捕縛作戦
「それでは、作戦を開始する!」
「「おー!」」
「おー」
「お、おー」
作戦開始を告げると、メリーとアイリが真っ先に元気よく返事をし、ローリアが平淡な口調で返事をし、アーレが少し戸惑ったように返事をして、みんな手を上げた。性格がよく表れているな。
作戦としては、俺がエルフの里周辺の人攫いを調べて、現場に仲間を連れて急行し、誰かをその場に置いて捕縛しておいてもらうといったものだ。
前回闘った感じから、人攫いはあまり強くない。メリー、アイリ、アーレなら怪我無く捕まえられるだろう。ローリアはあまり戦闘能力が高くないので、今回はお休みだ。
この作戦なら、同時に四か所の人攫いを捕縛できる。かなり強引な方法だけどね。
「ちょっと調べるね。【マップ】!」
少し気合を入れて魔法を発動する。脳裏にエルフの里周辺の地図が浮かび、人攫いの場所が分かる。どうやらかなりの人数いるらしい。四か所では足りなさそうだ。
「じゃあ、いこうか」
「「「はい!」」」
「【ワープ】!」
仲間に近づいてもらって転位呪文を発動する。
さあ、作戦開始だ。
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メリーの場合、
「じゃあ、ここは頼んだよ」
「了解!」
エルフの里の周辺にユイトの魔法で飛んできた。人攫いはいきなり現れた僕たちにかなり驚いているみたい。
すぐにユイトは別の場所に飛んで行った。こんなに早く移動できるなんてユイトは凄いなー。
「なんだぁ?てめぇ」
人攫いの人たちは僕だけになって余裕が出たみたい。
「お前たちを捕まえに来た!」
ビシッっと人攫いを指す。今、僕は勇者と同じくらいかっこいいんじゃないかな!
「あはははは!お前のようなチンチクリン娘が俺たちを?一人でか?あっはははは!」
人攫いたちは腹を抱えて笑う。
どうやらかっこよさはわかってくれないみたいなので、戦闘を始めてしまおう。
僕はバックステップをして距離を取り、針を取り出す。そして、その針を投げる。針は油断していた男の右肩に刺さった。
「チッ!この女、なんか飛ばしてくるぞ!」
男が肩を抑えながら叫ぶ。慌てて他の人攫いたちは武器を構える。
また針を投げる。今度は二本まとめて投げる。
「ぐあ!」
「なっ!?」
僕の狙い通り人攫いの太ももに針が深々と刺さる。
ユイトは剣で弾いたり避けたりしたに、随分とあっさり当たるな。
「こいつっ!」
今度は距離を詰めてきた。
大丈夫。この人たち遅い。
「えい!てい!」
距離をとりながら針を投げる。急所に当てないようにしながら、木や地面に縫い付けるように固定する。
「ちっ!」
人攫いはもう動けなくなった。意外と簡単に捕まえることができた。
「よし!あとは縛るだけ!ユイト早く迎えに来てくれないかな~」
誰も殺さずに捕まえられた。人殺しを好まないユイトならきっと褒めてくれるはず。
人攫いたちを縛りながら、ユイトの迎えを待つことにした。
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アーレの場合
「じゃあ、アーレ。ここは頼んだよ」
「わかりました」
ユイトさんに連れられて人攫いたちの前に現れる。
いきなり敵の前に現れなくてもいいと思いますが、それは私に対する信頼なのでしょう。
ユイトさんはアイリさんを連れてどこかに飛んでいきました。
「おいおい、わざわざエルフを置いて行ってくれるなんて、随分と優しいお仲間じゃねえか?」
人攫いたちがニヤニヤと気持ち悪く笑います。確かに、エルフを攫いに来た人の前にエルフを置いていくなんて、少しおかしな話です。
でも、彼らに捕まる気は毛頭ありません。
「【ウィンド・ハンマー】!」
魔法で人攫いを吹き飛ばして、何人か昏倒させます。
魔法陣はユイトさんに調整してもらって好きな魔法を発動できるようにしてあります。今の魔法はそのうちの一つで、風の塊を飛ばす魔法です。
調整するときは少し恥ずかしかったですが……
「こいつ、エルフのくせに魔法を使ってくるぞ!気を付けろ!」
リーダーのような男が起き上がり、仲間に注意を促します。
精霊魔法ではなく、普通の魔法を使うエルフはいない。冷静な判断です。
「【アース・ホール】!」
今度は土魔法。対象の地面に穴をあける魔法です。
「うあ!」
何人かが穴の中に落ちます。深さはあまりないので死にはしないでしょう。這い上ってくることも出来ないでしょうが。
「あとはあなただけですね。【パラライズ・ショック】」
「うぐっ!」
最後にリーダーのような男を雷魔法で麻痺させます。
片付きました。
「【ウィンド・フロート】」
この魔法は物を浮かべる魔法です。他人に触れたくないエルフには適切な魔法です。
麻痺や昏倒した人攫いたちを浮かべて穴に落としていきます。ユイトさんが来るまで穴の中で大人しくしてもらいましょう。
他の皆さんは順調でしょうか?
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アイリの場合。
「アイリはここね」
「ええ、任せてちょうだい」
ユイトの転位魔法で人攫いの前に現れる。
ユイトはあたしを置いて別のところに飛んで行った。
どうせなら二人で共同作業したかったな。
「おいおい、こっちは五人もいるんだぜ。女が一人で何するっていうんだ?」
「あなた達なんて私だけで充分よ」
あたしを煽ってくる人攫いに答える。
「逃げた男に頼ればいいんじゃねえのか?あの逃げた意気地なしによ!」
「ユイトの悪口をいうと、力加減を間違えて殺すわよ」
ユイトを馬鹿にされて思わず声に険がこもる。
まだ、勇者の力の大きさに慣れてないんだから、あまり煽らないで欲しいわね。
収納魔法でしまっていた大剣を取り出す。この大剣は聖剣だけれども、あたしの武器はこれしかないから、誰にでもこの大剣を使う。
「いくわよ!」
目前の男を大剣の側面で吹き飛ばす。思ったより男は吹き飛んで木に衝突した。
……死んでなければいいけど。
残りの人攫いたちは目を見開いている。まぁ、あたしみたいな力のなさそうな女が大剣を振り回すのは、驚きよね。
でも、こういう世界ならあり得るんじゃないかしら?
「怖気づいたかしら?」
「チッ!逃げるぞ!撤退だ!」
あたしが挑発すると、挑発に乗らずに逃げ出してしまった。
逃がすわけにはいかない。ユイトにここを任されたんだから、絶対に期待に答えなきゃ。
「【ダーク・トラップ】」
闇魔法を使う。イメージは相手を逃がさないためのトラバサミ。
イメージ通り黒いトラバサミが逃げ出した男たちの足に食い込む。
そして、紫電を散らしながら痺れさせた。これはあたしのイメージ外だ。
「もっと、力加減に気を付けにといけないわね」
痺れた人と吹き飛んだ人の安否を確かめて溜息をつきながら言う。どうやらちゃんと生きているようだ。
手加減って難しい。この世界に召喚される前はただの病人だったから、攻撃のしかたはよく分からない。
はぁ。早くユイトに会いたいわ。
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ユイトの場合
「な、なんだてめぇ」
人攫いの目の前に現れると明らかに警戒された。
いきなり転移して現れたらそういう反応にもなるか。
「あなたたちがエルフを攫っている人たちですか?」
「あん?そうだって言ったらどうすんだよ?」
間違えだったら最悪なので念のために事実確認を行う。ニタニタ笑う様子から、どうやら間違えないらしい。
まあ、こんなところに潜伏している人族なんて人攫いしかいないけどね。
「捕まえます」
「は?おいおいこっちは十人もいるんだぜ?バカかよ」
男の言葉に全員が笑う。
「【バインド】!」
目の前の総勢十人ほどの男たちをまとめて捕縛する。
一つの魔法で片付いてしまった。
「これでもバカって言えるのかな?」
拘束した男を見下ろす。簡単に捕縛できた。油断してくれてラッキーだったよ。
さて、みんなを迎えにいこうか。
のんびり投稿していたらいつの間にか年号が令和になっていました。
令和もよろしくお願い致します。




