第十八話②
情けない話だ。
今まではただ向かってくるモンスターを魔法を使って討伐すれば済んでいた。
対人戦も今まで何度かやってきた事があるが、そのような際も緊張などしてこなかったし、何なら鼓動が早くなる事すらなかった。
だが思い返してみれば、誰かと作戦を立てたり、それを実行したことなどは、今まで一度もしてこなかったのだ。
それが故に緊張しているのだろう。
初めて行う作戦というものを恐れてしまっている。
だがそれは何故だ? もし仮に失敗したとしても魔法があるじゃないか。それで何とかなるわけだが……もしかしたら、それが嫌なのかもしれない。
魔法で何とかなると思っている自分が、それをつまらないと吐き捨てておきながら、それに頼ろうとしている自分が、堪らないほど情けない。
作戦を失敗すれば俺のミスであり、それを魔法で修正すれば、それは俺の手柄ではなく魔法の力で助けてもらったということになる。
それではまるで、俺ではなく魔法が上の立場みたいじゃないか。
それは気に食わないことだ。
魔法を使うのは俺であり、魔法は俺が扱う道具でなければならない。
魔法を使うしかなくなれば俺の負けだ。魔法を使わずとも、何とかなる状況下で魔法を使うのなら、俺は魔法に打ち勝った事になる。
慣れないことをしようとしているせいか、変に魔法とのあり方を意識してしまっている。今回の作戦を成功させて、何とか自信を取り戻さなければならない。
――
「それでは何かあれば魔法を使用しろ。方法は昨日説明した通りだ」
「わかってるわよ。貴方の名前を呼べばいいんでしょ」
午前8時ごろ、俺たちは宿から出てパンプキンの家へと向かっていた。
どうやらそこに王国まで送迎してくれる馬車が来てくれるらしい。
流石王様だな。相手が誰であれ、歩いて向かわせるような真似はさせないみたいだ。
「お2人とも、おはようございます。早いようで、もう当日ですね。緊張してきました」
「緊張するほどのことでもないだろ。もしかしたらお話しして終わりかもしれないんだ」
「その可能性があまりにも低いから、1週間も前から作戦を立ててたんでしょ?」
パンプキンの家へ到着すると、彼は既に支度を済ませて外へと出ていた。
いつも着用しているボロボロのマントは身につけておらず、代わりに正装だと言わんばかりの綺麗な衣服を着用していた。
俺は自身の緊張を隠したが、パンプキンは緊張していることを隠す様子は見せなかった。
とは言え、俺からしてみれば本当にコイツは緊張しているのかと疑問に思えてくる。
顔が見えないのもあるが、何より態度が堂々としている。
緊張しているのも嘘ではないのかもしれないが、それよりも決心してきたような、覚悟を決めたように思える態度なのだ。




