第十九話①
「それでは、私たちも向かいましょうか」
「そうだな…アカリ、ここは任せたぞ」
「言われなくてもわかってるわよ」
俺たちは先へ向かった王国騎士長を追うように歩いていく。
愛も変わらず険しい森を抜けたその先には、大それた外装の馬車が一台置かれてあった。
「パンプキン殿、こちらにお乗りください」
「俺もいるんだがな」
「マヤトさん、今は喧嘩の種をばら撒くべきではありませんよ」
「……わかっている」
俺はパンプキンの側近として、慎ましい態度をとることになっている。パンプキンを先に馬車に乗せて、俺は後から乗車する。
この際も王国騎士長に挨拶をするなどして、丁寧な態度を見せたが、正直作法が合っている自信はない。こう言った事はあまりにも慣れていないからな。
その後すぐに馬車は城へと向けて出発した。馬は力強く先へ先へと進んでいく。
隣り合わせで座っているパンプキンは落ち着いた様子を見せており、向かいに座る騎士長も同じく平然とした態度を見せていた。
暫く沈黙が続いた後、ようやく口を開いたのは王国騎士長だった。
「パンプキン殿。少し気になったことがございまして、突然で申し訳ないのですが、質問しても…」
「えぇ勿論です。沈黙に耐えかねていたところですので、私でよければ何でもお答えしますよ」
「では……長いこと城へ出向く事を拒否していた貴方が、どうして今になって城へ赴く決心をなさったのですか」
「簡単な事です。誰とは言いませんが、少しばかり通りへの当たりが強くなったものがおりましてね。このままでは不味いと思い、ようやく重い腰を上げて、話し合いをする決心をしたのです」
「確かに、それは真っ当な理由と言えるでしょう。ですが、当たりが強くなったと言うのであれば、今に始まった話ではないはずです。どうして今なのですか?」
「騎士長殿、質問の意図をお聞きしてもよろしいですか?」
「…隣の男が何か関係しているのですか?」
騎士長は俺の目を真っ直ぐ見ながらそう口にした。
やはりバレている。相手が怪しくてたまらないと言った話はしたが、正直相手側からしても俺たちが怪しくて仕方がないのだろう。
だがそんな事、今更聞いて何になると言うのだろうか。
既に俺を馬車に乗せて城へと向かってくる最中に話すことではないと思うのだが。
「彼は関係ありません。城へと向かう決心をしたのは先程話した通りですから」
「……なら良いのですが」
「なら良い」と言う事は、その他の理由ならダメだったのだろうか。何だか含みのある言い方と白々しい態度に、いい加減俺は腹を立て始めていた。