エルフの里の人攫い
今回は人攫いの親玉視点です。
人攫いの親玉視点
「兄貴、なんか人数少なくねぇですか?」
「……ちっ!」
子分が話しかけてくるが舌打ちして返す。
苛立ちがおさえきれねえ。
エルフの森周辺に集まっているが、仲間が全然戻ってこない。
それも数十人規模で行方不明になっている。
エルフどもに殺されたに違いない。
しかし、いままでエルフはわざわざ俺たちを殺しに出てくることはなかった。
「どうなってやがる……」
エルフどもが俺たちを襲う‘きっかけ’があったに違いない。
エルフの森は奴らのホーム。奴らが積極的に襲ってくるようだと勝ち目はない。
現に誰も帰って来ずに何の情報もない。
「潮時か……」
絶望的な状態に思わず独り言が出る。
「そんな!いまさら引き上げるなんて無理っすよ!」
1人が叫ぶと皆がその言葉に頷く。
俺たちは人殺しや人身売買、窃盗をやってきたような奴らばかりだ。
今更まっとうな生活ができるような奴らじゃない。
「うるせぇ!場所を変えるだけだ!」
苛立ちからさらにでかい声が出る。
ガサガサッ
俺の背後から茂みが揺れる音がする。
魔物に気づかれたかっ!
そう思って立ち上がり、武器を構える。
夜の森にはほとんど明かりがなく、ほとんど対象の姿が見えない。
「手を貸そう」
茂みからそいつは現れた。
化け物。数々の魔物と対峙してきた俺でもそう思えるほどの異形。
身体の底から震えが止まらない。
「暴れるだけの力がほしいだろう」
化け物が近づいてくる。
いつの間にか化け物の周りには魔物が現れている。
「か、貸してくれ……」
震える声でつぶやく。
人攫いどもの親玉として呟くのがやっとだ。
俺の言葉を聞いて化け物は満足したように頷き、魔物を残して消え去った。
魔物どもはこちらを襲ってくる様子はない。
「ど、どうやらツキが回ってきやがったぜ」
悪い予感がする。だが、どっちにしろやらなきゃ魔物に殺される。
自分の顔が引きつった笑みを浮かべる。
次回への伏線を貼るだけの回でした。
こいつらには次回暴れてもらいます。




