宴の肴に曲芸を
あらすじ
エルフの里にやってきたユイトたち。
里ではエルフたちが人攫いに攫われることが問題になっていた。
そこでユイトたちは人攫いを見つけ出し、多くを捕縛した。
「こんなにもいたのか。30人はいるね」
アルノルトさんが呆れたように呟く。
俺たちが捕縛した人攫いは30人を超えていた。俺、メリー、アイリ、アーレの活躍でこれだけの数を捕まえられた。
「ありがとう。こっちで始末しておくよ。ささやかながら宴の準備をさせよう」
顔が見えないけど、アルノルトさんはそういって微笑んだ気がした。
アルノルトさんの一言に人攫いたちの顔が青ざめる。始末するというのは、殺すということだろう。
「に、人族の兄ちゃん!な、なあ同じ人族だろ!助けてくれや!」
手足を縛られて転がされているリーダーらしき男から声がかかる。
確かに直接手を下さないとはいえ、このまま殺してしまうのはかわいそうな気がする。まだ更生の余地があるかもしれない。
「ユイトさん。このようなものに情けは無用です」
アーレから無慈悲な声がかかる。他の仲間を見るとまるでごみを見るような目で人攫いたちを見ている。
特にアイリは興味すらないようで、見てすらいない。
「ユイトさん。慈悲をかけても無駄ですよ。こいつらはこうすることでしか生きられない。真面目に働くことなどありえません」
アルノルトさんにピシャリと断言される。
「……お任せします」
思うところはあるが、アルノルトさんのいうことはもっともだ。
人攫いの後のことは忘れて用意してくれる宴を楽しむとしよう。
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人攫いを捕まえてすぐとは思えないほど、宴の料理は手早く調理され豪華だ。明るい空の下で地面に座って食べる。
森で取れたフルーツや、フルーツから作られた果実酒、狩りで手に入れたと思われる肉など、自然の恵みとともにある料理が振舞われる。
といっても、料理は俺たちやドワーフのために作られたものである。エルフたちは周囲に肌を晒さないようにストローのような管で果実酒を飲んでいる。
更にエルフは他人に触れないように微妙な距離を空けているため、肩を組んではしゃいだりしない。上品な飲み会といった感じだ。
そんなことを思いながら料理を口に運ぶ。肉にハーブ類をたっぷり使って肉の臭みを消しており、ハーブの香りが食欲をそそる。
「やあ、食事は口にあったかい?」
そういってアルノルトさんが俺の近くに座る。
「はい、とても美味しいですね」
「私はこの里が好きでね。まだ潜んでいるだろうが、人攫いを捕まえてくれたユイトさんには感謝しきれない」
そういってアルノルトさんはこの里の住人を見る。
楽しそうに笑うエルフ。酒を煽りながら真っ赤になっているドワーフ。
騒がしくものんびりとしている。アルノルトさんが好きだというのがよく分かる。
「ユイトなの」
アルノルトさんと一緒に思いを馳せているとユアがやってきた。
「やあ、ユア」
ユアは今日も多くの精霊を連れている。テクテクと近づいてくると、あぐらをかいている俺に腰かけた。
俺は手に魔力を出し、精霊たちに与える。ユアと旅をしている間に餌付けするのが当たり前になってしまった。
「ユイト、何か弾いて欲しいの」
ユアはキラキラした目で訴えかけてくる。
弾くってことはヴァイオリンか。
「君は何か演奏できるのかい?」
「多少かじった程度ですけど」
アルノルトさんの問いに苦笑しながら答える。
エルフは演奏が上手いらしいから、あまり自慢げには言えない。
立ち上がって空間魔法でヴァイオリンを出す。
いつの間にか宴会をしているエルフの里のみんながこちらを見ている。
「せっかくなのでひとつ曲芸をお見せしましょう。ローリアとアーレも手伝いよろしくね」
全体に聞こえるように声を張っていい、最後に小声でローリアとアーレにお願いする。
皆がワクワクとこちらを見ている中、演奏を始める。合わせて光魔法を使う。
俺がヴァイオリンを弾く音に合わせて、音符がヴァイオリンから溢れる。
色とりどりの音符が溢れ、俺の周囲を彩っていく。
おーっという声や拍手が聞こえてくる。
そこでアーレもヴァイオリンを構えて演奏を始めると、アーレのヴァイオリンからも音符が溢れ始めた。ローリアが魔法を使ってくれたからだ。
「皆さんもご一緒にっ!」
そういって俺がヴァイオリンの弓を観客に振ると、拍手している観客から音符が飛び出す。
観客は突然に手から飛び出た音符に驚き、そして何かを思いついたように各々楽器を持ってきた。
弦楽器、打楽器、木管楽器、金管楽器、各々が得意とする楽器を持ってきたようだ。
俺とローリアは次々と楽器に光魔法をかけ、楽器から音符が溢れエルフの森全体を彩る。
俺が最初に弾き始めたにも関わらず、俺が指揮をするオーケストラのようになってきた。
しかも、素晴らしく整った演奏をしている。即興で始めた演奏に完璧に旋律を乗せている。本当にエルフの演奏能力は高い。
フィナーレに俺がヴァイオリンの弓を宙に大きく振ると、音符が弾けて光となりキラキラと舞い落ちる。
その様子に、エルフやドワーフは声を上げながら拍手する。
先ほどまで演奏していた当事者が拍手しているので、自分の演奏を讃えているかのようだ。
こうして、エルフの里での初めての曲芸は大成功に終わった。
お久しぶりです。
2カ月以上も空いてしまいましたが、更新いたしました。
不定期になるでしょうがこれからも更新できたらと思います。




