1/4
序章
夜の闇が裂けた。
稲光が桜之台のビル群を白く塗りつぶし、嵐が唸りを上げ窓を叩きつける。
闇を裂いてふたつの影が疾走する。
ひとつは細くしなやかに。
もう一つは獣のような異形の巨大な塊。
雷鳴が街を震わせた瞬間、ふたつの影はぶつかり合った。
閃光ーー
巨大な影が弾け飛ぶ。黒い残光を散らしながら、ビルの壁に叩きつけられ、そのまま谷底まで落ちていく。
屋上に着地した細身の影が、ゆるりと息を吐いた。
妖しげに輝く紫紺の瞳が、影の落ちていった先を見下ろす。
「……」
風が鳴る。
次の稲光が夜を裂いた時、そこにはもう何もいなかった。




