その財布の中に〜〜〜〜」


 通算7つ目のカプセルを、その長い爪が施された指がぱかっと開ける。

 そこには、プラコのこの後のフラペチーノ代がなくなった真実が飛び出てきただけで、お目当てのシークレットは、見事に出ることはなかった。


 「バカだね、プラコ。 今日は奢ってあげないからね」

 「…………」


 もしもし、地球の皆さん。

 バカ、とはどういう意味ですか?


 まだ地球に来て1年目のあたしに、その意味を、ちょっと誰か教えてくださいよ。



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